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書籍「サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略」に学ぶ、なぜサーキュラー・エコノミーが今後ますます重要になっていくのか?〜前提編〜

世界で主流の「一方通行」の経済モデルとは?

2019年に出版された書籍「サーキュラー・エコノミー デジタル時代の成長戦略 」では、サーキュラー(循環)・エコノミーという新しいモデルを具体的な事例と共に紹介しているのですがその対比として「一方通行」の経済モデルについて書かれています。
 
「一方通行」の経済モデルとは、その昔、産業革命期に始まったもので、
今もなお私たちの生活の大部分に密接に関わっています。シンプルに言えば、製品にするための資源を地球から取って、作って、捨てるモデルということです。
 
捨てたものが再利用されることはなく廃棄物がゴミ捨て場に溜まっていく一方であるため、一方通行と言っているのです。
 
このモデルでは、廃棄物は自分の問題ではなく、誰かの問題として放置しているのです。ゴミを普段捨てるだけの立場の自分にとって耳が痛い言葉です。。
  
書籍ではこのように書いています。

現行の経済成長モデルは、天然資源が「ゆりかごから墓場まで」を直線的に流れていくため「一方通行型経済モデル」と呼ばれます(「取って、作って、捨てる」と表現することもあります。)背景には、資源が安価で潤沢であった時代に、企業も国家も製品を作り続け、供給し続けることに集中していたという過去があります。環境への影響は無視され、商品の使用中や使用後に出るゴミの量を最小限に抑えようという意欲も見られません。廃棄物の新たな利用法を考えることなど、生産プロセスに戻して原材料とすることにも全くと言っていいほど無頓着です。
(P40)

現状は、世界中で「一方通行型」経済モデルが主流ですが、世界人口が増加し続けている中で何か対策を講じないと確実に世界中の企業には危機が訪れると書籍には書いています。

10年ごとに7億5000万人増加し続けており、現在の増加率からみた場合、2014年から2030年までに新たに中産階級の仲間入りをする消費者は25億人も増え、天然資源の獲得競争に加わると試算されています。
(P42)

日本は人口がどんどん減少していきますが、インド、ナイジェリア、パキスタン、コンゴ民主共和国、エチオピア、タンザニア連合共和国、インドネシア、エジプト、米国(予測される人口増が多い順)の9カ国が主に人口増加するそうです。
 
企業の危機と同時に個人にも危機が訪れると思ったのでどんな危機があるか、内容を基に考察してみました。(企業の危機は書籍の内容を紹介しています。)

「一方通行」の経済モデルが個人に与える影響とは?

(1)食住に関する危機
これは、安全に暮らせるエリアが減っていくということです。例えば、水不足、大気汚染、災害が起こりやすいエリアが増えることなど。
 
なぜ水が不足してしまうかというと、水質汚染と地下水の枯渇が進んでいるからです。水質汚染の原因になっているのは廃棄物や工業による大気汚染などですね。この要因を生んでいるのはもちろん、一方通行型経済モデルです。

2050年には、世界の人口の40%以上に当たる約40億人が、水不足が深刻な地域(水需要が水の供給量を40%上回る地域)に居住することになります。
(P43)
世界で11億トンもの廃棄物が生じており、このうち25%のみが回収され、生産システムに再投入されています。そのほかの破棄物を再利用する機会は失われ、ゴミ箱に詰められ、埋立地を満杯にしています。
(P45)

(2)命に関する危機
過去も現在も、急激な資源不足はいつも社会不安のきっかけや継続、長期化の要因となってきたそうです。

書籍では、

「1980年から2000年までの間に、化石燃料、金属、鉱物など再生不可能な資源の需要は50%増加しました。」
「2001年から2014年の間では、再生不可能な資源の需要はさらに80%の増加を見せています。」
(p42) 

と書かれており、このように需要が高まる一方で埋蔵量は減少し続けています。
 
そのため、以下のような日常生活が脅かされることがさらに増える可能性があるのです。


「食品価格の高騰は、アラブの春の引き金となり、拡大させた要因の一端となりました。」
「過去20年間においては、ダイヤモンド、木材、ココアなどの天然資源をめぐり、少なくとも18の内戦が勃発しています。」
「シエラレオネのダイヤモンド鉱山をめぐる内戦のような資源紛争は、政府統治が脆弱な地域において和平合意を頓挫させる原因となっています。」
(p51)

(3)生活水準に関する危機
先の2つと同列と言うにはレベルが違いすぎるのですが、従来の区分における先進国と呼ばれる国に住む個人に目を向けたときに、同じ収入で同じ生活水準を維持することができなくなっていくという危機のことです。
 
別の視点で捉えれば、従来の区分における途上国において貧困を克服できない、生活水準が上がらない危機と言えるでしょう。

世界人口の50%に当たる約30億人が1日あたり2.5ドル以下で、50億近くの人が1日あたり10ドル以下で生活しています。
(p22)

