デザイナー就活生に伝えたい、ポートフォリオ選考の裏側。「LIFULL DESIGNの視点」イベントレポート【後編】
こんにちは、新卒デザイナー採用担当の中村です。
先日開催した、ポートフォリオ選考をテーマとしたトークセッション「LIFULL DESIGNの視点」。この記事は、そのイベントレポートの【後編】です。【前編】【中編】の続きとなりますので、まだお読みになっていない方は是非ご覧ください。
イベントの概要
イベントは大きく4部構成となっており、下記のような流れで進みました。本記事では、主に第3部「若手社員のポートフォリオ紹介」についてレポートします。
「WILL→DESIGN!」
若手社員ポートフォリオ紹介2人目は、22卒としてLIFULLに新卒入社した伊藤さん。学生時代に制作したポートフォリオの工夫と、収録されている1作品について話しました。
ポートフォリオについて
伊藤:私がポートフォリオ制作で意識したことは2つあります。
1つ目は、コンセプトを一貫して表現することです。そのために、まず、ポートフォリオに「WILL→DESIGN!」というタイトルを付けました。自分の課題意識や意思である「WILL」を起点とし、最終アウトプットである「DESIGN」に至るまでの過程を見せたいと考え、このようなタイトルにしています。また、目次ページでは、作品タイトルを並べるのではなく、何がしたかったのか(WILL)を大々的に書きました。
伊藤:1作品には、7~8ページと比較的多くのページを割きました。WILLからDESIGNまでの過程を伝えきるために必要なページ数だったと考えています。一方で、ポートフォリオの全体のボリュームを抑えるために作品は4作品に絞り、コンセプトに合う作品のみを収録しました。
ただ、作品数を絞ると、アウトプットの幅や量、表現的なスキルなどを伝え切れないかもしれないという不安もありました。その点は、ポートフォリオサイトに誘導し、他の作品も追加で見ていただけるようにすることでカバーしました。
伊藤:2つ目は、読み物としての心地よさを意識することです。
例えば、作品と作品の間に遊びのページを設け、メリハリをつけることで、ボリューミーなポートフォリオでも読み続けてもらえるように配慮しました。また、作品ごとのページ構成と、このページで説明していることが分かるように、各ページの左上にナビゲーションを設置しました。Webサイトのパンくずリストをイメージしています。
1つ目の「コンセプトを一貫して表現する」と比べると些細な工夫に感じるかもしれませんが、読み手の気持ちを考えることは、デザインをする上でとても大事なことだと考えています。
作品「セクマナ向上委員会」について
伊藤:代表作として「セクマナ向上委員会」を紹介します。私はジェンダーやセクシュアリティといったテーマに課題意識があり、学生時代からそのテーマに関連するプロジェクトや自主制作を行ってきました。その中の1つを、ポートフォリオの1番上に収録しました。
伊藤:お伝えした通り、このポートフォリオのコンセプトは「WILL→DESIGN!」です。そのため、各作品の紹介もまずはWILLから始め、その上でリサーチ、コンセプトメイキング…と続く構成にしています。この作品の場合は「ジェンダーやセクシュアリティの話を1人1人のものにしたい!」というWILLを起点に、ポスターやフリーペーパーのDESIGNに落とし込みました。
伊藤:作品の最後のページには、読者アンケートの結果を記載しました。ポスター掲示やフリーペーパー配布まで実行し、読者から反応を貰えていることは、この作品の1つのアピールポイントだと考えています。意識したことは、肯定的な意見だけではなく、改善に向けた意見も取り上げたことです。アンケート内容をもとにどのようなアップデートを考えているかについては、面接の場で話そうと考えていました。
アートディレクターによる講評
伊藤さんの学生時代のポートフォリオについて、アートディレクターの三宅さんに講評を貰いました。
三宅:1年半前くらいに、選考官としてこのポートフォリオを初めて見たのですが、感動したことを覚えています。「よくできてるな~!」と、思わず声に出してしまいましたね(笑)ポートフォリオにタイトルをつけるのは他に見たことがなく、それが目次や各コンテンツの構成にも一気通貫で反映されていて、すごく記憶に残るポートフォリオに仕上がっています。
伊藤:え!嬉しいです(照)
三宅:コンセプトが明快で、何を実現したいのかという自分の意思からアウトプットまでがきちんと説明ができています。意思と実行したことが分けて明記されているので、理解しやすいですね。ライティングも、短く丁寧な文章にまとめられており、総じて分かりやすいプレゼンテーションになっています。
中村:作品「セクマナ向上委員会」についてはいかがでしょう。
