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面白い物語とは何か? 面白いライトノベルとは何か?【ライトノベル技術体系】

どうも、のべろです。

今回の記事から本格的に、
「ライトノベル技術体系」を構築してきます。

(僕のnoteの主旨については前回の記事をご覧ください)

早速実践的で実用的な技術を書いていってもいいのですが……その前に。

最初のテーマとして
「面白い物語とは何か」
「面白いライトノベルとは何か」
を語るべきだと考えました。


もちろんこれらの問いに明確な正解はなく、
作家によって答えが異なるところです。

だからこそ、
僕の語る技術がどんな物語を目指しているのか、
最初に認識をすり合わせておきます。


結論から言うと、僕は面白い物語を
「感情が動く物語」と定義しています。

そして、
全ての創作技術は
この「感情が動く物語」を達成するためにある
と考えています。


人はなぜ物語を手に取るのか


物語=感情体験

そもそも、物語というのは嗜好品です。

人は食事をしないと生きていけないですし、
服やスマホがないと生活に困りますが、
物語を摂取しなくても生きていけます。

実際、「小説や漫画なんて全然読まないよ」という人もたくさんいますよね。

それでもなぜ人が物語を読むのかと言うと、
日常では味わえないような感情を体験したいからではないでしょうか。

その感情の種類というのは何でも良いんです。

コメディなら「笑える」、
難病ものなら「泣ける」、
ミステリーなら「真相が気になる」、
恋愛ものなら「キュンキュンする」、
ホラーなら「ゾッとする」
などなど……。

もちろん一つの作品で一つの感情というわけではまったくなく、
むしろそれでは飽きてしまうので、
笑って泣けて熱くなれる物語ならなお良しです。


つまり、誰かが「面白い物語を読みたい」と言っているとき、
言い換えれば「質の高い感情体験がしたい」と思っているのです。


そして、具体的に求めている感情体験があるなら、
それを得られそうな物語を選びます。

難病ものが好きな読者が何度だって同じようなジャンルの本を読むのは、
「また感動して泣きたい」と思っているから。

ラブコメ好きなラノベ読者が何冊でもラブコメを買うのは、
「きっとまた可愛いヒロインに出会えるはず」と期待するから。


そして、もしも期待していたような感情体験が生まれなければ、
「この物語はつまらなかった」となる
わけです。


心が大きく動いた物語の力

では逆に、読者の心を動かし続けることができたら。

もちろんその物語は最後まで読まれ、
読者は「面白かった」という感想を抱くことでしょう。


ただ、面白い物語にはまだ先があると思っています。


その物語が圧倒的に面白かったらどうなるか。

読者の期待に応えるのはもちろん、
それを上回るような、
大きく感情を揺さぶられる物語だったのなら……

読者を行動に駆り立てます。

例えば、Amazonで☆5のレビューをつける。
友達にその本をオススメする。

これは、「自分と同じ感動を他の誰かにも味わってほしい」という気持ちからくるものです。
(逆につまらなすぎても、☆1をつけられてしまうかもしれませんが……)


さらに、もっと他の行動に駆り立てる例もあります。

例えば、「弱キャラ友崎くん」というライトノベルがあります。

「人生をクソゲー認定して諦めたスクールカースト最下層の陰キャゲーマーが、ハイスペック女子高生のアドバイスを受けながら人生を攻略する」
という内容の青春ラブコメで、
主人公の友崎くんがもがきながらも成長する姿に感銘を受ける読者(またはアニメ視聴者)が多くいました。

その結果、当時のTwitterで「#友崎くんチャレンジ」というハッシュタグが生まれました。

作中での友崎くんと同じようなトレーニングを行い、
自分自身の人生を攻略しようとする。

そんな行動をとる学生がたくさんいたのです。


これってすごいことだと思いませんか?


面白い物語には、
人の行動まで変えてしまう力があります。


読者に読み続けてもらうには


話を元に戻しましょう。

読書における感情についてもう少し深掘ると、
この感情体験というのは、
本を読み終わったときだけに起こせば良いのではありません。

どのページをめくっているときも、
読者の感情を動かしていないといけない
のです。

それはどんな感情かというと、
「続きが気になる」という感情です。

その方法は何でも構いません。

「この物語の世界ではこれからどんなことが起こるんだろう」でも、
「このキャラクターは今からどんなことをしでかすんだろう」でも、
「主人公は死んでしまうのか? それとも生きて帰れるのか?」でも、
「次はヒロインのどんな可愛い姿が見られるのかな?」でも、
いろんな種類の好奇心が考えられます。

