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【映画鑑賞】『カラーパープル』観ました。

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既に花粉に苦しんでいる、黒木りりあです。

いつもより1日長い2月が終わり、ついに3月に投入しましたね。3月と聞くと、もうすっかり春だなあ、と感じます。そんな今日は桃の節句。お祝いした方も多いのでしょうか。私もささやかながらもお祝いいたしました。

もう3月になってしまいましたが、2月は黒人歴史月間でしたね。なるべくアフリカ系の人々の歴史を学べるように、と毎年2月は意識的に関連作品を観るようにしています。今年はまさにこの黒人歴史月間に観るのにふさわしい映画が劇場公開されました。それが『カラーパープル』です。公開からなかなかタイミングが合わなかったのですが、なんとか2月中に観ることができました。本当に2月に観てよかった、と思える作品でした。
今日は、そんな『カラーパープル』について語っていきたいと思います。


『カラーパープル』とは?

『カラーパープル』("The Color Purple")は、2023年12月25日にアメリカの映画館で公開されたミュージカル映画です。日本では2024年2月9日に公開されました。
原作となっているのは、1982年に出版されたアリス・ウォーカー著の同名小説です。この小説はピューリッツァー賞も受賞しています。1985年にはスティーブン・スピルバーグ監督の手によって実写映画化されました。主演を務めたのはウーピー・ゴールドバーグで、彼女にとっては映画デビュー作品となりました。本作はこの年のアカデミー賞10部門に11ノミネートしましたが、受賞には至りませんでした。
この映画を基に、2005年にはブロードウェイでミュージカル化されました。この年のトニー賞には11部門でノミネートし、最優秀助演女優賞を受賞。ブロードウェイでの上演は2008年で終わってしまいましたが、その後も各地での上演が続き、2015年にはブロードウェイにてリバイバル上映が実施されました。
そして、満を持して2023年に公開された映画『カラーパープル』はこのミュージカル版の映画化作品で、実力派キャストが顔をそろえています。

『カラーパープル』あらすじ

1909年、アメリカ・ジョージア州。主人公セリー・ハリスは男の子を産む。赤ん坊の父親は、セリーの父親で、彼女は父から性暴力を受けており、今回は二度目の出産だった。出産直後、赤ん坊は父に取り上げられでそのままどこかへ連れていかれてしまう。セリーに決定権など無かった。
ネッティーは美人で頭が良い。そんな彼女と結婚したい、ミスターがセリーの父に相談するも、彼はその提案を断る。代わりに、安値でセリーなら売ってやる、と。前妻との間に生まれた子供の面倒をみる人が必要だから、とミスターはしぶしぶセリーとの結婚を受け入れる。こうして、セリーはミスターと強制的に結婚させられた。セリーに選択肢は与えられなかった。
家庭の仕事を丸投げされ、子供の面倒をみさせられた上に、与えられるのは愛ではなく暴力だった。この結婚生活はセリーの精神を蝕んでいく。ある日、ネッティーがセリーを訪ねてきた。父に襲われそうになり、逃げてきたという。ネッティーはそのままミスターの家で居候することになり、姉妹は大喜び。しかし、夜になるとミスターはネッティーの寝込みを襲おうとする。ネッティーが抵抗するとミスターは激昂。猟銃で脅して彼女を追い出そうとする。姉妹には、離れ離れになるしか生きる選択肢はなかった。ネッティーはセリーに手紙を書くと約束し、夜の闇に消えていった。
時は流れて1917年。結局、セリーの元にネッティーからの手紙は一度も届かなかった。ミスターの息子ハーポが結婚相手のソフィアを町に連れてきた。勝気で男性にも気後れなんてしない、明るくて強い彼女にセリーは圧倒されつつも、友情をはぐくんでいく。しかし、ハーポがソフィアを殴ろうとしたことを理由に、彼女は町を去っていった。その後、町にはシンガーのシャグがやって来る。モテる彼女の帰還に、男性たちは浮かれ女性は険しい顔を見せる。ミスターもシャグにのぼせ上がっており、彼女を自宅に滞在させ、慣れない朝食まで作ろうとする始末だ。実は、ミスターが写真を飾っていたこともあり、セリーもシャグに興味津々。シャグもセリーを気に入って、自由奔放な彼女にセリーも突き動かされていくのだが……。