三宅:作品をチェックする際は、LIFULLデザイン部の戦略である「Think, Make & Do.」に則り、発想力・表現力・実行力の3つのポイントでスキルを確認しています。
三宅:まず「発想力」についてですが、自身の身近な課題意識を起点に、リサーチを通じてプロジェクトに取り組む目的を設定できています。アイデアについても、プロジェクトの発足とその活動が、きちんと課題解決に繋がっている点がよいと思います。
続いて「表現力」についてです。セクシュアリティはどう扱うべきか難しいテーマだと思いますが、かわいらしいイラストをメインに用い、課題を身近なものとして感じられるデザインになっています。また、ポスターやフリーペーパー等、複数メディアでのコミュニケーションデザインが考えられていることや、それぞれのメディアにおいて目的をもって制作・編集ができている点が素晴らしいです。
「実行力」については、作って終わりではなく、読者アンケートで感想を回収しブラッシュアップに向けた行動ができている点も非常に良かったです。
ポートフォリオ全体から、意思の強さが感じられます。どの作品も高品質でまとめられていて、「これは合格待ったなし!」という印象。すぐに人事の中村さんに連絡しました(笑)
登壇者によるトークセッション
講評後は、登壇者全員(アートディレクター×若手デザイナー×デザイナー採用担当)でのトークセッションに移りました。
瓜田:僕もすごく勉強になって、途中からメモに夢中でした(笑)
伊藤さんは情報の優先順位付けがうまいので、緩急がついていて読みやすくクオリティが高いですよね。就活生の立場だと「自分の作品をたくさん見せてアピールしたい!」という気持ちになりそうですが、割り切って4作品に絞る判断ができたのはすごいと思います。
伊藤:もちろん迷いはありました。初期段階から「読み手にとって心地よいページ数はどれくらいなんだろう?」と考えていて、ボリュームはある程度抑えたいと思っていました。なので、WILLからDESIGNへの過程を説明しづらい作品や説得力に欠ける作品は、無理に載せるよりもページ数を減らす方がいいかなと考えました。
中村:選考官を務める三宅さんは、ポートフォリオのボリュームについてどう思われますか?
三宅:幅広い分野や領域のデザインが強みの方は、領域ごとに1つの作品を決めて詳しくアピールすると良いかもしれません。逆に、1つの領域に特化したデザインが強みの方は、強みが伝わる推し作品5つくらいに絞ってもよい気がします。いずれにしても品質に自信のある作品に絞り、取捨選択して載せるとよいと思います。
中村:答えは1つじゃなさそうですね。伊藤さんが素晴らしいのは、自分が伝えたいことを伝えるのではなく、「それは本当に相手に伝わるのか」を考えてアウトプットしているところだと思います。読み手の気持ちを考えて制作することが何より大事な気がします。
瓜田:参考にしていたポートフォリオはありますか?
伊藤:「格好良い」と思うポートフォリオはたくさんありましたが、結果的にはどれもあまり参考にしませんでした。例えば、美しいグラフィックがスタイリッシュに並ぶものや、圧倒される作品数のもの。どれもすごいと思うのですが、それを理想形として捉えながら作ると、次第に自分っぽくない微妙なものが出来上がっていく感覚があったんです。あくまで、その人のそのポートフォリオだから「格好良い」と感じていたんだな、と気づきました。他のデザイナーと自分との差分を感じたからこそ、伝えたい自分像を真剣に考えることができました。
三宅:瓜田くんも伊藤さんも、人物像(自身の強みや制作の基本スタンス)が端的に伝わるポートフォリオになっている点は、共通して素晴らしい部分ですね。
さいごに
いかがでしたでしょうか?
LIFULLのポートフォリオ選考について、全3回に分けて解説しました。どれもLIFULLのデザインの考え方に基づいた独自の内容ですが、他社の選考に共通する部分も多いはずです。制作のヒントにしていただけると嬉しいです。
また、私たちのポートフォリオサイト「LIFULL DESIGN」は、LIFULLの強みやデザインへの向き合い方が伝わる内容になっていると思います。CSS Design Awardsをはじめ、複数の外部アワードを受賞しているサイトです。ポートフォリオのまとめ方の参考として、是非ご覧ください。
関連記事 ※本記事は【後編】です
◇ イベントレポート【前編】
◇ イベントレポート【中編】
関連情報
◇ LIFULL 採用サイト
◇ LIFULL DESIGN(ポートフォリオサイト)
◇ CCO(Chief Creative Officer)インタビュー
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中村 美咲(Twitter:@misakinkmr)