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【藤田一照仏教塾】道元からライフデザインへ(19/09)学習ノート⑤

(ここまでの9月一照塾)
一照さん講話「参究とは何か?」、グループワーク「何があなたをこの塾へ連れてきた?」の模様は、学習ノート①にて。
一照さん講話「Hokusai says」「Instead of A, B.」の模様は、学習ノート②にて。
「学道用心集」を執筆するまでの道元禅師の生い立ち・足取り、「学道用心集」概略についての一照さんの講義の模様は、学習ノート③にて。
一照さん講話「学道用心集(用心第一から第三)」の模様は、学習ノート④をご覧ください。

この学習ノート⑤では、ソマティックワーク「身体のアウェアネス」について振り返っていきます。

1. 「Somatic」とは?

これからソマティックワークの時間を始めるにあたって、「Somatic」とは何か?というお話をしたいと思います。
「身体」を表わす言葉には、「body」と「Soma」という2つがあって、ここには、前半の時間にお話した「研究と参究の違い」と同じようなニュアンスの違いがあります。
一般的には、身体は「body」といいますが、bodyというのは、第三人称的に、向こう側に見られている、物質的な肉体のことです。
これは「観念的に考えられている身体」なので、ほんとうの身体ではないのです。
body(肉)には、spirit(霊)が対置されて「霊肉二元論」となりますが、この二元論の中では、霊のほうが肉より上位に置かれます。

「主なる神は、土の塵で人を形づくり、その鼻に命の息を吹き入れられた。人はこうして生きる者となった。」
(旧約聖書・創世記2章7節)

この二元論では「霊が肉体に命令して、霊の意のままに肉体を動かす」ことが良きこととされます。spiritがないのに、bodyだけで勝手に動いている"ヤバいやつ"が、ゾンビです。
身体のことをbodyと言ってしまうと、どうしてもそういう枠組みにはいってしまうので、これだと仏教的ではない。

そこで、私は身体のことは「Soma」と呼んでいます。
Somaというのはギリシャ語に起源をもつ言葉で、日本語だと「身(み)」と言います。「内側から生きられ、感じられた身体」のことを言います。

これから皆さんと一緒に過ごす時間のことは、以前は「ボディワーク」と言っていましたが、最近は「ソマティックワーク」という表現に統一して言うようにしています。

観念的な身体としてのbodyについて、「退歩のススメ」を共著した光岡英稔さんは、次のように言っています。

股関節や足首が硬いというのは、本人が観念的に構築した、いわば「自己暗示体」でしかないということです。(中略) 観念で構築した体を見ているから「できない」と思っている人は多い。その多くにとっては「自己暗示体」の方がリアルで、観念に拘束された生活様式と概念でできた身体観こそが自分だと思っています。
(「退歩のススメ」藤田一照、光岡英稔(共著)、晶文社刊、p.54~55)

身体に対する私の態度という点で、bodyとSomaとでは、次のような違いがあります。

body:身体は、"操作する対象"。
Soma:身体は、その聲に耳を傾けるべき"先生"。

これから皆さんと一緒に取り組むソマティックワークでは、

「身体の聲に耳を澄ます」

というアプローチでやっていきたいと思います。

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私も、以前は坐禅を「身体を操作する」というアプローチで長い間やってきました。「正しい姿勢、正しい呼吸、正しい心の状態」を身体に押しつけるような方向でやってきたのですが、それでは修行にならない。それは"習禅"であって、坐禅は「身体の聲を聴く」というアプローチで行なうものだということが分かってきました。

2. テキスト「感じる力でからだが変わる」

そのための参考になる本として、今回はこれを選びました。

■ 姿勢は運動である
この本の英語原題は「The new rules of Posture」、"新しい姿勢のルール"というのですが、何が"新しい"のかというと、「運動と姿勢の関係」についての考え方です。
ふつう"姿勢"というと、静的(static)なもので、動きとは切り離して考えられますが、この本の著者、メアリー・ボンドさんは、

