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【ニュースで学ぶESG用語#08】「カーボンプライシング」とは?

1. 用語解説

そもそも、「カーボンプライシング」とはどのような定義で使われているのでしょうか。いくつかのサイトでの定義をまとめてみました。

二酸化炭素排出に対してコストを課すこと。1トン当たりでコストを支払う仕組みや、決められた排出上限に満たない企業が排出許可証を発行できる仕組みなどがあります。二酸化炭素排出にコストを課すことは、排出量削減を促す最も効率的な方法と広く考えられています。

Schroders

カーボンプライシング(carbon pricing:CP)とは、排出されるCO2に価格付け(プライシング)することにより排出を抑制する仕組み。気候変動対策のひとつであり、CO2排出量を可視化、コスト化することで、CO2排出のより少ない行動を合理的に選んでもらうための仕組みとして活用・検討されている。

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カーボンプライシングには以下のような方法がある。

炭素税
燃料・電気の利用(=CO2の排出)に対して、その量に比例した 課税を行うことで、炭素に価格を付ける仕組み。国や自治体が実施する。

排出量取引(ETS)
排出量取引(キャップ・アンド・トレード方式)
排出量の上限値(キャップ)を決め、排出量が上限を超過する企業と下回る企業との間で「排出量」を売買(トレード)する仕組み。国や自治体が実施する。

クレジット取引(ベースライン・アンド・クレジット方式)
温室効果ガス排出削減プロジェクトが実施されなかった場合を基準(ベースライン)とし、温室効果ガス排出削減プロジェクトにより削減された温室効果ガス排出量(t-CO2)をクレジット=排出権として認証し、取引する仕組み。国、自治体、国際機関、民間機関等が実施する。

その他証書取引等
非化石価値取引(※)、FIT賦課金等。国や自治体が実施する。

※ クレジット取引と分類されている場合もあるが、厳密にはカーボンクレジットの取引とは異なり、証書(再生可能エネルギー等の電力量・熱量を「kWhやkJ」単位で認証するもの)の取引である。

インターナルカーボンプライシング
企業内で独自に排出量に価格を付け、投資判断などに活用。企業が実施する。

炭素国境調整措置
CO2の価格が低い国で作られた製品を輸入する際に、CO2分の価格差を事業者に負担してもらう仕組み(EU・米国で検討が進行中)。二国間、もしくは多国間で実施する。

その他
成果連動型の気候ファイナンス等。国際機関等が実施する。

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2. ニュース・記事でどのように使われるか

それでは、「カーボンプライシング」という言葉が実際のニュースや記事でどのように使用されているのか、いくつか見ていきましょう。

経済産業省は14日、脱炭素を経済成長につなげる政策を検討する審議会を開き、二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて企業に負担を求めるカーボンプライシングの本格導入に向けた議論を再開した。11月中にも論点を整理し、岸田文雄首相に制度案を報告する。

政府は新たな国債「GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債(仮称)」を発行して計20兆円規模を集め、脱炭素投資を支援する考えだ。カーボンプライシングを償還財源とする。首相が10月に「具体的な制度案を提示してもらいたい」と指示したことを受けて、経産省などが議論をふたたび始めた。

日本経済新聞

公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)は11月4日に声明を発表。日本政府が脱炭素社会に向けた戦略を話し合う「GX実行会議」で、二酸化炭素の排出などに金銭負担を求めるカーボンプライシング(CP)の基本的な構想案を示したことを受け、「2030年目標達成のため排出削減を強く促すCPを透明性の高い議論に基づき導入することを要請する」とする声明を発表した。

政府は10月26日、脱炭素社会に向けた戦略を協議するために設けた「GX(グリーントランスフォーメーション)実行会議」で、二酸化炭素(CO2)の排出に金銭負担を求めるCPの議論を開始。同会議では、成長志向型CP構想およびGXリーグ(GXL)の段階的発展に関する論点が提示され、並行してGXLに関する学識有識者検討会も開催。23年度のGXLの開始に向けて詳細が議論されている。

金融・投資メディアHEDGE GUIDE

■カーボンプライシングへの関心が高まるアジア
世界的に環境志向が強まるなか、アジア各国はGHG(温室効果ガス)の削減に向けて、環境負荷の少ない生産・消費体制の構築を進めている。具体的には、①ガソリン車からEV(電気自動車)へのシフト、②鉄鋼製品の生産方式の見直し(高炉から電炉への生産シフト、高炉における水素を活用した製鉄)、③再生可能エネルギーの導入拡大などに注力している。これに関連して注目を集めているのがカーボンプライシングである。カーボンプライシングは、温室効果ガスの排出に伴う社会的コストを「見える化」し、環境負荷の軽減に向けた取り組みを後押しするとともに、環境対策に必要な税源を確保することを可能とする。

日本総研


用語の意味を理解したうえで、実際のニュースや記事を読んでみると、また違った視点から新たな発見が見えてくるのではないでしょうか。

それではまた、次の用語解説でお会いいたしましょう。

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