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0-2.物語を作る力は、アイデア力×技術力 | 創作技術の全体像

どうも、のべろです。

前回は、面白い物語とは何かについて書きました。

前回の記事をまとめると……
面白い物語とは、読者の感情を動かす物語であるということ。

さらに、ライトノベルに限って言うなら、
キャラクターを好きになってもらうことが特に重要ということでした。

読者の感情を動かし、キャラクターを好きになってもらう。
創作技術はそのために活用するものです。

ですが、まず理解しておいてほしいのは、
「物語を面白くする技術」と一言で言っても、
そうそう簡単に語りきれるものではありません。

例えば、ラノベ新人賞の最大手である電撃大賞の評価シートでは、
物語を評価するための項目として以下の5つが用意されています。

・オリジナリティー
・ストーリー
・設定
・キャラクター
・文章力

面白い小説を作り上げるためには様々な技術が必要であり、
すべてが高いレベルで噛み合っていることが求められます。

言ってみれば、小説は総合芸術なのです。


もちろんこのnoteの最終目標は、
主要な技術について網羅し、
読めば頭の中でしっかりライトノベルの技術を理解できるような技術体系。

それらの技術について順を追って語っていく前に、
今回はそのための第一歩として、
求められる技術の全体像を概観しておきます。


まず結論を言ってしまうと、
物語を作る力とは
「アイデア力・技術力」の二つです。

そして、
物語の面白さは
「アイデアの面白さ×技術の高さ」で決まります。

それぞれ解説していきます。


アイデア力


・アイデア力とは何か

アイデア力を一言で言うと、
「こういう風な物語を書こうとしてるんだよ」と説明したときに
「それ、面白そう!」と思わせる力
です。

アイデアの良さは、作家にとって何よりの武器です。

アイデアが良ければ、スタート地点から
他のライバルたちと大きく差をつけることができます。

アニメ化やグッズ化に耐えうる面白いアイデアを、
業界の誰もが求めています。


では、アイデアの良さは何で決まるのか。

これまた簡単には語れない話で、切り口はいくつもありますが、
ここでは二つの重要キーワード、
ログラインオリジナリティー(新規性)について解説します。


・ログライン

日常では聞き慣れない言葉ですが、
もともとは映画業界の言葉で、
小説や漫画の世界でも広く使われています。

ログラインとは、
物語の内容を一言で表したもの。

決まった形が定まっているわけではありませんが、
よくあるログラインというのはたいてい以下のような形を取ります。

○○な世界で、○○な主人公が、○○を目指す話。

どんな主人公がどこで何をするのか、これが物語の骨格です。

あくまでこれは基本形なので、物語の売りに合わせて
ヒロインを紹介したり、
物語のきっかけとなる出来事を付け加えたり、
いろいろな形が考えられます。

もしあなたが今、新人賞などに応募しようと考えている物語があるなら、
それを一言のログラインに落とし込んでみてください。


ログラインを聞いただけで面白い物語は
アイデア力が優れている
と言えます。

もっと言うなら、
ログラインを聞いただけで感情が動くのが理想です。

例えば、
ラブコメのログライン
(こんな主人公がこんなヒロインとこんな状況になる)を聞いて
「そのヒロイン絶対可愛いじゃん!」と思う。

異世界転生もののログライン
(こういう設定の異世界に、こんな主人公が、こんなスキルを持って転生する)を聞いて
「どんなことが起こるか先が気になる!」と思う。

そういうログラインが良いログラインであり、
面白い物語の元となります。


では面白いログラインはどうやって作るのか……
というのはまたの機会に譲るとして。

アイデア力を語る上でもう一つ大事な要素、
オリジナリティーについて解説します。


・オリジナリティー(新規性)

オリジナリティー(新規性)と書いているとおり、
この二つはほぼ同じ意味と捉えてOKです。

他と違う何か、目新しい何かがあることは、
読み手の目を引く大きな要素です。

オリジナリティーがあるからこそ
ログラインを面白く感じる
、とも言えます。


また、新規性と言っても、
何もかも全てがまったく新しい必要はありません。

というより、そこまでいくと理解が難しくなってしまいます。

物語の面白さ自体は既存の作品と同じで、
ほんのわずかだけ違うところがある、
くらいの方が面白く感じます。

世界観、ストーリー、キャラの属性、あるいは関係性……。

何でも良いのですが、
何かしらのオリジナリティーを用意しましょう。


まとめると、
・ログラインが面白い。
・優れたオリジナリティーがある。

そういったアイデアの力が、
物語の面白さを決める二要素のうちの一つです。


技術力


・技術力とは何か

それではもう一つの要素、技術力とは何か。

それは、
アイデアから物語を膨らませ、
一冊の小説としてまとめ上げる力
です。


優れたアイデアがあれば、
「面白そう!」と思わせることはできます。

しかしそれはあくまで小さなアイデア。

一冊の小説にするという最終目標から見れば、
ほんの小さな種に過ぎません。


優れたアイデアをもとに、
その作品の面白いポイントをしっかり押さえ、
最初から最後まで面白く読める物語に仕立て上げる。

そのために作家は、
キャラクター、ストーリー(構成)、設定、そして文章を工夫します。

一冊の物語の中でキャラクターをどう見せていくのか、
どんなエピソードをどんな順番で配置していくのか、
もっと具体的に、どんな文章で物語を読者に伝えるのか。

これが、技術力です。

誤解を防ぐために補足しておくと、アイデア力と並べて技術力と名付けてはいますが、
「アイデア力は技術ではどうにもならない」と言いたいわけではありません。
むしろしっかりした技術がありますし、本noteでも解説していきます。