私が考える姿勢とは、静止しているときにどうやって身体を支えるかではなく、動きの中でどう身体を運ぶかということです。
(テキストp.23)

と言っています。つまり「姿勢も、運動である」ということです。
私も、「坐禅は運動です」と昔から考えていて、坐禅も動きとして考えないと、身体を固めることになってしまいます。
姿勢をよくするには、「動きの洗練」が大事になってきます。

■ 姿勢は、外へ開かれている
もう一つの大事な考え方があります。
姿勢というと、自分の内側だけで行なわれるイメージがあるのですが、メアリーさんの考え方は「姿勢は、外界との交流の中から生まれてくる」というものです。

姿勢は、周囲の世界と交流する中で作られます。人生で起きる出来事に対し、どう自分を位置付けるか。そうした出来事を身体でどう感じるか。それに関わる人や物事にどう近寄るか、または離れるか。このようなことが姿勢を作り上げていきます。あなたのしている反応が、立ち方、動き方をプログラミングしているのです。
(テキストp.24)

■ 定位と安定化
姿勢には、2つの大事な要素があります。それは「定位」「安定化」です。
「定位」というのは、"地面からのサポートを感じること"と、"身体の周りの空間を認識すること"です。
「安定化」というのは、例えばボールを足で蹴る時に、軸になる側の足が安定していなければ蹴れないように、動作するときには必ず身体のどこかに安定している場所があります。安定している場所がどんどん変化しながら、動作が連続していきます。

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坐禅でいうと、坐骨と両ひざで床からのサポートを受けているのが安定化です。坐禅における定位というのは、耳が周囲の音をとらえていたり、眼で世界を見たり、鼻が匂いで周りを感じていたり、皮膚が風の動きなどを感じていたり…こういったことが、定位です。

東京での前期全4回で、この本をひと通り読んで、ワークもやってみたのですが、坐禅を説明するときのボキャブラリーや「カード」が増えました。

3. アウェアネス、スタビリティ、オリエンテーション、ムーブメント

この本は、ちょうど4つの部に分かれています。第1回の今日は「アウェアネス」、来月の第2回では「スタビリティ」、第3回は「オリエンテーション」、第4回は「ムーブメント」の順番で行ないます。

(1) 身体のアウェアネス
きょう取り組むのは、これです。
自分の身体にどんな感覚が生まれて、変化し、消えて、また生まれているか…ということに「気づいて」いること。
(2) 身体のスタビリティ
身体の安定性。
(3) 身体のオリエンテーション
身体の定位、方向性。これは非常に大事です。
方向性のない姿勢というのはないからです。先ほども言ったように、姿勢は必ず動きの中から生まれてくるので、動きは必ず何らかの方向へ向かっているからです。
(4) 身体のムーブメント
身体の動作。

この4つの要素の組み合わせで、姿勢は成り立っていて、これがすなわち「運動」です。

メアリー・ボンドさんの考え方のベースになっているのが「ロルフィング®」というソマティック・システムです。

この塾にも、ヨガやピラティス、フェルデンクライス・メソッドや、エサレン・ボディワークなどを学んでいる方も参加していらっしゃるようですが、考え方が共通している部分も多いと思います。

いま、「コ2(コツ)」というWebメディアで、ロルファーの扇谷孝太郎さんという方が"柔軟性"についての連載をしていますので、関心ある方は読んでみてください。


4. 6つの姿勢ゾーン

このテキストでは、身体の「6つの姿勢のゾーン」について探究していきます。

「6つの姿勢ゾーン」(テキストp.32)
呼吸筋、腹部、骨盤底:身体を安定させる「コア」を含む構造
手、足、頭:環境の中で定位をうながし、世界との関わりを助ける

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呼吸筋の主なものは「横隔膜」ですが、生命の進化のプロセスの中で、鰓で呼吸していた水棲生物が、陸に上がるとともに肺で呼吸するようになり、両生類から爬虫類→哺乳類→人類へと、短い時間でシフトさせないといけないので、全く新しい組織を一から作っている時間がない。

