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グループ展[開放空間]を振り返る②

まずは自分の作品について。

作品の説明をしない主義の作家も多く見かけるが、私は自分が何をしているのか、何を伝えたいのか、一定の言語化をすることも含めて自分の作品だと(現時点では)考えているので、本展の出品作品についてここで解説する。

ー書・絵画作品[すべてを信じろ すべてを疑え]

書:前田 遥水 / 背景:Life Garden(2022年)
素材:布地、スプレー、墨液(書芸呉竹 純黒、帛書墨)
サイズ:250 cm x 370 cm

作品と両作者

[作品コンセプト]
真実の形は一定ではなく、常に情報は氾濫している。他者の思惑に左右されることなく、自分にとっての真実を見極める目を持つためにはどうしたらいいか。自分を取り巻く外界のすべての事象・現象に耳目を開き、また同時に自分の内面と深く向き合い、自分だけの感性と感覚を磨くことにより、光(世界の良い面=自分にとっての真理)を見出す、という信念を絵画と書道の融合により表した作品。

コロナ禍のあいだ、小さな箱の中に閉じ込められ、しわしわになっていた布地(自分)が、再び世界に解き放たれる。

トランクケースから空間に飛び出した布のインスタレーションで、マッサージ体験のブースを構成した

空間一面に広がった布地には、暗い経験や記憶(としての皺紋様)が残されたが、同時に次の時代に向かっていく希望的なエネルギーを抱いている。

書を書く前の背景画

書家 前田遥水氏により作品に書かれた文字は「花鳥風月」「森羅万象」という世界を表す言葉と、自らの内面と向き合う「省」の古代文字(目の形)、「虚・実」「色・空」は世界や自分との向き合い方を示す言葉として選んだ。そしてその先に光を見出す、という願いを込め「光」の古代文字(灯火を頭上に掲げる人の形)を配した。

「省」を表す古代文字
「光」の古代文字と「花鳥風月」

今回の展示会全体を通じての主題である「すべてを疑えすべてを信じろ」という言葉を中心に置き、鑑賞者へのメッセージとして以下の字句を書した。

四季折々の空気の匂い
刻々と遷る空の色
夜の向こうを流れる微かな車の音
嵐の前に吹く風
自分の五感を通じてかんじとり
この心が動いた実感だけが
二つと同じ形のない私を作っていく

作品全景


この作品が、昼間の光の中で風に揺らぐ姿も、夜になり文字がはっきりと浮かび上がる姿も、想定以上の仕上がりだった。また、重なった2枚の薄布が生み出すモアレにより作品の立体感・奥行き感が演出され、「書」という非常に二次元的な美術が、空間的な表現となった点にも、とても満足している。
私ひとりの力では作り得ない作品を、書家の前田先生との共作により生み出すことができ、本当に感謝している。

グループ展[開放空間]を振り返る③につづく



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