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予想外で、急速で、眩しかった、私たちの夏

柔らかい髪の毛と彫刻みたいにきれいな横顔。
目をつむって、音楽に身を任せる様子がなんとも美しくって。

踊りに行こうと珍しく夜の街に出かけた私たち。
そこで出会ったのが彼だった。普通は男性と踊ることもなく、女友達と楽しむことが多いのに、なぜかその日だけは、そんな気分だった。

私の前ポケットに手を入れて、耳元で歌詞を歌う彼、一緒に踊るのは思ったより楽しくて。長いまつげ、グリーンの目、柔らかい髪の毛と無邪気な笑顔、あまりに美しくて、これは映画なのかもしれないと思った。

その日中に連絡が来て、またどこか遊びに行かないかと誘ってきた。
”正直君と出かけられれば満足だから、どこでもいいよ” と。

結局海に行くことにして、ほぼずっと水中で遊んでいた。彼は良くも悪くも魚みたいで、ずーっと波と戯れて、でも不思議なのはいくら激しい波にもまれても、見た目が完璧なところ。
グリーンの目と、海水でオールバックになった明るいブラウンの髪の毛、夕日に照らされたオレンジやピンクの青い海。エフォートレスにそんなに美しいのは反則だと思った。同時にこれは写真とか撮ってる場合じゃない、今を楽しまなきゃ(そもそもスマホなんて手元になかったけど)と思った。

お互いに帰りたくなくて、真っ暗になる9時ぐらいまで海岸にいて、そのあとはコンビニで軽くご飯とお酒を買ってお散歩していた。そろそろさすがに帰らないといけない、そこで問題が起こった。
―電車が運転を見合わせており、家までたどり着く方法がなかったのだ。

どうする? 帰れるところまで帰ってホテル探す…? 
そこで何を思ったか、すっかり映画の中の主人公気分だった私は
”海岸で朝日みるのはどう?” と提案していた。彼も、”いいよ。そうしようか” と、出発直前で電車から飛び降り、再び海岸に向かった。

”普通なら絶対こんなことしないのに”、と二人で笑いながら、
海岸にバスタオルを敷いて星空を眺めた。月もきれいで、雲の流れもはやい。意外と冷え込んだ夜は、できるだけ近寄った。人って暖かい。”まだ朝になるまで7時間あるけどどうする?私たちはいつも最終電車を逃すね”、と大笑いした。

結局朝になって、エアポッドをシェアして音楽を聴きながら、死にそうになりながら帰った。

結局そのあとも数回会った。会ったときは高確率で終電に乗り遅れた。
ずっとこのまま彼が日本にいてくれたらいいのに、と思ったけれどそれは無理な話。
私たちが会った時点で、残りが1か月ぐらいしかなかったから。

育った環境も第一言語も違ったけれど、なぜか、永遠に話し続けることができた私たち。
彼の帰国日でさえ、”どうせ飛行機で寝るんだもん、今日は寝ないでお喋りしようよ。今は時差がないからずっと話し続けられるでしょ?” とずっと深夜の街角でずっと話していた。

終わりが見えていたからお互いに惹かれあっていたのか、シンプルに相性がよかったのか、今となってはわからないけれど、素敵な夏だったことは確か。

離れ離れになった私たちは、今まで通りの人生を自分の国で送っていて、いつかきっとまた素敵だなと思う人に出会うだろう。そういうもの。
またいつ会えるか、そもそも会えるかどうかわからないなんて、心が痛いけれど。

けれど、そうなることが分かっていて始まった、
私たちのなんちゃってデート。


予想外で、急速で、眩しくて、映画みたいな、夏の3週間。

あなたが素敵な人生を歩めますように。
もしできることなら、私たちの人生がまたどこかで交差しますように。
また世界のどこかで、会えるといいな。


聴いていてうわあ、ぴったりって思っちゃった曲。
"ur so pretty" by Wasia Project

You're so pretty.
When you smile, it kills me, oh
Can't stop thinking 'bout the way you kissed me
Under the stars
And you're so lovely
When you cry, it hurts me, oh
You're the only person left, so hold me
Don't leave me
I'm so scared that the moments we shared
Won't happen again
I don't want this to end
'Cause you're so pretty
When you smile, it kills me, oh
You're the only person left, so hold me
Don't leave me

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