生命が進化の過程で大きなジャンプをする時には、既に持っている組織を「転用」するかたちで、外界への適応の時間を短くします。
それを哺乳類の場合はどうやったかというと、横隔膜の上下で肺の内圧を上げたり下げたりするだけでは足りないので、例えば重い荷物を担ぎ上げる時に使うような、身体の外側にある疲れやすい筋肉も、呼吸に参加させるようになりました。

既にあるものを別な用途に転用すると、"弱点"みたいなものができてしまいます。常時行われている呼吸を、疲れやすい筋肉に手伝わせることになるので、例えば"過呼吸"といったような、うまくない呼吸のしかたが出てきてしまいます。

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呼吸筋も、腹部(骨盤に覆われている部分)、骨盤底(内臓が漏れ出さないように骨盤の底をふさいでいる膜組織)、これら3つはいずれも身体の中央の胴体にあって、身体の「コア(Core)」になるゾーンです。
一方、手や足や頭は、身体の末端にあって周りの世界へ定位(オリエンテーション)していくゾーンです。
"中央と末端"、身体はこのようにできていると考えると分かりやすいと思います。

この6つのゾーンを、4部に分かれたそれぞれのところでどのように使うのかを学びますので、覚えておいてください。

5. 屍のポーズ(1)

では、ここまで長い時間、頭を使ってきたので、リラックスするために「屍のポーズ」をします。

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(一照さんinstruction)
これは、睡眠の姿勢とそっくりなので、誤解して寝ちゃう人が多いのですけれど、寝ると稽古にならないので、寝ないようにしてください。何が起きているのかを意識がモニターできていないと困るので。

瞑想は、深いくつろぎと明晰な覚醒が共存しているような状態が必要になってきます。私たちの身体が地面に触れる時に、接地面積がいちばん広くなるのが、この仰向け姿勢なので、最もくつろげて、床からのサポートを最も受けられます。

仰向けに寝て、完全にリラックスできているかというとそうでもなくて、身体の様々なところに慢性的な緊張を知らず知らず抱えています。
両脚のひらき具合、両腕と胴体の間も、最もくつろげるちょうど良いところを探ってみてください。

屍のポーズでは、一般に手の平は上に向けます。下へ向けると、脇のあたりに緊張が入ってきます。

もちろん、体重はすべて床に預けますが、「防御の姿勢、心の防衛機制」も床に預けていきます。「"自分"という握りしめ」も手放していきます。

「私」が何もしていなくても、何の努力もしていなくても、起きていることがあります。
心臓が動いている。呼吸が起きている。音も聴こえてきています。
匂いや、味。それから、特に何かを考えようと思っていなくても、いろんな思いやイメージがふと浮かんでくることもあるでしょう。
何かをしようとする前に、「いま何が起きているか」をきちんと知ること。これがアウェアネスです。
「考え事をしている時」と、アウェアネスの状態との違いを知ることが大事です。「ある思考を続けていることを知る」のがアウェアネスです。


6. 屍のポーズ(2):毛穴で呼吸する

(一照さんinstruction)
イメージと呼吸を使って、手放しの度合いを今よりも深めていきます。

まず、「自分の身体全体に細かい穴が無数に開いている」とイメージしてください。小さな毛穴のようなものが、顔面も含めて身体じゅうに無数に開いています。その小さな穴から、空気が出たり入ったりしています。

ゆっくり息を吸うときに、天井側の穴から空気を吸い込んでいるのをイメージして、入ってきた空気が身体のあらゆる部分をふわっと膨らませていきます。
吐くときは、床に向いた毛穴から床に向かって息が出ていくのを想像します。身体から空気が抜けていくので、天井側の皮膚が、床側の皮膚の内側へ向かってくっついていって、身体がぺちゃんこになるのをイメージします。顔も、眼も、手も、足も、腿も、脛も…身体全体にそれが起きています。

イメージというのは、頭の中で描いて、身体に表現していきます。イメージがきちんと身体で表現できると、身体の中に感覚が起きて、呼吸とともにほんとうに皮膚が上下している感じがしてきます。それをちゃんと感じ取ってください。

