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ニューデリーで、空港タクシー詐欺に引っかかりそうになった話。

その日、私たちは台湾からベトナムへ飛び、Hanoiでの5時間の乗り換えを経て、New Delhiに到着したのは夜中の0時ごろだった。翌日の朝10時にはVaranasi行きのフライトが控えていたので、空港で夜を明かすことも考えたが、インド旅行初日なので体力を温存するために近くのホテルを予約しておいた。

その日は全てが順調に進んでいたため、少しだけ嫌な予感がしていた。到着後、インドの金銭感覚がまだ掴めていない私たちは、空港からホテルまでのタクシー料金について換金所の人に尋ねた。

「ここからホテルまでタクシーでいくらくらいですか?」 「500ルピーくらいかな」と彼は答えた。適当に言っているようにも感じたが、今は彼を信じるしかなかった。後から考えれば、Uberで大体の料金を把握しておくのが一番手っ取り早かったのだが。

「空港を出たら、か弱い旅行者を騙そうとする人がたくさんいるから、気を引き締めてね!」とパートナーに言いながら外に出ると、タクシーのおじさんたちが次から次へと声をかけてきた。「ホテル?」「タクシー?」

こういう場面は得意ではない私にとって、どうやってタクシーを選べばいいのか全くわからなかった。ホテルまで400ルピーで連れて行ってくれるという人を見つけ、その人のタクシーに向かった。

そして...、騙された(自分、単純すぎる)。

しばらく彼について歩くと、新しい人を紹介され、「こいつは安心できるやつだ。こいつに着いていけ」と言われた。不思議に思いながら彼のタクシーに乗り込む。彼のタクシーに乗って1分も経たないうちに、まだ空港内で車が止まり、「あっちのタクシーに乗ってくれ」とまた運転手が代わる。最終的に3人目の運転手がホテルまで連れて行ってくれることになった。

彼は非常におしゃべりな人で、「インドははじめて?」「仕事できたの?それとも観光?」「仕事は何してるの?」と立て続けに質問してきた。ホテルに向かう途中、「ここらへんは治安が良くないから、外国人だけで歩いたらダメだよ」と何度も注意を受けた。

しばらくして、Google Mapを確認すると、ホテルに向かう道から外れていることに気づいた。すると突然、運転手がUターンをし、車を止めた。「窓の外を見てみろ」と言われ、外を見ると、街灯のない暗い集落のような場所に、ライフル銃のようなものを持った男が3〜4人立っていた。運転手は「ここは本当に危ない場所なんだ。絶対に外へ出たらダメだよ」と言ってくる。

そして車をのろのろ走らせ、再び止まった。「残念なお知らせがある。君が泊まる予定のホテルはキャンセルされた」と突然言われた。全く訳がわからない状況に困惑しながらも、運転手は「今ここで2500ルピーを出せ。そしたら新しいホテルに連れてってやる」と迫ってきた。

私はホテルの予約が確定しているはずだと反論したが、彼は「ホテルに電話してみろ」と言う。WhatsAppの存在を忘れてやけになり、「スマホのデータしか買ってないから電話できない!」と文句を言うと、彼のスマホで電話番号を入力させられた。電話に出た男に予約番号を伝えると、「申し訳ないが予約はキャンセルされた」と言われた。さらに別の電話番号にもかけたが、同じことを言われた。

運転手は得意げに「俺の言うホテルに行くしかないだろ?」と言ってきたが、降りると周りには銃を持った人がたくさんいるため、罠に違いなかった。仕方なく全財産の500ルピーを支払うと、意外にも知り合いが経営するというホテルまで連れて行ってくれた。最初の2500ルピーの請求は何だったのか。

暗くて細い路地を通り抜け、運転手の言うホテルに到着。見た目は普通のビジネスホテルだった。とりあえず車から降りると、ホテルのスタッフらしき人たちが私たちを迎えてくれた。周りにはそのホテル以外何もなかった。私は何としてでもホテルの中に入りたくなかったが、スタッフも無理やり中に入れることはなかった。

運転手は「いいホテルだ」、「いいスタッフもいる」、「早く中に入れ」と話しかけてくるが、私は納得がいかず、「自分で調べたいの!」とスマホを使って調べ始めた。運転手は「ここではUber呼べないよ」「ホテルはキャンセルされたんだ」と繰り返してきた。

さらに「最近Delhiでは国際会議が開かれてるから、ここらへんのホテルは全て閉鎖された!」と言って、2015年の日付のニュースを見せてきた。訳の分からないヒンディー語に苦戦しながらも、Google Mapでこのホテルを調べると、外国人から「SCAM」の嵐のコメントが。「タクシーの運転手にここに連れてこられたなら詐欺に引っかかっている!」「最悪のホテル。絶対に泊まらないで。」といった内容だった。

私は、騙されたことをなんとかして確かめたかったらしい。ここでやっと私は詐欺に引っかかったことを確信し、脱出を試みる。運転手は「ここではUberは来ない」と言っていたが、実際にはすぐに見つかった。ホテルに到着してから既に40分以上経っており、運転手が痺れを切らしてホテルに入って行ったタイミングで、私たちはダッシュで逃げ出した。

街灯のない細い道路で、呼んだUberを見つけて飛び乗る。意外とすんなり逃げ出せたし、運転手も追いかけては来なかった。一体何だったのだろうか。

予約していたホテルでは、無口なスタッフが何ごともなかったかのように手続きを済ませ、部屋まで案内してくれた。まさか、インドに着いて初日からこんな目に遭うとは。多くの人たちが絡む蜘蛛の巣のような詐欺だったが、これが教訓となり、その後は特に何事もなく過ごせた。金銭的なダメージは少なかったが、心理的なダメージは大きかった出来事だった。

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