ダークエンジェルとシルバーエンジェル

   某超巨大都市圏ー、999区ー。その街ーいや、地球全体の人間の姿はないー。人は全て300年程前に絶滅したのだ。
そんな中ー、とある霧の街で、僕と銀髪の美少女は高台で景色を眺めていた。
限りなく黒に近いグレーがかった無機質な超巨大なビル群ー。
かつて、『ブラックエンジェル』が街を蹂躙闊歩し、支配していたらしいー。彼は数多くのマシンを従え、人間を襲い続けた。彼は、雷レベルの電気を自在に操り、その場で自在に竜巻を起こし風の刃で人や時分に歯向かうマシンを殺し続けてきたー。
  しかし、そんなある日ー。そのブラックエンジェルは、突然、姿を消したらしいー。噂によると、記憶喪失だと言うことだ。周りの者は、僕と彼がそっくりだと凝視するが、性格は真逆である。ブラックエンジェルはサイコパスで、自信家で残忍な性格をしている。僕は、気弱でお人好しだとよく言われる。その、ブラックエンジェルは力を使い果たし、寿命が来ているのでは…?という噂である。     しかし、彼は残忍で凶暴な殺戮マシンだ。どんなに記憶と力が無くなりつつあっても、いつ出くわすか分からないし、誰もが怖い気持ちでいっぱいである。
   そんなある日の事ー。荒廃したグレー一色の世界で、僕と銀髪の美少女は無機質な景色を眺めていた。その美少女とどうやって出会いここへ来たかも分からない。僕はここ10年あまりー殆ど記憶が曖昧である。時々、頭はズキズキし身体は蝋人形のように重く軋んだ感覚がするのだ。
     すると、突然、美少女が突拍子もない事を尋ねてきた。
「星くん、君は、思った事はないかい?この世界は、元々は裏と表が逆になっていて、善と呼ばれる物も悪と呼ばれる物も正数も虚数も皆実は逆だったのさ。」
美少女は、抑揚のない声で淡々と話す。
「何が言いたいんだ?」
「例えば、この、ロボット…」
少女は、高台の下で軋む音を立てながら作業をしているロボットを指さした。
そのロボットは、スクラップにされたロボット達を次々と荷車に乗せて運んでいた。
「君に、彼はどう感じるかな…?」
「どうって…彼は仕事をしてるんじゃないのか?これが彼の役目なんだから…」
「そう。彼は、そうプログラミングされてるんだ。彼は、自らの意思でやっている訳では無い。」
「ああ…だって彼はロボットなんだろ…?人間じゃない。」
「彼がもし、君を襲ったら、君は勝てるかな?」
少女は、不敵な笑みを浮かべた。
「ああ…だって、俺の父さんは…凄いエンジニアだったんだ。俺は父の傍でそれを沢山見てきた。」
「君は…まだ真実を知らない。」
少女は、僕の言葉を遮った。
ふと、少女の半袖の中からカラン…と、部品が落ちる音がした。そして、少女は、口元を緩めた。
「ふっ…。どうやら寿命が来たみたいだ。」少女の声は弱まり、そして、動きが徐々に緩慢になっていく。
「き、君は…ロボットだったのか…?」
僕は、声が裏返った。
「ああ。そして、君もな…」
銀髪の美少女は、瀕死の小鳥のようなか細い声を発する。
「は?何言って…俺には父さんがいるんだ。」
僕は、顔をしかめ少女を凝視した。
「その『父さん』が、君を創ったんだ。」
少女の声は益々ゆっくりになり、次第に低いハスキーボイスになっていった。
「私は、もう時期スクラップになる。そしたら君は危ない…」
少女の首はガクガク揺れ、目は宙を向いている。そして俯き、口から煙を出した。
これが、世間を賑わせた歴代最強のマシンー、救世主『シルバーエンジェル』の成れの果てなのだろうか…?完璧最強に造られ、身体に大分ガタが来ているのだろう…。
彼女は、僕達の街を襲撃者『ダークエンジェル』から、救ってくれた。
彼女は、300年もの間、孤高に闘ってきた。そして、ダークエンジェルと闘い彼の力を奪った。
「さぁ、『ダークエンジェル』…とどめだ。」
銀髪の美少女の両腕は蛇のようにぐにゃぐにゃ延び、そして、僕の身体に巻きついた。
「しかし、驚いたな…こうして黒玉に出会えるなんてな…」
そして、少女は自身の身体がバチバチ電磁波を発した。
僕は、天と地がひっくりがえったかのような感覚に陥った。
「俺が、マシンでしかも『ダークエンジェル』だなんて、有り得ない。こうして自由意志と感情があるんだ。」
「じゃあ、何でこの街に人が一人も居ないんだ?」
少女は放出する電磁波を強めた。
「は?人間はとっくの昔に居なくなった筈だよ…」
僕は、少女の電磁波によるダメージをダイレクトに受けていた。すると、次第に僕の身体の皮膚が溶け、金属の骨格がむき出しになった。
「な、何なんだ…?これは…?」
僕は、打ち上げられた金魚のような顔になった。
まるで、天地が逆転したような感覚に陥った。
そして、僕の表皮が全て溶けだし、赤く点滅した目と金属の骨格が全て露になった。
銀髪の美少女は、目を銀色にカチカチ点滅させた。僕の身体は次第に鉛のように重くなっていった。そして、僕の意識はなくなった。

その五分後の事だったー。
上半身は烏、下半身は人の姿をした漆黒のアンドロイドが、バイクから降りた。

「コイツが、ナンバー55か…?」

「ああ。ナンバー55。ダークエンジェルだ…。そして彼は…人間の少年の姿や性格をプログラミングされてある。心までもな。」「誰が、何の為に…?」
漆黒のアンドロイドは少年を担ぐと、首を傾げた。
「彼の造り主は、モデルとなった少年の父親だよ。彼は元は非力な小さなマシンだった。しかし、彼はマシンの中で初めて心を持っていた。彼の造り主はいざこざで殺害されたされたー。それが悲劇の始まりだよ。星くんは激高し、次々と人を襲うようになった。そして街を蹂躙し、周りから恐れられる悪魔とかしていったー。」
「なるほど。まるで、天使の姿をした悪魔だな…。しかし、何故1人の人間が、2体の違う特性のマシンを造り出したのだろう?お前と、コイツを…」
烏男はそう言うと、少年を担ぎバイクに向かった。
「さあな…。彼は未来にかけたかったのか、旗また気分でそうしたかは定かではないが…」

   すると、急に強い地響きが巻き起こった。往々と聳えたつ摩天楼、超巨大ビル群がガタガタ揺れた。
   烏男と銀髪の美少女は高台の塀にしがみついた。そして、星君、烏男、美少女は、霧の中へ落ちていった。街全体がー世界が大きくぐらついた。その揺れは次第に大きくなっていった。まるで、悪魔が嘲笑っているかのようだ。世紀末の断末魔である。
その揺れは、1週間続いた。
こうして、全てが崩れ街全体のアンドロイドはスクラップと化したのだった。

始まりと終わりは表裏一体…コインの裏と表なのだ。

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