吐くたびに、身体から力みが解けて床に流れ出して、身体じゅうが透明な空間になるように。


7. 屍のポーズ(3):眼を緩める

(一照さんinstruction)
私たちの普段の生活では、眼をたいへん酷使していることが多いので、眼を重点的に緩めていきます。
自分の頭蓋骨が、大きなどんぶりだと思ってください。その中に水がたまっています。顔を左右に少し動かすと、頭蓋骨の中の水が動いて波打っている。その水の上に、目玉が2個浮かんでいると思ってください。水が左右に動くと、浮かんでいる目玉もそれにつられて左右に揺れます。
眼の力を抜いて、浮力で目玉が表面に浮かんでいます。

今度は、その目玉がだんだん重くなって、ゆっくり沈んていくところをイメージします。水面にあった目玉が、後頭部へ向かってゆっくり沈んでいきます。

眼の緊張というのは、全身に影響しているので、眼を緩めてみると、最初の頃よりは少しリラックスできたかもしれません。


8. 仙腸関節のロッキング

仰向け姿勢のまま、両ひざを立てて、足の裏を床につけます。
脚のバランスでそのかたちが維持できるように、両ひざの楽な位置を探してください。手の平は、今度は下にして床に向けます。
それでは、テキスト(p.91~92)のガイドに従って行なってみましょう。

■ 仙骨のロッキング(上下)

(一照さんinstruction)
目が真っ直ぐ上を向くように、頭の位置を調節します。両脚は平行に、股関節のライン上にあるようにします。
両足で均等に床を押し、同時に脛のてっぺんをつま先の方に送ります。脛が股関節から離れていくような感じです。とても小さく、ゆっくり動かしてください。両足にかける力は、数十グラムほどで十分です。腿が股関節から離れて、長く伸びていく感じがするはずです。
このとき仙骨の頭側は、二つのくぼみの間で転がって床に近づき、尾骨はわずかに床から離れます。
最後に脚の力をゆっくり抜いて、仙骨を最初に位置に戻します。柔らかくなった仙骨を、上から下に広げるようなイメージでやってみましょう。
(テキストp.91~92)

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この動きを、パッと一挙にやろうと思えば簡単なのですが、じわーっとゆっくり行なってください。息を吐きながら、脛を前に送るようにして、足で床をゆっくり押すことで、その力が脚から伝わって、尾骨と仙骨が少し"巻き上がって"きます。腹筋やお尻の筋肉を使わないでくださいね。仙骨をほんの少しだけ上に巻くと、尾骨が上がってきます。
仙骨を元の位置に戻すときは、1ミリずつ置いていくような感じで、息を吐きながら最初の位置へ戻ります。
この動きで、仙骨を上下に揺らしています。これは腹筋運動ではないので、尾骶骨が持ち上がりながら仙骨が床からめくれ上がっていく感覚を味わいながら、無理のないところで止めて、長くなった仙骨を置いていくような感じで床へ戻していきます。
なるべく力を使わず、精密に動いでください。

■ 仙骨のロッキング(左右)

(一照さんinstruction)
右足だけ床に踏み込んで、右の脛をつま先の方に送ります。そうすると、仙骨は左側の仙腸関節とくぼみに向かって転がります。
滑らかな動きでニュートラルの状態に戻り、今度は左足を床に踏み込んで、左の脛をつま先の方向に送り、右側の仙腸関節に向かってロールバック、それからまたニュートラルの状態に戻ります。
(テキストp.92~93)

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左右でやりやすい方とやりにくい方がありましたか?
それほど大きな動きではありませんが、丁寧に行ないます。

9. 横向きの屍のポーズ

それでは、立てている両ひざを、脚の重さを感じながらゆっくりと右の方へ倒してください。上半身は、それに伴ってゆっくりと右側へ回っていきます。

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そこからさらに身体を回していって、うつ伏せになります。
しっかりと床に支えてもらいながら、そのまましばらくうつ伏せで休んでください。身体を預ければ預けるほど、床が支えてくれます。