何かしらの方法を使って
読者のこういった感情をかき立てることで、
「ページをめくる手が止まらない」という状態を作り上げる。

それが、小説家としての技術です。

これに失敗してしまうと……
つまり、読者がどこかで「あれ?」と違和感を抱いたり、
「なんだか話が平坦で感情が動かないなあ」という状態になってしまうと、
本は閉じられ、もう二度と開かれることはないでしょう。


特にライトノベルで重視される面白さ


ここまでに書いたことは、
小説、漫画、映画、あるいはゲームなど、
あらゆるエンタメ的な物語に共通するものです。

もちろんライトノベルでも、
読者の感情をかき立てることが重要になるのは言うまでもありません。

そしてここに一つ、
ライトノベルだからこそより重要になる感情を付け加えておきます。

それが、「キャラクターが好き」という感情です。


ライトノベルの特徴

ここで、ライトノベルの媒体としての特徴を考えてみます。

ライトノベルが他と違うところは何でしょうか。
一般文芸の小説や、週刊誌に載る漫画や、100分ほどの映画と違うところは何でしょうか。

僕は、以下の3点が大きいと考えています。

  • シリーズ化を前提としていること

  • 一冊で物語がまとまること

  • 四ヶ月前後待たないと次の物語が読めないこと

(Web投稿作、単巻完結作は違いますが、文庫ラノベの主流として)


映画や一般文芸(の多く)は、
人気が出てシリーズ化することはあっても、
シリーズ化を前提にして作らないことの方が多いです。

ですがライトノベル(の多く)では、シリーズ化が既定路線。
五巻、十巻と積み重ねてアニメ化まで持って行くことが主要なゴールになっています。

そして、長く続けるという前提は漫画でも同じですが、
漫画では週刊誌や月刊誌、あるいは週一更新の漫画アプリなど、
短いスパンで少しずつ読み進めるのが基本。

「一冊で綺麗にまとめる」という意識があまりないので、
単行本になったときも中途半端なところで話が終わったりします。

一方で、ラノベは書き下ろし文庫形式。
数ヶ月待って続刊を買い、
一つの物語を一気に読むというスタイルです。


さて、何が言いたいのかというと、
ライトノベルが買われ続けるのってけっこう大変じゃないですか、ということ。

一冊で物語が綺麗にまとまるので、
「ストーリーの続きが気になる」という理由で続刊を期待させるのが、
漫画と比べれば難しい。

(特に、一巻完結を要求される新人賞の受賞作ならなおさらですね)

しかもそんな状態で、
読者が続刊を買うかどうかの判断をするのは数ヶ月後。

ぶっちゃけ、細かいストーリーなんて忘れ去られてしまっているでしょう。


では、ストーリーが理由でないならば、
何を理由に読者は続刊を買うのか。


それこそが、キャラクターの力なのです。


「そういえばあのキャラクターが良かったな」
「またあのキャラクターたちに会いたい」
「新しい舞台で躍動するキャラクターたちを見てみたい」
数ヶ月後に続刊の発売を店頭で知ったとき、そう思ってもらえるか。

これが、キャラクターを好きになってもらえるということです。


だから、そんな魅力的なキャラクターが登場するライトノベルを、
出版社は新人賞受賞作に求めています。

そういう意味で、
ライトノベルに関するあらゆる要素や技術
(ストーリー、構成、題材選び……)は、
キャラクターを立てるためにある
と言っても過言ではないかもしれません。

近年「市場とweb投稿サイトで受ける物語が違う」と言われるのは、この媒体特性も大きな理由だと思っています。

上述の通り、市場で重視されるのはキャラクター。
一方でweb小説は毎日数千文字ずつ読む形が基本で、
読者があまりストーリーを忘れないこともあり、
キャラよりもストーリー(やテンプレ)が重視される傾向にあります。

web小説の拾い上げをする編集者はキャラクターを重視しているので、
キャラクターが弱いと判断された小説は
「ネットで伸びてるけど書籍化されない」という事態に陥ったりもします。

まとめ


技術を語る前準備として、
「面白い物語とは何か?」について書きました。

これらのことを頭の片隅で常に意識できると、
物語の質が上がると思います。

とはいえ、
「読者の感情を動かすべし」
「キャラクターを立てるべし」と言われても、
抽象的でイメージしにくいのも事実です。

そのための技術だったり、
どんな作品でどんな風に技術が使われているかは、
これから深掘っていきます。


本記事を読んで、
「自分もそういう面白いライトノベルを書きたい!」
と思ってくださった方は、
これからも読んでくださると幸いです。

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