ショートショート 誰かが

人混みの中を
飛び蹴りしながら突き進んでいる奴が、
もう僕の近くまで来ているので、
僕は蹴られないように必死に人混みを掻き分け、なんとか無事、人混みを抜けた。

あー恐かった。
なんだあの重量級の男は。
あんな奴の飛び蹴りを喰らったら
間違いなくケガをする。
確実に、今日一日が台無しになる。
一気に嫌な人生になる。
しかしなんとか、
それは避けられたので良かった。

でも被害者、結構出てるな。
可哀想に。
若い人からお年寄りまで
容赦なく蹴られている。
みんな痛そうだな。
あーヤダヤダ、恐い恐い。
改めて、蹴られなくて良かった。

しかし、なんなんだよアイツ。
クソ野郎すぎるだろ。
誰か泣かしてくんねぇかな。
俺は無理だから誰かやってくれよ。
俺は基本、何事も無理だから
誰か無理と言わずにやってくれよ。
この世にいる、ありとあらゆる誰かの内の誰かが複数人ででもいいから、アイツを泣かしてくれよ。

俺はホント無理。
あんな奴とは関わりたくない。
これは全うな判断。
だから俺じゃない誰かが
アイツを泣かすべき。
誰か頼むぞホント。
俺は誰かに期待してるんだから、
それを裏切らないでくれ。
いやマジで、
ホントにホント頼むよ、
この世の誰か!

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