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【映画鑑賞】『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』観ました。

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ウンパルンパの歌と踊りが頭から離れない、黒木りりあです。

寒い季節になると、ついつい甘いものを食べたくなりませんか?中でも、冬に食べたくなる甘いものと言えば、チョコレートという人は多いのではないでしょうか?
そんなチョコレートを画面いっぱいに楽しむことができる映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』を、先日劇場にて鑑賞して参りました。そこで、本日は『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』について語っていきたいと思います。


『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』とは?

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』("Wonka")は、2023年12月より全世界的に封切られたミュージカル映画作品です。
UKの非常に有名な児童小説『チョコレート工場の秘密』("Charlie and the Chocolate Factory"、1964年)に登場するキャラクター、ウィリー・ウォンカを主人公とし、小説では描かれていない彼の若き頃の冒険を描いた、オリジナルストーリーです。『チョコレート工場の秘密』の原作者はUKの澄明な作家、ロアルド・ダール(Roald Dahl)です。ダールは『マチルダはちいさな大天才』("Matilda"、1988年)や『魔女がいっぱい』("Witches"、1983年)などといった人気作品を手掛けており、その多くが映画化やミュージカル化されるなど、世界中の人々から愛されています。
ダールの作品の中でも『チョコレート工場の秘密』は人気が高い一作で、1971年には『夢のチョコレート工場』("Willy Wonka & the Chocolate Factory")のタイトルで、また2005年には『チャーリーとチョコレート工場』("Charlie and the Chocolate Factory")のタイトルで実写映画化されているほか、ミュージカル化やアニメーション映画化もされています。
『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は過去の実写映画作品と特にかかわりがあるわけではなく、独立した作品として仕上げられています。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』あらすじ

天才的な魔術師であり、発明家でもあるチョコレート職人のウィリー・ウォンカ。亡き母と約束したチョコレート店を開くため、彼はグルメ・ガレリアへとやって来る。しかし、そこは「チョコレート・カルテル」と呼ばれる3つのチョコレート企業が市場を独占しており、前途多難。
凍死を免れるために仕方なく泊まった宿で法外な宿泊料を請求され、支払うことができなかったウォンカは、宿主のもとで強制的に住み込みで低賃金労働をするはめに。それでもチョコレート店を開く夢を諦められないウォンカは、同じ宿主の元で働く孤児の少女・ヌードルと協力して、チョコレートを売り、そのお金で借金を返済して自由の身になるべく奔走する。
ウォンカやヌードルと同じく借金返済のために強制労働を強いられている仲間たち4人も2人に協力することになるが、町を牛耳る「チョコレート・カルテル」は、教会の神父様や警察署長も巻き込んでウォンカを潰そうと企む。

極上のミュージカル・エンターテイメント

予告編や宣伝ではミュージカル作品であることはあまり大きく言われていませんが、本作はまさに「極上のミュージカル・エンターテイメント」作品です。まるでウォンカのチョコレートを食べた後のように、とにかく楽しくて心躍る気分に浸らせてくれる、年末年始にぴったりな一本です。ミュージカル作品としてとても優れているのに、ミュージカル作品であることを前面に出して宣伝できないことを、非常にもったいなく感じました。また、「ハリー・ポッター」のプロデューサーが贈る、という宣伝が多くなされていますが、どちらかというと映画「パディントン」シリーズが好きな人の方が本作を気に入るのではないかなと思います。(監督、脚本、プロデューサー、一部の出演者が「パディントン」シリーズと一緒なので。)

ウォンカ役を演じるティモシー・シャラメの歌声とパフォーマンスはまさに圧巻で、ウォンカの魅せる非現実的な世界観を見事に体現しています。彼がミュージカル作品に出演しているのを見たのは初めてですが、とても自然にこなしており、これからもこのような作品に呼ばれる可能性は十二分にあるのではないかと思いました。

更に、彼の周りを固める実力派の役者陣も素晴らしい上に豪華で驚きました。宣伝活動にも参加していたウンパルンパ役のヒュー・グラントの歌と踊りは、事前に知っていても抱腹絶倒ものでしたが、オスカー女優のオリヴィア・コールマンまでもが少しではありますが歌声を披露していたのには驚きました。また、ドラマシリーズ『ダウントン・アビー』("Downton Abbey"、2010-2015年)の執事カーソン役でもおなじみのジム・カーターの伸びやかな歌声にも圧倒されてしまいました。警察署長役を務めるキーガン=マイケル・キーのミュージカルシーンが少なかったのは残念でしたが、とにかくミュージカル映画としての仕上がりが素晴らしい作品だと強く感じました。今後、ウェスト・エンドやブロードウェイでミュージカル化されることもありそうだな、と思いました。

