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『敵は、本能寺にあり!』

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“本能寺の変”には『黒幕』がいた――。 戦国最大のミステリー“本能寺の変”の『真実』と、信長の隠し子が辿る戦乱の世の悲しき運命……。 幾つ屍を越えようとも、歩む道の先には骸の山が…
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#織田信長

『敵は、本能寺にあり!』 最終話『革命前夜』

『敵は、本能寺にあり!』 最終話『革命前夜』

「失礼ながら信長様の計略には綻びが多く生じております。比叡山焼き討ち後、次々と敵対勢力を滅ぼし、本願寺や丹波を抑え、天下静謐の礎を築かれました。
そこで武田征伐に於いて信忠様に戦功を立てさせ、親の威光にあやかっている訳ではないと、格の違いを見せつけるおつもりだったのでしょう……。
毛利や義昭が秀吉殿に敗れるのも目前。時間は掛かりましたが、思い描かれていた通りに進んだのでは? しかし思わぬ誤算が。

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『敵は、本能寺にあり!』 第三十一話『夢幻の蝶』

『敵は、本能寺にあり!』 第三十一話『夢幻の蝶』

「実は……」と言い掛けた伝五に、皆は息を呑み待った。先程から明らかに怪訝しい彼の様子に、誰もが気付いている。

「……帰蝶様から頼まれ、松姫殿を武蔵国の金照庵へと逃がしました。信忠様の側室 寿々様への焦りは感じるものの、戦に於いての恨みなどは露ほども。
ただ……、その、護衛に付いておられるのは、――鳳蝶様にございます」

「何!? 帰蝶様は、その事を御存知なのか……!?」
皆から責められる覚悟をも

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『敵は、本能寺にあり!』 第二十八話『翳る余徳の眩耀』

『敵は、本能寺にあり!』 第二十八話『翳る余徳の眩耀』

「こちらへ寝返った武田の家臣は、悉く断首せよ! たとえ『先刻、信忠に赦された』と申してもじゃ!」
激しく気霜を吐く信長に従い、後陣の信長軍は英姿颯爽と進む。裏切りを繰り返しかねない立場ある者を、迷いなく斬り伏せながら。

 本陣の信忠らは、疾風の如く進撃――。
勝頼が迎え撃つ新府城の、目前に迫る。
しかし、木曾谷敗退による布陣の乱れを立て直せぬままの新府城では、信忠の勢いに恐れをなした家臣が相次い

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『敵は、本能寺にあり!』 【第一章『蝶鳴く城』】 第一話『疎隔の子』

『敵は、本能寺にあり!』 【第一章『蝶鳴く城』】 第一話『疎隔の子』

 ―1582年―
 褥から起き上がり煙管を燻らせる信長を、光秀は寝そべったまま見上げる。
シャープな顎先から流れる美しい輪郭を微睡みの中で眺め、憧憬の身を案じた。
ふと注がれた切れ長の視線に彼の心臓は跳ね、無垢な想いが口を衝く。

「この先何が起きようと、私を信じてくださりますか……」

「無論」
すぐさま返された言葉に、光秀の迷いは消え去る。

 日成らずして、丹波亀山城に駭きし叫号――。

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