腕をスライドさせて、肩の下にもってきます。
「腕立て伏せ」のようにして腕を使うと、余計な力を使ってしまうので、「床(畳)を向こう側へ押す、自分の方から遠ざける」つもりで、「畳よ、向こうへ行け!」というつもりで、ゆっくり腕を伸ばします。畳は動かないので、畳みを押した力が反作用となって上半身が持ち上がってきます。
上体が起き上がってきたら、ひざを曲げて四つ這いになってください。そのままお尻をかかとに乗せていって、正座になります。

10. アーティキュレーション

いまの動作を復習しますので、皆さん真ん中に集まってください。
このテキストの大事なコンセプトに「アーティキュレーション」というものがあります。
言語表現の場面でのアーティキュレーションというのは、例えば、誰かがある概念について説明するのを聞いている時に、もっと微妙なニュアンスを伝えてほしくて「Would you articulate little more ?」などと言ったりします。
このテキストでは、こう書いてあります。

会話の中でアーティキュレーションがよいというのは、言葉を通じて自分自身を楽に、分かりやすく表現し、意味あるアイデアを紡ぎだせるということです。
(テキストp.86)

身体のアーティキュレーションを、これと同じニュアンスで言おうとすると...

一連の動きに無駄がなく、優美で、意味のある状態を指します。
(テキストp.86)

先ほどは、皆さんには言葉のガイドだけで行なってもらって、あえて見本は見せませんでしたので、これから私がやってみますので、見ながら説明を聞いてください。

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両足でゆっくり床を押して、脛を身体から遠ざけるようにすると、そこから力が伝わって、仙骨が床から離れていく。
これが、尾骨から仙骨、背骨が一挙にポンと上がってしまうのは「アーティキュレーションがよくない状態」。一つひとつ"分節化"されて滑らかに上がっていくのが、アーティキュレーションがよい状態です。
仙骨を床へ戻す時は、一つひとつゆっくり1ミリずつ置いていくような感じで、最初の状態よりも長くなってぺったりした仙骨を床に置いていきます。これをなるべく余計な筋肉を使わないで、骨盤や仙骨を直接動かすのではなく、足が床を踏み込む最小の力で行ないます。
あまりにも小さく微妙な動きなので、外側から見て動きが見えるようだと、腹筋運動のトレーニングになってしまっています。動きを細かく分節化してくことが重要です。

では、いま私がやったデモンストレーションを見て、説明を聞いた上で、もう一度皆さんでやってみてください。

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余計なところの筋肉を使わないでください。
一気にグッと上げようとすると、アーティキュレーションが悪くなってしまいますので、感覚を細やかにする必要があります。
尾骶骨の先端が床についているのを、まず感じてください。
そこがいきなり動くのではなくて、まず足を床に踏み込んで、踏み込みが一定以上になると、その力が尾骶骨に伝わって、尾骶骨の先端から1ミリずつ上に巻くように上がっていきます。
仙骨が上がるところまで上がったら、足の力を抜いて、元の位置に戻ります。決して早くやらないで、また、たくさんやろうともしないでください。坐禅には、姿勢の微細な調整が必要になってきますので、動きを"微分化する"感覚を養ってください。

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11. 骨盤のアーティキュレーション

骨盤は、左右の腸骨と仙骨、この3つのピースでできていますが、仙骨と腸骨の間にあるのが、仙腸関節です。関節ですから、可動性があるわけです。

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骨盤というのは大事な場所で、下半身のいちばん上、上半身のいちばん下にあって、上半身と下半身をつないでいるのが骨盤です。
では、皆さん立っていただいて、骨盤と股関節をアーティキュレーションよく動かすワークをやってみましょう。上下、前後、左右の3方向に円を描くように動かしていきます。

