見出し画像

消耗の豚

東の農場で育った豚が
南農場に移された
東の豚は南農場の豚の
生活の中に混じった
東育ちの豚は新しい集団の
豚たちがする、奇妙な行い
なんとも素敵に見える行い
非道に思える行い
どの行いも尊重するように努めた
豚はその集団に溶け込む必要を感じた
理解できないことでも理解しようと
熱心に取り組んだ
この集団に受け入れられないと
一人でする泥浴びなんて哀しいだけ
東から来た豚は食事の食べ方を
周りに倣って真似をし、泥浴びの仕方も
周りのやり方にならった 強迫的に
それから今までしてきた泥浴びのやり方
夢中に餌に食らいついていたのも忘れた
豚は空っぽになってしまった
食事もできなくなり、泥のことも
ちっとも好きでなくなった
豚はこんなことなら貯金箱に
なってしまいたいと思った
また気楽にやりたい
豚は牙を岩に引っ掛けて折った
それから囲いの釘に耳を引っ掛けて
ちぎってしまった
何かが戻ってくると思って
聞こえない、牙のない豚になることで
彼は豚という自我を越えようとした
彼はシリアスに過ぎた
賢さが自分に歯向い始めると
それをとめる術を見つけることは至難
豚はある時から跳ねる事を始めた
ひたすら跳ねる事をした
豚はただただ信じた、跳ねる事を
もう考えたりしなかった
それが希望に思えた
東の豚はその後の生涯を通して
ひたすらに跳ね続けた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?