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オリジナリティは、才能でも作家性でもなく技術である

どうも、のべろです。

前回は、ライトノベル技術の全体像を概観しました。

「ライトノベル技術体系」と題している本noteですが、
今回からはついに、
より実践的・具体的な技術の話に入っていきます。


最初のテーマはオリジナリティ・新規性です。


公募での受賞を目指している方には、
「オリジナリティって何なの?」
「評価シートで新規性が足りないって言われたけどどういうこと?」
と、オリジナリティに悩まされている方も多いのではないでしょうか。

僕自身、一番最初に書いて新人賞に応募した作品では
評価シートに「コンセプトの新規性や魅力に欠ける」
と書かれてしまった過去があります……。


当時は「どういうこと?」としか思えませんでしたが、
ちゃんとオリジナリティを理解できた今になって振り返ると、
確かにあの作品はオリジナリティに欠けていました。

これから全三回(予定)にわたり、
オリジナリティについて解説していきます。

これらの記事を読めば、
「この作品にはオリジナリティがない」
という評価から脱却できるはずです。

オリジナリティのなさを理由に落選した頃の僕にもわかるように解説していきます。


あくまで読者視点で考える


・オリジナリティ≠作家性

オリジナリティとは何でしょうか。

これまた曖昧な言葉で、
たった一つの正解というものはありません。

そんな中で、
「オリジナリティとは作家性である」
と定義する人もいます。

つまり――

オリジナリティとはすなわち、作家の個性の表出である!

オリジナリティある物語を創れないなら、
まずは自分自身を見つめ直し、
自分の個性や好きなもの、武器を探すところから始めてみよう!

そしてその武器を磨き、あなたにしか書けない物語を紡いでいこう!

みたいな話ですね。

個性を見つめる、武器を見つける。

これはこれで一つ大切な話だとは思います。

ですが、この観点でオリジナリティを語るのは危険だと僕は思っています。

なぜならこの考え方は、
読者視点に立っていないからです。


こと商業の世界においては、
作品の良し悪しを評価するのは作者ではなく読者です。
(読者の感情が動くかどうか、それが一番でしたね)

そして、ドライな言い方になりますが、
完成物の小説だけを読む読者にとって、
完成までの過程がどうだったかというのはあまり関係がありません。

その作品に作家性が発揮されていようとなかろうと、
面白い作品は面白いし、
つまらない作品はつまらないのです。

もちろん「読んでいて作家の熱意が伝わる」
という言い方がされる作品もあるのですが、
それもあくまで、高い技術でがあってこそ出てくる感想でしょう。


ここを理解せずに自分の方にばかり目を向けていると、
作品にオリジナリティを出すために個性を探し求めた結果、
ことによっては的外れなものを書いてしまうかもしれません。


遠回りせず結果を出すために僕がおすすめする方法は、
まずはどんなオリジナリティが読者に受けているのかを理解し、
その中から自分の書きたいものを見つける
という順番です。

(↓同じようなことをブログに書いたこともあります)

そして、
このような読者ファーストの作り方をしてなお滲み出てしまうのが作家性
だと僕は思います。


・オリジナリティも、あくまで技術

また、上述のような定義が危ういと考えるもう一つ理由として、
オリジナリティ=作家性、個性としてしまうと
「オリジナリティは後天的に身に付けるのが難しい」とか
「自分の持っているものを活かさなければならない」
といったニュアンスが含まれてしまうように感じます。

そんなこと、全然ありません。

尖った個性や作家性がないからといって
面白い作品が書けないわけではないし
何よりこれから上達していけば良いのです。

確かに、センスの善し悪しはあります。
ですが、センスは磨けます。


僕はオリジナリティを、シンプルに
「他の作品とどう違うか」という
読者からも感じられるような違いとして定義しています。

他の作品とどうずらすか、と考えれば
個性ではなく技術な気がしてきますよね。

そして、学べばできそうな気がしてきます。

実際、できます。


固有名詞なしの説明で作品を特定できるか?


それでは、オリジナリティとはどうやって出すのか。

ここで、作品にオリジナリティがあるかを判定する手軽な方法を紹介します。

それは、「固有名詞なしで作品説明できるか」を考えるということです。


・現代バトルファンタジーの例

例えば、以下のようなログラインを見て、どう思うでしょうか。

現代日本に突然現れはじめた化け物を、その討伐のために設立された組織に所属する者たちが倒す話。

王道な現代バトルファンタジーですが、
この説明ではどの作品を指しているのか特定できませんよね。

これだけではオリジナリティある物語とはいえず、
いわば型、テンプレのようなものです。

この手の話なら、
「どんな化け物なのか(世界観・設定)」
「どんな者が倒すのか(主人公)」
「どういうところを重点的に描くのか(アプローチ)」
といったところにオリジナリティをつけられます。

上の説明文に、以下のような一文を足してみるとどうなるでしょうか。

人間を襲う化け物は実は、自分が異世界転生して化け物たちを倒していると思い込んでいる、純粋無垢な少年少女たちだった。
→勇者症候群(電撃文庫)

その化け物駆除の仕事に就いていた主人公は、ひょんな事から化け物になってしまう。主人公は討伐組織に入ることになり、自分が化け物になったことがばれないように活動を続けなければならない。
→怪獣8号(ジャンプ+)

設定やキャラクター性を一つ加えることで、
作品が特定できるようになりました。

今こうして加えたものこそが、オリジナリティです。

このオリジナリティが面白いかどうかが
アイデア力のほぼすべてと言えます。


「大きなオリジナリティのアイデアは作品に一つだけ」と考える


続いて、オリジナリティのある作品を考える上で非常に大事な考え方を紹介します。


物語の構成要素には、
題材、キャラ、ストーリー、世界観などいろいろなものがあります。

そんな中でも
大きなオリジナリティのアイデアは一つだけ
だと考えるべきです。


もちろん、ある作品が他の作品と違う所なんて、
探そうと思えばいくらでもあります。

固有名詞は違うし、キャラクターの性格や見た目だって違うし、
ストーリーだってまるっきり同じなんてことはまずありません。

それでも、その作品のオリジナリティというのは一点であり、
一言で紹介できるようなものです。

その最も大きなオリジナリティから派生して、
あらゆる違いが生まれているのです。


何でもかんでも新しいと、「よくわからない」になってしまいます。

オリジナリティ(新規性)を詰め込みまくるのではなく、
ワンアイデアを物語全体に活かす。

上手い作品は、そういう風になっています。


次回、ラノベにおけるオリジナリティの類型


今回は、オリジナリティとは何かについて、
そしてオリジナリティの有無を判別する方法について書きました。

ただ、特に最後の「オリジナリティは一つだけ」という部分なんて、
読んだだけではピンとこないかもしれません。

実際、抽象的な理論だけで説明するのは難しいです。

そういった時に役立つのが、
実例に学ぶことです。

次の記事では、ライトノベルの人気作や新人賞受賞作を例に出しながら、
オリジナリティの類型、パターンを見ていきます。

僕自身、新作のアイデアはこの類型を無意識に使いながら発想しています。

ぜひ参考にしてみてください。


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