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食雑記

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日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。
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#フード

札幌の果樹庭の葡萄ジャム

今朝は、札幌の果樹庭をおまかせしているパティシエの友人のジャムを食べた。葡萄のジャムは色も味も繊細で美しい。彼女のつくる極上のお菓子みたいなジャム。私もずっと同じ樹の同じ葡萄でジャムをつくってきたけれど、びっくりするくらい違うものができあがるものだなあと思う。果物に砂糖をかけて煮詰めるという、シンプルな料理なのに。 私は、食材をそのまま味わいたいという欲求が常にある。だから、ジャムをつくるときも、食感とか風味とかを、できる限り残したいと思ってつくる。もちろん、砂糖を加え、煮

ぼたん鍋

もう2月も終わるという日、ついにぼたん鍋を食べた。 毎週買い出しに行くJAの直売所の精肉コーナーに、はじめて猪肉を見つけたのは12月だったけど、一度見送ったら、それっきり並ばなくなってしまった。恋人は、北海道の蝦夷鹿料理への対抗するかのように、どうしても私にぼたん鍋(猪鍋)を食べさせたがっていて、ずっと機会を狙っていたのだけど、ようやく手に入れることができたのだ。 まず、鰹と昆布でしっかり出汁を取り、そこに結構濃いめに味噌を溶き入れる。猪肉には、粉山椒を振っておき、最初か

鯖のきずし

1月に3週連続、鯖のきずしをつくった。きずしとは関西の言葉で、関東でいうなら、しめ鯖だ。 毎週買い出しに行く伊丹の公設市場に魚屋があって、まるまるとした鯖が安く売っていた。値札に「きずしできます」と書いてあったので、恋人とふたりで顔を見合わせ、やってみようか、と買ったのが始まりだった。 店長さんに、きずしにチャレンジしようと思って、と言ったら、じゃあ3枚に下ろして、塩までしときます?と言われたので、言われるがままにそうしてもらう。家に帰って、レシピを探す。塩を落として、砂

きつねうどんのしくみ

とにかく甘めの味付けの料理が苦手だ。母は料理に砂糖をあまり使わなかったから、甘味の薄い家庭で育ったというのもあるし、実家を出たあとに出会って夢中になったイタリア料理も砂糖を使わないので、単純に好みということもあるのかもしれない。 先日、恋人が昼食にきつねうどんをつくってくれた。人生で数えるほどしか食べたことがない料理。もっと甘くしてもよかったかな、と言っていたお揚げさんは、それでも私には甘かった。ただ、関西の食文化の典型みたいなものを苦手と思ってしまうと、ただただ苦手なもの

神戸のパン

先日、神戸までドライブした。目的地はポートアイランドのIKEAだったのだけど、いろいろ寄り道していたら、お昼の時間になってしまった。 神戸は全国でも有数のパン屋の多い街だ。ちょうど岡本というパン屋が多く集まる辺りにいたので、「パン屋をリサーチして食べくらべしよう」と、恋人が言い出す。要は、時間がないから、パンを買って車の中で食べながら行こう、ということなのだけど「食べくらべ」という言葉には、間に合わせになってしまいそうな買い食いを、特別な楽しみに変える魔法がある。彼は本当に

おせちピクニックと本物の凧揚げ

新年早々、ピクニックに出かけた。元旦に引き続き、晴れ上がった2日、「おせち詰めて、外で食べようか」と、恋人が言い出したのだ。 考えてみれば、おせちは、家の中で重箱に詰めたお弁当を食べるようなもの。蓋をして風呂敷で包めば、すぐにでかけられる。まさに、ピクニックのためのような料理だ。 元旦は、食事のたびに重箱と器を組み合わせて盛りつけていたので、ピクニックのために、あらためて重箱におせちを詰める。伊達巻は卵焼き、チーズ入り蒲鉾は、チーズちくわ、鶏団子はミートボール。お弁当のお

ご近所おせち交換

今年は、ずいぶん久しぶりに実家の家族以外と過ごすお正月になった。一緒に暮らしたら、おせちをつくりたいね、と恋人が言っていて、楽しみと思う反面、相当大変だぞと思っていたら、意外な展開になった。彼が、ご近所の友人たちとおせちを交換しようと言い出したのだ。4家族が、それぞれ2品ずつ担当して他家族の分もつくって持ち寄るルール。言い出しっぺの私たちは、彼の母上からのことづてもあって、4品。栗きんとん、柿なます、鶏団子、鰤の照り焼き。大晦日の今日、14時に集まって交換することになった。