こうなってしまう要因は、資源の希少性が高まることで、資源価格が高騰し、製品の価格が高くなるためです。
  
貧しい国はいくら国の開発に繋がるとはいえ、公共事業を行ったり、そのための必要な製品を買うことができない状況になるのです。
 
これは個人的な意見ですが、先進国においての生活水準の危機は、危機ではないように思います。
 
ここでいう資源とは、主に鉱物資源のことであり、工業製品を作るために必要な資源のことですが、この資源で作れるモノ(※)は、例えば日本ではすでに溢れていて、一消費者の視点からみたときにこれ以上新しく作る必要はない、むしろ無駄だと思えるモノが多いからです。

※鉱物資源は、その希少性から大きく3種類に分けられます。
 
(1)レアメタル:産出量が少なかったり、抽出が難しい希少な金属
例)リチウム(リチウム電池など)、チタン(航空機、原子力プラントなど)、ニッケル(ステンレス〜)など
 
(2)レアアース:レアメタルの一部である17元素のことを指す。
例)セリウム(液晶パネルなど)、イットウリウム(テレビの蛍光体など)
 
(3)ベースメタル:埋蔵量・産出量ともに多く、精錬が比較的簡単な金属
例)鉄(建築材料、線路や車輪、車や電化製品)、銅(電線、電化製品、日本の硬貨)、鉛(バッテリー、防音材など)
 
参照サイト
経済産業省資源エネルギー庁「世界の産業を支える鉱物資源について知ろう」より。

細かく調べていないので正確ではありませんが、上記の製品はすでに日本に溢れているどころか、無駄にしてしまっているものも多いため、これらの価格が高くなっても困らないと思いませんか。
 
少なくとも日本におけるこの危機は、シェアリングエコノミーがさらに普及することで回避できるように思いました。(シェアリング型は、サーキュラーエコノミーの1つのモデルとして紹介されています。)
 
むしろ、この危機がシェアエコの普及を後押しするのではないでしょうか。
 
また、途上国に対しても日本などの国の余った資源をシェアする形で
その発展を自然環境に優しい形で支援できたらいいなぁと思います。
 
こちらは現状どんな取り組みがあるのかも気になるので調べてみたいですね。

「一方通行」の経済モデルが企業に与える影響とは?

本書では色々なことを書いていますが、まとめると事業成長が希少な鉱物資源や天然資源に依存している、密接に関わっている企業は対策を打たないと売上が下がり、倒産するよということです。
 
なぜ売上が下がるかというと、
(1)枯渇や価格の上昇・変動により資源の確保ができなくなるから
(2)無責任な企業として消費者に避けられるから

です。
 
そうならないために、早めに対策をしましょう。その対策がサーキュラーエコノミーモデルでビジネスを行うことであり、それは競争優位性にもなりますよ、という提案が本書のメインテーマとなっています。
 
ちなみに、「リサイクルはどうなの?」という声があるかもしれません。
 
リサイクル率が向上することで埋め立てられる廃棄物量は削減するため問題の改善には繋がります。
 
しかし、リサイクルは廃棄物が出ることそのものを減らすことには繋がらないのです。また、企業はリサイクルをする際に新たな資源の消費をする必要もあるそうです。
 
つまり、リサイクルは根本改善には繋がらないため、これだけを推し進めていっても危機を避けることはできないのです。 

従来の経済も出るに大幅な変更がなされないならば、2013年から2025年までに、一般廃棄物は75%以上、産業廃棄物は35%以上増加することが予測されています。
(p45)

サーキュラー・エコノミーが人類にもたらすもの

ここまで既存の一方通行型経済モデルが個人と法人に与える影響について紹介してきました。この書籍はグローバルコンサルティングファームであるアクセンチュアによって書かれたものですが、このような文章があります。

アクセンチュアが各国政府や国際期間、またグローバル企業と協業して、アドバイスを提供してきた経験からいうと、サーキューラー・エコノミーこそが、環境に影響を与えずに世界経済の成長と人類の発展を可能にする唯一のソリューションだと考えています。
(p20)

サーキューラー・エコノミーとは、

市場、顧客、および天然資源の三者の関係性を全く新しい視点で見つめ直す
(p19)
 
化石燃料やリサイクルが困難な金属や鉱物など、環境に悪影響をもたらす希少資源の採取・消費と経済成長との分離
(p22)

というものであり、この価値観に基づくビジネスモデルは
 
企業に対して
・差別化要素の拡大
・サービス提供や資産保有コストの削減
・新たな収益の創出とリスクの軽減

をもたらすそうです。
 
また、個人に対しては
・新品と同じ、品質、性能をもつリサイクル部品を使った製品
・普段購入している製品よりもサスティナビリティの高い代替品
を手に入れやすく
なるそうです。
 
総じて、私の価値観に一致すると感じたためサーキュラー・エコノミーの普及を私も推進していきたいと思いました。具体的な内容についてはまた書きたいと思います。

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