高齢期リハビリのココロエ22 高齢者リハビリは税金のむだづかい?
よくTwitterで見かけるのが、『高齢者に公金からリハビリ費用を出すのはムダだ』という意見です。ある意味、非常に鋭いご指摘だと思います。さらに、リハビリを受ける方は『マッサージ』を希望し、セラピスト側も希望通りにしてしまう、そんなものは税金の無駄遣いだ!と。
これ否定できません。要介護高齢者は週1〜2回、1回につき20分〜60分程度の機能訓練や動作練習をしたとて著しい機能回復など望めないことが多く…、その中にマッサージが入るとなんのためにしているのか、さっぱりわからなくなります。それでもそれを行っているセラピストに『機能維持のためです』と言われると、「そ、そうかな。」と苦笑いする他ありません。
と、いったように高齢者リハビリは確かに『税金の無駄遣い』の側面もあると考えられます。全部が全部ではないと思いますが。
ここで『2:7:1の法則』の紹介です。これはわたしが介護保険リハビリサービス対象者を3タイプに乱暴に分けたものです。わたしは老健勤務ですので、それを前提に聞いていただければ幸いです。
『2』は『機能回復しやすいタイプ』
→以下『2割さん』
『7』は『生活中で心身の維持向上タイプ』
→以下『7割さん』
『1』は『衰弱していくタイプ』です。
→以下『1割さん』
詳しく述べますと『2割さん』は著しい機能回復が期待できる方『7割さん』は著しい機能回復は望めないが、活動と休息のバランスがとれれば楽しく健康に老化とうまく付き合っていける方、『1割さん』は医療的措置が必要で、かつうまく生活が送れず、楽しさも感じず老化スピードの速い方です。数字は全体を10とした割合です。
つまり介護保険サービスの高齢者リハビリでは『2割さん』が著明な機能回復が期待できるため機能訓練を重点的に行い『7割さん』へは老化した身体で充実した生活を送る(いわゆる生活の質をあげ、本人の生活満足度をあげる)ことがポイントとなります。 こんなふうに分けると、高齢者リハビリでやるべきことが明確になるかな、と考えられます。あくまでわたしが勝手に経験上、考えていることですのであしからず。
話を戻します。理学療法士は『機能回復・機能訓練・動作練習』を専門にしています。そのため『2割さん』に対してのアプローチでその力を発揮できます。実は作業療法士も『機能訓練・動作練習』が得意な方がたくさんおられるためこちらへアプローチされます。また『2割さん』に対するリハビリサービスも充実しています、たとえばマシントレーニングができるデイサービスやマンツーマントレーニングができる事業所さんなどです。しかし『2割さん』は全体の20%に過ぎません。
そして課題なのが『7割さん』へのアプローチです。これは作業療法士の守備範囲なのですが、この技術をもっている作業療法士は意外に少なく、さらに生活期の理学療法士も『7割さん』へ参入されてきていますがなかなか苦戦されている印象です。
一方『7割さん』に対して週1〜2回の僅かな時間、機能訓練したとて効果は少ないわけですが、それを繰り返し行っているセラピストも多いわけです。いわゆるセラピストとご利用者のミスマッチが起こっている状態ですね。
どうやって生活へアプローチするのか、これから発展が望まれる分野だと考えられます。ここが発展すれば、『高齢者リハビリは税金の無駄遣い』という声が少なくなるかもしれません。そして認知作業療法や人間作業モデルなどそれらを前進させる作業療法理論はあります。もっと広まるといいな、そんなふうに思います。
最近、デイケアの応援に行った折、ご利用者に『家でどんなふうにお過ごしですか?』と尋ねたところ、『家ではゴロゴロしてる』『寝てる』という回答をたくさんいただきました。入所の方に比べると介護度も低く、できることがたくさんありそうなのにもったいない!と思いました。悲しいかな、やっぱり自宅では安全性を重視され(周囲にとって)余計な活動はさせない環境になっているのかな、あるいは要介護者は何もできないとラベリングされているのかな、と思わざるを得なかったです。
結局、機能回復に期待をして理想の状態にまでは戻らず、機能訓練をし続ける方を量産し続けているのが現状であれば税金の無駄遣いといわれても仕方がないのかな…。7割さんへのアプローチがセラピストにとってもご利用者にとってもポイントだと思われます。
みなさんはどう思われますか?
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