朝びき丸鶏のローストと世界のクリスマス

関西で驚くことは、朝びき鶏を扱う鶏肉屋が普通にあること。東京にいた頃は、ここぞという時には、築地にある老舗に行って買っていたけど、札幌ではそんなお店には出会わなかった。でも、こっちだと駅ビルの専門店街に入っている。 鶏肉はなにより新鮮さが一番だから「朝びき鶏が普通に買えるなんて!」と私が興奮したのをきっかけに、去年から、クリスマスには毎年丸鶏を焼こう、ということになった。とはいえ、今年はクリスマスイブに恋人がかかわるイベントがあるのに加えて、クリスマスのすぐあとが彼の誕生日

大阪此花と「お好み」焼き

先日、恋人に誘われて、大阪の此花区を自転車でめぐる街歩きに参加した。ライターのスズキナオさんが、妹尾豊孝さんの写真集 「大阪環状線 海まわり」に写っている場所を、写真と見比べながらめぐりたい、とTwitterでつぶやいたことがきっかけで、実現することになったらしい。 そもそも大阪自体、よく知らない中での、此花。行きの電車でグーグルマップとウィキペディアで予習をする。伝法という古からの漁港があること、樽廻船発祥の地であるが、その後、新しい川が掘られたことで、港湾としての地位は

朝食のおしゃべりと自由なサラダ

朝食は、目玉焼き、ベーコンとサラダ、トーストとコーヒー。そこに、小さいグラスのジュースとヨーグルトをつけたり、つかなかったり。あとは、恋人のお母さんと私がつくった自家製ジャムを並べる。もともとは恋人の定番の朝食だったけど、北海道と関西でお互い滞在しあううちに、いつしか私も同じものを食べるようになった。 役割分担は、どちらか早くキッチンに入ったほうが、コーヒーをセット、パンと目玉焼き、ベーコンは、彼が焼いて、私がサラダをつくる。彼はレタスのサラダが定番だったみたいだけど、私は

はじめての美容室と海鮮チヂミ

引っ越しでなにより大変なのは、実は、新しい美容師さんを見つけることなんじゃないかと思う。私は15年以上前から、エフィラージュというそれほどメジャーではないカット技法を使う人に切ってもらっていて、本当に気に入っていたので、一生この人に切ってもらおうと思っていたのだけど、さすがに髪を切るために東京に通うのも難しくなって、この1年は、札幌の新しい美容師さんに何度か切ってもらっていた。でも、やっぱりしっくりこない。髪型というのは、取り替えが効かないから、気にいらないとQOLに大きく影

新しい生活とブリの塩焼き

恋人と一緒に暮らすために、札幌から関西に引っ越した。ふたりでいるには、私が恋人の家に居を移すのが、生活の面から考えるとベストなのは納得しているので、引っ越し自体に後悔はない。とはいえ、この年齢での離れた土地への引っ越しは心身に堪えるのも確か。しかも、生まれ育った土地からだから、なおさら。 新しい生活での最初の夕食は、ブリの塩焼き。しばらく食べてなかったからお魚を食べよう、せっかくだから関西らしいお魚にしよう、とブリを選んで、でも、甘辛味はあんまり得意じゃないから、と塩焼きに

茄子とバジルと豚肉の焼きそば

朝ごはんのあとに、あ、昼には、茄子と大量のバジルを炒めたい、そして、それを肉入りの焼きそばにしたい、と思ってしまったら、クーラーなしで、気温が30度超えても、それをつくる意外に選択肢はない。豚バラ塊は、ちょっとギリギリな感じだったので、ゆで豚一択。豚を茹で、麺を茹で、茄子を焼き、バジルと炒め、麺とあえて。炎で部屋はどんどん暑くなっていく。味付けはナンプラーのみで尖らせて。汗だくで食べる、どこの国の料理かわからない、アジア風味な焼きそばは、身体に染み渡る。夏が終わっていく。