支配からの解放

2月の黒人歴史月間、そして3月の国際女性月間、この両方で注目されるのが、黒人女性です。黒人としての差別、女性としての差別、その両方を彼女たちは経験していて、二重の差別を受けています。『カラーパープル』はそのことを強く実感させられる作品でした。
差別は色濃く残ってはいるものの、奴隷解放宣言後の南部アメリカ。黒人が自信の土地を持ち、自ら農民として働いています。確かに、ミスターたちが主張するように、彼らは奴隷ではなくなったのかもしれません。けれども、セリーは驚くほどに虐げられていて、奴隷のような扱いを受けていて、解放だなんて言葉からは程遠いことがよく分かります。

この映画を観て衝撃だったのは、あらゆる種類の暴力の多さです。殴るという身体的暴力、相手の同意無しに性行為を強要する性暴力、反発しないように自分を能無しだと思い込ませるマインドコントロールのような精神的暴力など、とても多くの暴力が描かれていました。映画はレイプによる妊娠出産から始まっており、女性の身体に関する権利も侵害されているし、セリーは教育の権利も奪われているし、婚姻の自由の権利も奪われています。ここまでに女性に権利がないものかと、愕然としました。夫の名前をミスターだと思っていたのも、衝撃でした。

一方で、セリーは決して聖人のような存在として描かれているわけではなかったのも印象的でした。セリーはソフィアとシャグから大きな影響を受けて、少しずつ強くなり、自分の声を持つようになり、行動できるようになります。けれども、ソフィアに対しては嫉妬心を抱き、シャグには憧れを抱きました。そのどちらもがとても人間らしい感情で、人間として扱われてこなかった彼女が、人間らしい感情に突き動かされながら成長していく、というのが個人的にはぐっと来たポイントでした。

けれども、本作で最も印象的だったのは、ソフィアのシーン。有力者である白人女性と揉めても自分を曲げなかったソフィアの強さには感嘆しましたが、まるで太陽を飲み込んだかのようにパワフルなソフィアがすべての光を失ったかのような虚ろな表情を見せたのには、絶望を感じ胸が締め付けられました。ダニエル・ブルックスの演技が本当に素晴らしくて。あのソフィアの一連のシーンは、きっと永遠に忘れることはないと思います。

作品を彩る力強い音楽たち

『カラーパープル』が黒人歴史月間にぴったりな作品だと感じたのは、きちんとルーツであるアフリカにも触れており、さらに黒人文化を考えるにあたって切っても切り離せない音楽が常に存在している点です。ミュージカルだからこそとはいえ、その時代を象徴するらよるジャンルの音楽が登場するのには舌を巻きました。
労働歌、ブルース、ジャズ、ゴスペルといった様々な音楽が本作には登場します。黒人文化と音楽は常に密接な関係にありますが、それをこのような形で賛美するのは、とても良い手法だと思いました。辛いときにも喜びに満ち溢れているときにも、音楽は傍にあるものですが、それをまさに象徴する音楽の使い方に圧倒されました。
恥ずかしいことにスピルバーグ版の『カラーパープル』はおそらくまだ観ていないのですが、ストレートプレイよりもミュージカルの方がより黒人文化の歴史を感じることができるのではないかな、と感じました。2月にこの作品を映画館で観ることができたのは、本当に幸せな出来事だったと思います。

2月は既に終わってしまいましたが、いつ観たとしても、黒人文化の歴史に触れることができると同時に女性の歴史をまざまざと体感することもできる作品です。来週開催されるアカデミー賞にもノミネートしています。少しでも興味のある方は是非、劇場に足を運んでみてはいかがでしょうか?

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