ドミニクチェンさんの書籍を通じて「経験に言葉と地図を授けてもらえた」ような感覚になった
はじめに
ドミニクチェンさんの書籍「未来をつくる言葉」ひとまず一度、読み終えました。こういう本です。
私にとってドミニクチェンさんの書籍は、自身が経験・探究してきた対象に対して、こういう先達がこういう言葉で表現しているよ、といった接続をしてくれている感覚があるのです。
そのおかげで、先達の残した言葉・理論と自身の経験の相似と相違を浮かび上がらせることにより、立体的に・解像度高く捉え直すことができることがありがたい。
ので、今回は特にそう感じた箇所について先達の用語を紹介しながら書いていきます。
私の経験に言葉と地図を授けてくれた先達の言葉たち
サピア=ウォーフ仮説
最後に出てきた環世界という言葉は、生物学者フォン・ユクスキュルが提唱した概念で、「それぞれの生物に立ち現れる固有の世界のこと」を意味しています。
このあたりの一連の先達の叡智は、先日とある分野の第一人者の初めての個展に行った時に感じた以下の感覚に繋がっているように思えました。
個展とは言ってみれば、その人の固有の世界(環世界)が様々な表現手段(時には言語、時には写真、時には絵など)で共有できるように現実化されたものだと思えるようになってから、数回、アーティストの個展や作品を体験する機会を経るたびに、それぞれのアーティスト自身がどのように世界を観ているのか?ということに意識が向くようになっていきました。
この箇所からは言語、認知といった方面の簡易地図とも言えるボキャブラリーを得られたなぁと思いました。
プロクロニズム
こちらを読んだ時に、仲間たちと苦心しながら読み終えた「福岡伸一、西田哲学を学ぶ-生命をめぐる思索の旅-」を通して知った西田哲学の重要概念である「逆限定」を思い出しました。その内容をよく表した例文として紹介されていたのが、こちら。
「生物的生命の世界に於いてはいつも主体と環境とが相対立し、主体が環境を形成することは逆に環境から形成せられることである」
言い換えると「(主体は環境を)作る・(主体は環境に)作られる」ということ。巻貝を当てはめてみるとその形は、それまで過ごしてきた「環境」によって作られたということなので、プロクロニズムと通じますよね。
この本で紹介されているだけですと、生物の成長の歴史だけの表記になっていて、環境が生物に何をしたか?というベクトルの話は語られていません。もしそこも語られているとしたら、相似の割合がより大きくなるなぁと思い、原著(とりあえずは該当する和訳本)に当たりたくなりました。
私の個性だと思うのですが、興味関心があって深めている既存テーマとの共通性(相似)を見出せると、その新しいテーマを学ぶ意欲が湧いてくるんですよね。
ホロビオント
生命進化の特質を共生に観る視点、ホロビオントというコンセプトに、今学んでいる今西錦司氏の提唱された「棲み分け理論」「種社会」「生物全体社会」といったコンセプトに通ずるものを感じて興味深かった。もっとも、今西氏のいう「種社会」はカゲロウならカゲロウという種に置いて、鴨川のAというエリアやBというエリアという風に種類別に棲み分ける形で共生していることを発見し、名付けられたものであるというのが現時点での私の理解のため、異なる生物との関係も含めた全体について言及しているマーギュリスとのスコープの範囲が違いますね。氏がこの点について言及していたかは、手元に山脈にようにそびえ立っている今西全集の該当する箇所を読むことで明らかにしたいと思います(笑)
共在感覚
ボンガンド族の人々の感覚、興味深いですよね。
私は自身の経験から、自身の身体的な側面・感情的な側面を対象化・観察し、そこに安心感を感じられている状態のことを「一緒感」という造語で表現しているのですが、この共在感覚と一緒感に通ずるものを感じ、紹介されている本を読みたくなりました。
さいごに
今回は、読み進めていく中ですぐに想起された箇所をピックアップしてみました。他にも興味深い箇所はありますし、読み込んだ上で感想を書いてみたいと思う箇所もあるので、学びを定着させるためにも、後編のような形で記事にしようかなぁ。
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