また、これ以外にも「Mr.ビーン」のキャラクターでおなじみのUKを代表するコメディ俳優ローワン・アトキンソンや、映画「パディントン」シリーズで母親役を好演していたサディ・ホーキンスといったレジェンド級の役者さんたちも出演しており、とても贅沢な時間を過ごすことができます。実写映画の「パディントン」シリーズや「メリー・ポピンズ」シリーズ、『マチルダ』などが好きな人は気に入ること間違いなしの一本です。

甘いだけじゃない、チョコレートの話

チョコレートは甘いものもたくさんありますが、ダークでビターな味のものもたくさんありますよね。『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』も、一見すると楽しい世界を描いているように見えますが、ウォンカの戦う相手となる社会構造はなかなかにリアルなビターな世界です。

冒頭、お金はほとんどないものの夢と希望に満ち溢れていたウォンカ。彼が瞬く間に無一文になってしまう様はなかなかにリアルです。また、契約書の細かい条項を読んでいなかったがために法外な金銭を要求されたり、その支払い能力がないと判断されれば法外な低賃金での労働を強要されたりと、社会構造の暗部が描かれています。
また、市場への新規参入を拒み、ウォンカを潰そうとする「チョコレート・カルテル」は教会の神父や警察署長に賄賂としてチョコレートを渡しており、教会の地下にはたくさんのチョコレートが蓄えられています。現実世界ではこれがチョコレートではなくお金で行われることもあり、絶妙なリアルさがあります。
明るいエンターテイメント作品の中で、このような社会構造の暗部を描くセンスは、さすが「パディントン」シリーズの制作陣としか言いようがありません。

そんな『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ですが、解決しきれていないと感じる問題もありました。それは、チョコレートの裏に潜む、人種差別や奴隷売買、カカオ豆採取における児童労働問題です。
ヒュー・グラントが今回演じたウンパルンパは、ダールの『チョコレート工場の秘密』にも登場する人気キャラクターで、映画化の際にも必ず登場しています。ウンパルンパは個人名ではなく、民族の名前で、「ルンパランドに住む小人」という設定です。『チョコレート工場の秘密』では、ウォンカの経営する工場の労働者がすべてウンパルンパとされています。ウォンカはウンパルンパを「輸入」して工場で働かせているというのです。
このウンパルンパ、『チョコレート工場の秘密』出版当初は「アフリカのピグミー族」という実在の民族の名前でした。しかし、人種差別的ではないか、と問題になったため、後に設定が変更されました。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』ではウォンカとウンパルンパの間には確執があるとして描かれており、その確執が生まれた原因についても語られます。非常にユーモラスな場面なので私も気に入ってはいますが、どうしてもはいごにちらつく植民地主義が気になってしまいました。
また、近年では大きな問題として叫ばれているのが、カカオ豆採取の蹴る児童労働の問題。私たちが安価でおいしいチョコレートを食べられている裏には、チョコレートを食べたこともない子供たちが、学校にも行かず命を削りながら、不当な安値で奴隷のごとくカカオ豆採取に励んでいる、という実情があります。これを解消するための取り組みを世界中の大手チョコレート企業がそれぞれ実施していたり、フェアトレードのチョコレート購入を推進する運動が起きていたりします。
このような実情を踏まえると、『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』での一部の描写には納得できない部分がありました。ウォンカの相棒であるヌードルが黒人の少女である点もまた、様々な議論の種になりうるな、と感じました。

一つの作品ですべての問題を解決することは不可能ですし、限界はあるので仕方のないことではあるのですが、世界や社会に存在する様々な課題に思いを馳せ、その難しさを改めて実感しました。

『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は多くの人々が楽しむことのできるエンターテイメント作品であると同時に、様々な社会問題についても考えさせられる作品です。一人で見ても楽しめることはもちろんですが、誰かと一緒に観ることで議論に花が咲くかもしれません。
そして、映像と音楽が非常に美しい作品なので、少しでも気になる方は是非、映画館でご覧になることを強くお勧めいたします。

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