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(参考:「骨盤のジャイロスコープ」(テキストp.327))
尾骨の先端を魔法のクレヨンだと思って、まわりのスペースに絵を描いてみましょう。単純な円から始めます。クレヨンをゆっくり、なめらかに動かして、時計回りで円を描きます。足首、膝、股関節を緩めましょう。尾骨が小さな円を描く動きは、全体でみると骨盤が円を描く運動になります。骨盤がボール&ソケットの股関節の上に、どんなふうに載っているのかを感じてみてください。お尻で動きをコントロールしないように、骨盤底の後ろの三角を緩めておきましょう。クレヨンを動かすのに握りしめる必要はありません。手、顎、目もリラックスさせましょう。


12. 背骨のアーティキュレーション(カールとアーチ)

仙骨から頭までの背骨(脊椎)には、5つの腰椎、12個の胸椎、7つの頸椎があります。つまり、関節がそれだけあるということです。理想的には、一つひとつの椎骨が関節を挟みながら独立して動くはずのものです。

でも、いきなり背骨といっても"わかんないよ"という人もいると思いますので、2人一組になってもらって、背骨が活性化するような刺激を与えるワークをやってみようと思います。

■ 椎骨のマッサージ
1人はうつ伏せになって寝ます。パートナーの人は、寝ている人の背中の仙骨の上の「腰椎5番」を探してください。そこから両手の指で椎骨を上へ順番に首の付け根のところまで、一つずつ柔らかくつまんで、軽く揺すってあげてください。やってもらっている人は、それに抵抗しないで受け入れます。「もっと強く」とか「強すぎる」とか、フィードバックしてあげてください。
ひと通り上までいったら、手で「チョキ」のかたちをつくって、背骨の両側を上から下へなで下ろしてください。
次に「背骨のアーティキュレーション」のワークをしますから、背骨を触られた感覚を覚えておいてくださいね。

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■ カールとアーチ(テキストp.98)
まず、四つ這いになってリラックスします。力を抜くと、背骨が自然に下へ湾曲します。両腕と両脚で、四つ這いの柱をしっかり作ってください。それでは、テキストのガイドに沿ってやってみましょう。

(一照さんinstruction)
床に両手、両膝をついてください。手の平は脇の真下に、膝は鼠径部のラインの真下に置きます。手の指を広げて、指と指の間にスペースを作り、手を床にしっかりつけます。
脛、足首、足の甲の皮膚で、床を感じてください。尾骨をタックインしないように、二つの坐骨が左右に離れていくのをイメージします。
背骨が、十七個の宝石でできたしなやかなネックレスだと想像してください。宝石を一つずつ動かすようにして、背骨を天井に向かってカールさせていきます。

私が指で触れるところを、順番に一つずつ持ち上げていってくださいね。ほかのところを持ち上げてしまうと、アーティキュレーションがなくなってしまうので、気をつけて。

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このとき、床を押す手の平の力を少しだけ強くします。続けてゆっくり十七まで数えながら、他の椎骨も一つずつ持ち上げていきます。皮膚がしっかりと床に触れている感覚を、手の平、脛、足首、足の指でキープし続けてください。
(テキストp.99)

「グラウンディング」が大事です。背中の力だけで行なわないで、床からもらった力で椎骨を上へ上げていきます。

次に、骨盤を逆方向に傾けると、今度は尾骨が上を向き、仙骨のすぐ上の椎骨は床の方へと沈みます。宝石が床に向かって磁石で引き寄せられるように、背骨の下から上に向かって十七まで数えながら、椎骨を一つずつ下げていきましょう。目線をゆっくりと天井に向けて、首にも逆向きのカーブをつくります。最終的に、頭のてっぺんから尾骨まで、背骨全体が長い下向きのアーチを描きます。
カールとアーチをくり返し、時間をかけて、背骨まわりの縮んでいる筋肉や結合組織をストレッチしましょう。常に安定した呼吸を続けながら動きます。硬く感じる部分があったら、そこに息を送るように呼吸してみましょう。背骨の硬さを自覚している人は、ぜひこのエクササイズを一日二回、数分ずつ続けてみてください。
(テキストp.100)