技術力に代わる言葉があれば良かったのですが、
色々考えたものの(実現力、創造力、創作力など……)
しっくりくるものがありませんでした。

何か良い言葉があればコメントで教えてください。

物語の面白さは、二つの力のかけ算で決まる


以上、アイデア力と技術力について説明してきました。

ここで、冒頭に書いた結論が出てきます。

物語の面白さは
「アイデアの面白さ×技術の高さ」で決まります。

10点×10点の100点満点のようなイメージです。

いくらアイデアが10点満点でも、
例えば文章が壊滅的なら、
面白く読むことはできません。

キャラや構成がいくら綺麗にできていても、
元々のアイデアが平凡ならば、
面白くするのは限界があるでしょう。

面白い物語というのは、
優れたアイデアを、高い技術で実現させた物語です。


商業的な視点


・アイデア力はパッケージであり、初動を決める

アイデア力と技術力を、
商業的な視点から考えてみます。

その物語で発揮されたアイデア力は、
小説のパッケージに反映されます。

パッケージとは、
読者が本を買って読む前に目にする情報のこと。
購入を検討するための判断材料と言ってもいいでしょう。

ラノベでは主に、タイトル、表紙のイラスト、裏面のあらすじ、帯のキャッチコピーがこれに当たります。

ログライン、そしてオリジナリティーはその作品の売りなので、
「この作品はこんなところが面白いんですよ!」
と伝わるように
パッケージに反映されます。

そしてそのパッケージの訴求が読み手に刺されば、
購入という結果に繋がるでしょう。

出版社の営業や書店もこれをわかっているため、
「この作品はパッケージが良い!」と思えるような作品は
書店の良い場所に置かれたりもします。


・技術力は中身であり、継続率や口コミに影響する

アイデア力がパッケージだとすれば
技術力は中身です。

読者から見れば、
作品の技術力(一冊の物語としての完成度)が高いかどうかは、
買って読んでみないとわかりません。

本を購入したときに抱いた期待を超えられるかどうかは、
すべて技術力にかかっています。

そして、期待通り、あるいは期待以上の感情体験ができたなら、
読者の読後感は素晴らしいものになるでしょう。

場合によっては良い口コミを広めてくれるかもしれませんし、
次の巻を買ってくれる可能性も高まります。

もしかしたら、同じ作者の他の本に手を伸ばしてくれるかもしれません。


一方で、技術力不足により、
読者の期待を裏切ってしまったら……

下手をすれば悪評が広まってしまうかもしれませんし、
少なくとも続巻が買われることはないでしょう。


商業的な視点で考えても、
どちらの力も大切であることがわかります。


新人賞やコンテストで求められるもの

それでは、出版社の開催している新人賞やコンテストでは、
アイデア力と技術力はどのように捉えられているでしょうか。

これはあくまで僕の感覚ですが、
やはり作品の面白さはアイデア力×技術力のかけ算で決まり、
○○点以上なら受賞、というボーダーが敷かれているイメージを持っています。

例えばその賞のボーダーが60点なら、
アイデア6点・技術10点のような作品も、
アイデア10点・技術6点のような作品も受賞する、
そんなイメージです。

もちろん理想は10点×10点で、
そういう作品は大賞や金賞といった上位の賞を獲りますが、
応募される作品がそんな作品ばかりとは限りません。

なので、片方の点数が少しだけ低くても、
伸びしろだと思って受賞させます。


アイデアは良いが技術力は低い作品は、
受賞後の改稿で原稿を整えれば大化けする可能性があります。

技術力は高いがアイデアが微妙な作品は、
その作品がヒットしないとしても、
アイデアを洗練させた次回作でヒットが見込めます。

そもそも(この視点については今回深掘りしませんが)
アイデアが読者に刺さるかなんて市場に出してみないとわからないところなので、
技術力が高い作家を取るのは無難な選択と言えます。

どちらの場合も、出版社は作家の成長を見込んで投資しているわけですね。
(なので、作家はデビュー後も鍛錬を続けないといけません)

これが、出版社が新人賞を開催する意義です。


とはいえ、片方が5点以下まで低くなってしまうと
受賞が厳しくなってきます。

この二つの力はトレードオフではまったくなく、
それぞれ伸ばしていけるものです。

総合力の高い作品を目指しましょう。

まとめとこれから


以上、ライトノベルの技術について概観しました。

あくまで全体像として
細部を端折りながら解説したので、
「そんな単純なもんじゃないだろ」と思われたかもしれません。

実際、そう単純じゃありませんし、
いろんな技術が絡んできます。

それらについてはこれから深掘っていくとしましょう。

次回からはまず、
曖昧な言葉で公募勢を悩ませる難関、
オリジナリティーについて書いていきます。

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