「家族」ってなんですか。
「家族は必要」ですか?
突然ですが、「家族は必要だと思いますか。」と聞かれたら、あなたはどう答えますか。(この質問では「家族」や「必要」の定義は提示していません。)
この問いに、87.7%の人が「家族は必要」と回答している。
ちなみに、国語辞典で調べると「家族」についてはこのように説明されている。
「同じ家に住んで暮らし」「血縁」であること。それが「家族」、むむ??
天邪鬼な私はこんなことを考え始める。「産みの親」と「育ての親」が違う場合はどうなのか。血縁関係は無くても、その親子の結びつきが良好な場合は、「家族」といえるし、「必要」と感じるだろう。では逆に、血縁関係者同士で生活を共にしていても、育児放棄や貧困、家庭内暴力など様々な事情により、その結びつきがいびつだったり絆が育めない関係もある。それでもその当事者は同居相手を「家族」と呼び、その存在を「必要」というだろうか。
疑問はさらに湧く。「夫婦・ふうふ」は「家族」なのか、と。血縁関係にない二人が「結婚」して、家族をつくる。辞書の説明によると「夫婦・ふうふ」は「家族」とは呼ばないのかもしれない。「家族」じゃないとしたら、彼ら・彼女らにとって「必要」なのは「お互い」であって「家族」ではないのかも……。
改めて問われると「家族」には実に複雑な要素が絡み合っていることに気が付く。その形態、結婚がもたらす社会的制度や優遇、暮らしを支える機能の有無、養育、愛情、心のよりどころ、など、抽象・具象の様々な要因が一つ一つの「家族」を形づくる。「家族」にまつわるこれら要因のどこかにひっかかりを感じると、「家族は必要」と無邪気に答えることは難しい。
実際、冒頭の問いについて、「はい・いいえ」の回答理由も伺ったが、どちらの意見にも納得させられる。
答えのない問いを延々と考えることに疲れを覚えない筆者は、プランナー兼編集者としてLIFULLのコンテンツスタジオグループに所属している。
バツイチ・人との共同生活よりも愛犬と共に気ままに1人暮らしをしている40代。結婚して子どもを育てるといった一般的・理想的なライフステージに憧れはあったものの、どうも乗り切れなかった。そんな私は「家族観」において、確実にマイノリティ(少数派)だ。
§ § §
「標準」に良し悪し、なんてない。
コンテンツスタジオグループのプロジェクトには「ホンネのヘヤ」と「年齢の森」という2作品がある。ジェンダーとエイジズム(年齢差別)について、「多様な人の多様な意見を聞き、ただそれを受けとめる」機会をつくり、フィルムとして制作、公開してきた。
ジェンダー問題を扱った「ホンネのヘヤ」では、
といったコメントもいただくなど、見た人には何かしら届けられたように思う。
「男らしさ」「女らしさ」「セクシュアルマイノリティ」「若い」「年老いている。」 これらの言葉がもたらすイメージには、「これが普通・一般的」「標準から外れているとちょっと変」といった偏見や差別的な概念が潜んでおり、気が付かないうちに脳内に形成され、私たちの日々の選択にも影響を与えている。
先ほど長々と考えを巡らせた「家族」にも、実にたくさんの固定観念がある。
「家族」には「あたたかさ」がある。「かけがえのない」「サザエさん」「人情」、とか、なんだかぎゅっと団結していて、みかんとこたつを奪い合って軽くもめて、でも別にひどく怒っているわけでもなく、結局は家族だから、と許し合う。このあたたかな家族イメージから自分の属する家族の形態が外れていると、自分を産んだ家族は選べないからこそ余計に、無力感と虚しさから「負けた」と思うかもしれない。
晩婚化、未婚化、少子化、ジェンダー不平等の是正、テクノロジーの進化といった社会の変化により「家族」や「家族観」は多様になってきている。世の中の変化を感じつつも、私たちはきっと、無意識にこれまで通りの「標準」を望み、「私はどうやら標準じゃないんだわ」と意識した瞬間に、自ら、自分の生き方や可能性を閉じ始めていないだろうか。「標準が良し」という思い込みを取り去った瞬間に、見える景色は変わるかもしれないのに。
一人一人の可能性を、固定観念のような無形のもので閉ざしたくない。
「標準」に価値を置く社会から「一人一人」に価値を置く社会に変えたい。
これは「標準」がもたらす安心感の中に安住したい気持ちと、自分らしい生き方を求める情熱の狭間で右往左往してきた私の、心からの願いを言葉にしたものだが、LIFULLのコーポレートメッセージ「あらゆるLIFEを、FULLに。」の世界観と、根底ではつながっていると思っている。
「家族」が人生に与える影響は大きい。だからこそ、みんなが本当は家族についてどう思っているのか。様々な環境に置かれている「家族」の話を聞きたい。共通する考えがあるのかないのか、家族という、この世に生を受けた私たちにとって切り離すことのできない概念について、みんなで考えたいと思った。
そして、4組の家族にご協力いただき、「うちのはなし」を作った。
……後編に続く。
§ § §
▼コンテンツジオGメンバー(でんか・吉岡さん)の記事はこちらから▼
コンテンツスタジオについては“でんか”が物語ってくれています。
「ホンネノヘヤ」については“吉岡さん”が紐解かれています。
クリエイティブ本部コミュニケーションデザインU コンテンツスタジオG
田中めぐみ
2008年入社以降、企業ブランド戦略立案・実施に従事。現在はオウンドメディア「LIFULL STORIES」のメディア運営、「ホンネのヘヤ」「年齢の森」などLIFULLの企業姿勢を伝える新たなコンテンツ作りに尽力している。犬が好き。(2022年9月末現在)
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