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舞台化の難しさ

6月某日、池袋の東京芸術劇場にて、舞台化されたコナンを観に行ってきました。

あ、今『名探偵コナン』を思い浮かべた方。
ハイ、残念。
こちらのコナンですよ。 

知る人ぞ知る
宮崎駿監督アニメの方です 



昭和世代の私としては、毎週夢中で観ていた懐かしのアニメなんですが。
再放送される度に繰り返し見て、ついには奮発してVHSビデオを買い集める程、好きでした。

あぁ…あの頃は、思いもしなかったんです。
ビデオのテープは、そのうち伸びたりキズがついてヘロヘロになり、寿命が来ることなんて。
ディスクなんて新たな文明の利器が、取って代わるなんて。
あの頃の私に教えてあげたい。
ビデオにお金を使うのは、やめなされ。
何十年か後に、TVでデジタルリマスター版が放送されて無料で録画できますぞ、と。


とにもかくにも、アニメ版コナンを愛する者としては、この長い連続アニメを一体どのように舞台化するのか、大変興味があったのです。 
キャストも、魅力的な俳優さんが多いですし。


加藤清史郎(コナン)、影山優佳(ラナ)、
成河(ジムシー)、門脇 麦(モンスリー)、
宮尾俊太郎(ダイス)、今井朋彦(レプカ)、
椎名桔平(おじい、ラオ博士)ほか 
演出・振付・美術:インバル・ピント 


しかしながら、大好きな作品がゆえに、期待感を上回る不安感。
アニメ作品が、私にとってはベストな位置にすでにあるわけで、それを上回ることはまず難しいでしょうから。


はたして、舞台が始まってみると、その不安感が的中してしまいました。
幕が開く度に始まるコンテンポラリー・ダンス。
現代アート的で、抽象的な演出。
話の展開も唐突なことが多く、アニメや原作を知らない方がいきなり観たら、わけの分からない箇所がけっこうあるのでは…と思いました。

事前に、インバル・ピントさんの演出の傾向というのは聞きかじってはいたのですが。
予想以上に苦手なコンテンポラリー・ダンスタイムも長くて、もういいよー、わかったから次行こうよー…と、思ってしまいました。

ところどころ、アニメの世界観を思わせるコミカルな演出もあるのですが、それが現代アート的な演出部分と噛み合っていないというか、なんだかチグハグな感じがしてしまって…。


ちょいちょいツッコミを入れたくなる点も、気になりました。
のこされ島に漂着したラナが気を失って倒れ、小屋に運ぼうというシーンで、ラナをゴロゴロ転がしながら幕の中に移動させるとか。 
(いや、病人なのに?)
おじいが亡くなり、コナンが悲しみの中、一人で島を出る決意をしてイカダで旅立つシーンで、急に愉快な音楽隊みたいな三人組が出てきて陽気な曲を演奏し始めるとか。
(いや、なんで今この曲…?)

効果音を作り出すところを、わざと舞台の端で見せている演出も、この舞台の肝だと思うのですが。
物語の世界観に現実が入り込んでくるようで集中できず、ちょっと邪魔に感じてしまいました。
どうにも、インバル・ピントさんと私、相性が悪いようです…。



でも、気に入った部分もあるんですよ。
海の中のシーンはとても綺麗で、しんとした水中の静けさが上手く表現されていました。
俳優さんたちの動きも、本当に水の中を泳いでいるようにしなやかで自然。
感心しました。


登場人物の中では、ダイス船長が一番イメージ通りで、アニメのキャラにも近くて好きでした。
彼が一番、舞台を盛り上げていたのではないでしょうか。

個人的には、門脇麦さんがどのようにモンスリーを演じるのか、好きなキャラ×俳優さんなので楽しみにしていたのですが、早口で喋るシーンになると、どうしてもドラマの「厨房のありす」の姿がダブって見えてしまって…(笑)
有名俳優さんならではの、あるあるでしょうか。

またモンスリーといえば、「バカね!」というセリフが印象的で、ぜひ門脇麦さんの「バカね!」を聞いてみたかったので、2度ほど聞けて嬉しかったです(笑)


今回あらためて思いましたが、アニメ作品の舞台化というのは難しいですね。
アニメならではの見せ方や面白さも、舞台に反映させないといけないですし、元の作品のファンの期待に応えるのも大変でしょうし。
忠実にアニメの世界観を再現するのか。
それとも、舞台としての芸術性を強く打ちだしていくのか。

この『未来少年コナン』も、
「アニメは見たことないからよく知らないけど、インバル・ピントさんの演出作品は他にも観ていて好きだったので…」
という方には、素晴らしい舞台だったと思います。
自由で枠にはまらず、挑戦的で。
芸術的な観点から見たら、とても優れた作品でした。
実際、スタンディング・オベーションが起きて、大勢の方が拍手喝采していましたし。


でも、私のようにアニメ作品のファンからすると、なんか違うなぁ、そこは求めてないんだよなぁ…と、なんとなくモヤモヤしたまま劇場をあとにした方も多いのでは。

個人的には、『千と千尋の神隠し』の舞台化のように、あくまでも元のアニメ作品の世界観を壊すことなく忠実に再現しながらも、舞台ならではの生きた表現や独特な演出方法を加味しているものの方が好みです。
舞台の世界に無理にアニメを取り込むのではなく、お互いの良さを維持してうまく共存している。
そんな作品にした方が、相乗効果でより素晴らしい舞台になる気がします。


祝の宴の後の静けさ

上演後の
写真撮影OKタイムに



さて。
なんだか疲れてしまい甘いものが欲しくなったので、カフェに寄りました。
劇場の地下出口から出て、駅に向かうとすぐにある「Patio de METRO」。
お茶には遅い時間だったので、ショーケースにはすでにケーキとプリン1個づつしか残っていませんでした。

お願いだ! 私にケーキを残してくれぃ!
そのためにカフェに入ったんだ。
心の中で叫びながら、じりじりと待機。
長い列ができていましたが飲み物だけオーダーする方が多く、しめしめとほくそ笑む私。
前に並んでる方は初老の男性だったので、たぶんケーキなんて頼まないだろう…と思っていたら、まんまと奪われました。
最後の1個を…。

というわけで、ケーキ脳になっていた自分をなだめすかして、プリンで納得させました。

でも美味しかったから
結果オーライ


こちらのカフェ、場所のせいか時間帯のせいか、オジサマ多めでした。
ラップトップ開きながらスイーツ頬張るオジサマ達、お疲れ様です。
もちろん女性客もたくさんいますけどね。
甘いもの好きだけど、洒落たカフェは女子ばかりで入りづらいんだよな〜、という男性諸君が安心して使えそうです。
落ち着いた雰囲気なので、私のようなおひとり様がホッとひと息つくのにも、ぜひ。





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