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母の好きだったキムチ

母はキムチが好きだ。

高齢になり、耳も遠くなり、足腰も弱った母は、大阪に暮らしている。
キムチを買いに天満や鶴橋に行くことも、コロナ禍の中、難しいだろうと思い、昔なら慣れ親しんだ福山の懐かしいキムチを贈ってみた。

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母「あら、キムチ贈ってくれたのね。ありがとう」

早速、元気そうな声で電話がかかってきた。

母「あなた、福山に行ったの?」

僕「墓参りに先週行ってきたよ」

母「キムチは曙町って書いてあるけど、美味しそうね。福山に行ってきたの?」

僕「いや、だから先週・・・」

母「曙町のキムチ屋さんなの?」

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・・・話が通じない。もしかして・・・。不安になり、同居している甥に電話を変わって事情を聴くと、「耳がかなり悪くて聞こえてなくて、人の話が理解できないから、ぐるぐる同じことを言う」とのこと。

コロナが拡大してから、もう1年半も会いに行けてない。

その間、母の痴呆が始まったのか、耳がさらに遠くなっただけなのか、判断はつかないけれど、ご飯に載せて食べたキムチが、少し悲しい味になった気がした。

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母に贈ったキムチは、福山市曙町にある「キムチ美人本舗」のポギ・キムチでした。



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