このように、柔らかく動く背骨が自然に真っ直ぐ立ち上がっているのが、坐禅の良さなのです。ガチガチの背骨が棒みたいに立っているというのは、適応できないし長持ちしないです。

13. 瞑想・坐禅

(一照さんinstruction)
では、残りの時間は皆さんで坐りましょう。
坐り方ですが、大事なのは"体幹の状態"なので、足を組めるか組めないかは、その人の柔軟性次第です。組める人は組んでいただいて構いませんが、まず最初のrequirementとしては、足を組まない状態でも両ひざが床について、地面からのサポートを受けられるようになっていることです。

下半身は、しっかりバランスの取れたgroundingを目指します。その主役は坐骨です。左右の坐骨が広がって、骨盤底をリラックスさせます。
両ひざはそのアシストです。体重の6割は坐骨で、4割は両ひざで支えるようにします。

腕も、内側に巻き込んでしまうと呼吸がしづらくなるので、「息を吸いながら肩甲骨を上に持ち上げておいて、後ろに回して真ん中に寄せてから、ストンと落とす」この動きを3回ほど行ないます。肩がリラックスして、ぶら下がった腕のひじから先だけを動かして、ひざの上に置きます。

軽く眼を閉じて、いま自分の体重がどのように床に落ちているのかを感じて、確認してください。坐骨がメインで、両ひざがそのサポートをして、体重を支えています。

自分の思い込みの真っ直ぐさを、身体に押しつけないようにします。

前にも、横にも、後ろにも傾いていない、いちばんニュートラルなところに、背骨が自然に立ち上がっています。無理に腰を入れたりしないでください。「俺は頑張ってるぞ!」という自己満足は、自分にとっては心地よいかもしれないけれど、俺の頑張りではなく、"身体の自然"で坐っている。

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いちばんBasicな事実は、

Somaが坐っている。
② まったく努力感がなく、聴く気がなくても音が耳に届いている。
③ 私が吸おうとしなくても、身体が呼吸している。

これらは、私の身にどんなことがあろうとも、いつでも起きています。
この3つは、「"いま起きていることに気づいている"身体のアウェアネス」の中に必ずあります。特別なことは何もない、何の変哲もないこれらのことを、いつも新鮮に受け止める。この3つを、コメントすることなく、言葉を差し挟むことなく直接に、生のまま味わいつくします。

このアウェアネスを曇らせてしまうのは、考え事と居眠りです。
アウェアネスを磨こうと思うのなら、考え事や居眠りのほうに行こうとしているのに気づいて、止めて、帰ってきてください。

身体(Soma)が坐っていること、音が聴こえていること、身体が呼吸していることへのアウェアネスに対する抵抗が、私たちの学びのタネになります。アウェアネスを邪魔しようとして、いろいろな出来事が起きてきますが、それが学びの糧になります。

真っ暗な部屋に入って、だんだん暗闇に眼が慣れていくように、身体感覚といっても様々な感覚が起きているし、音もいろいろなバラエティに富んだ音が聴こえていることが分かるように、解像度が上がっていきます。呼吸も、一呼吸ごとに違う表情があることに気づいていきます。
そんなにあせらなくてもいい。それに親しんでいれば、変わっていきます。「特別な体験」を期待したりしません。

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10月までのhomework

① intellectual homework
学道用心集の「用心第四~第六」までを読んで、「もっと分かりたいと思う一文」を選ぶ。
"分かりたい"というのは、読んで言葉の意味は分かるのだけれど、「なんでこういうことを書いてるの?」という疑問が出てくるような「もう少し聞きたい一文」を見つけてきてください。
② somatic homework
「仙骨のアーティキュレーション」3回
「背骨のアーティキュレーション」3回
瞑想(5分以上)
を、毎日行なう。

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【No donation requested, no donation refused. 】 もしお気が向きましたら、サポート頂けるとありがたいです。 「財法二施、功徳無量、檀波羅蜜、具足円満、乃至法界平等利益。」 (托鉢僧がお布施を頂いた時にお唱えする「施財の偈」)