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「ラメルノエリキサ」感想

先日、渡辺優さんのエッセイ「並行宇宙でしか生きられないわたしたちのたのしい暮らし」を読んで興味を持ち、早速小説を読んだので感想です。


復讐は自分のためだと言うりなちゃんには同感だった。
私も人生で一番失礼なことを言われた時、こいつをどうしてやろうかと思った。
相手が私を怖がって人づてで謝ってきて更に腹が立ち、その件は隠して違う事情で会社を辞めると上司に伝えたら、何だかんだあって先に相手が会社を辞めてくれた。
自分の力で出来ることなんてたかが知れてるし、天罰が下るぞ、と後は天に任せるようにしてる。

でもりなちゃんは、自分できっちり行ってしまうのが大いに痛快。

私が、大切な自分が害された出来事を全てきっちり精算してきたという結果

それが、りなちゃんにとっての復讐。原動力。
私もよく害があるかないかで考えるから、りなちゃんの“自分を害された”という表現には共感した。
 

お姉ちゃんに『復讐の申し子』というあだ名を付けられてるの最高。
これが渡辺優さん節なんだと思う。
「並行宇宙でしか~」でのワッフルの妖怪と同じ。面白すぎる、そのワードチョイスとセンス。
 


「警察に通報してくださったご近所の方が聞いていたのよ。てめえぜってえぶっ殺すって、叫んだ人がいたらしいわ。その方はその叫び声を聞いてポリスを呼んだわけだけど」
まあ。

この“まあ。”の、りなちゃんの心の声が大好き。
誰が警察を呼んだのだろうと思っていたら、こんなことになっていたとは。
あとこれも「並行宇宙でしか~」であったけど、たまに英語をカタカナにしてはさんでくるのがユーモラスで好き。
 

りなちゃんの元カレ篠田の浮気相手が強烈で、間違いなく面倒臭い人だって言うりなちゃんに笑った。ほんそれ。
その浮気相手からのメールを保存して、スクショまで撮るりなちゃんが賢くて好き。
篠田への復讐内容を知りたかったから、ちゃんと教えてくれて良かった。
 

りなちゃんへの複数の男子からの告白の仕方が、根性なくて気に食わなかったのも、「俺とつき合って見る?」のたぶん心の中での返しが、“みねぇよ。つき合ってみねぇよ。”なのも本当に最高。おもしろすぎる。
 

ラメルノエリキサの正体が分かった時の、立川のやばい連発の大声がかわいかった。
立川の急なキャラ変も気になるけど、たぶんりなちゃんが言ってた通りなんだろうな。知らないけど。
 

りなちゃんの言う“完璧なママ“というのがきっと皮肉だと思っていたけれど、その理由に納得した。ママはどうしてその完璧という仮面を被っているんだろう。


りなちゃんのお姉ちゃんもすごく好き。
幼いころに公園で出会った見知らぬ三人組を、りなちゃんと一緒にえぐい口喧嘩で圧勝したのも、りなちゃんが加害者になると自分にも迷惑がかかるからやめてほしいと正直に話したのも、りなちゃんと一緒に死体遺棄しようと思ったのも、ママのことが大っ嫌いなのも全部好き。

お姉ちゃんはね、自分の幸せが一番大事なの。自分が一番大好きだから。

こうなったらもう、自分の幸せとりなちゃんの復讐欲を両方満たすために、ちょっと手伝おうかなって



犯人は完璧なママの崇拝者かと思ってから、あ、そっちなんだ~と思った。
確かにちらっと出てきた気がする。

ママのためじゃなくて、自分のためでしょ。

勘違いしちゃダメだよ。ママのためじゃなくて、ママが大好きな自分のためでしょ。

このりなちゃんの台詞を読んで、気が付いたことがある。
私には甥っ子と姪っ子がいて、その二人の存在は私に愛を教えてくれた。
いつも姉の旦那が居ない時に二人の遊び相手になっていた。
だけど、姉と甥っ子の関係がうまくいかなくなり、姉家族といると心が苦しくなる為、会うことをやめた。
あぁ。私も、私を無条件に愛してくれている存在がいることを確認するために、二人に会っていたんだなぁと気付いた。
大好きだった姉たちのためではなく、自分のため。
私は親からもうまく愛してもらえず、自分のことも愛することができていなかったから。
私は自分を愛するために生まれたんだなぁとも思った。


一貫して、自分のことが大好きで、自分の衝動のままに突き進むりなちゃんは、読んでいてとても壮快だった。
今はまだ胸を張ってりなちゃんのように言えなくても、死ぬまでにはきっと、私も自分のことがとってもとっても大好きだと言えるようになってると思いたい。
りなちゃんが大好き!


こちらのサイトで、対談と最初の一部が読める。

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