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高齢期リハビリのココロエ36 痛みは自分でコントロールするのだ

【あらすじ】
2年4か月前に直腸がん診断され、治療により一旦、『がん』が消失したかに思えましたが、約4か月前に『がん局所再発』しました。手術ができず、抗がん剤治療で手をこまねいてます。作業療法士として高齢者リハビリは18年です。

【本題】
今日のテーマは高齢者の『慢性痛』です。わたしの『がん』の感じ方と絡めてお話いたしますね。
『慢性痛』とは原因がなく一ヶ月以上続く痛みです。肩や腰、膝が多いですね。傷病時は『急性痛』といい、傷病によるなんらか身体的ダメージや炎症時に起こります。『慢性痛』はそれらの治癒後や病態が落ち着いた後も継続する痛みといえるでしょう。
『慢性痛』の代表的治療は3つ、薬物療法、運動療法、認知行動療法(心理療法)があります。治療と特性を一つ一つ説明いたします。

『薬物療法』はどうでしょうか。痛みには抗炎症作用の湿布薬が出されますが、患部に炎症が起こっていないことは多々あります。これは湿布薬を貼ることにより安心感から痛みの軽減効果はあると思いますが…、とりあえず湿布の処方はいただけません。あとはロキソニンなどの鎮痛薬が処方されますが根本的な解決には至らないことは多いです。それでも足繁く病院に通う高齢者はたくさんおられます。

次に運動療法です。慢性痛は原因が特定できない、病態が落ち着いている際の痛みでした。そのため、関節を保護するために周囲の筋肉をつけることが推奨されています。または関節組織を柔軟にすることなども高齢者リハビリの現場では行われています。わたしももれなく運動療法を行ったことはありますが、あまり効果は芳しくありませんでした。『筋力がついたから痛みが少なくなりました!』と実感できた方は10人に1人くらいでしょうか。

最後に『認知行動療法(心理療法)』です。これは効果を感じます。10人いれば半数は痛みの軽減がります。何をするのか、と言いますと『考え方』や『行動』を変えるわけです。人は『何かに集中しているとき』や『楽しいとき』は痛みが軽減するといわれています。みなさんも経験があると思います。なぜか、それは『それらの活動中は神経伝達レベルで痛みの信号が少なくなる』からです。これを『下行性疼痛抑制』といいます。人は楽しいことをすると勝手に脳が痛みを抑えてくれるんですね。
反対にストレスや退屈は痛みを強めます。退屈=身体を動かないことで、筋肉や関節が固くなり痛みが発生する。またストレスによりコルチゾールという物質が痛みの感受性を高めます。さらに自律神経が過剰にはたらき、筋肉が固くなり痛みが発生します。
ここまで聞くと、要介護高齢者や自宅で役割や趣味がなくなった高齢者は『慢性痛』が起こりやすいといえるでしょう。基本、退屈ですから。そして、病院に行くも根本的解決には至らない。
ではどうすればいいか、まず『慢性痛』がいつ起こるのか、把握しましょう。1日中、同じ痛みがあるわけではありません。◯◯をしてるときは痛みを感じていない瞬間は必ずあるはずです。まずは痛みの波を正確に知ること。次にどれくらいの活動ができるか試していきましょう。『洗い物はできる、でも洗濯はちょっと負担があり、痛みも強くなる』など痛みが増強しない範囲で行動します。そして活動する生活をつくりましょう。痛みを感じない瞬間が増えてくるはずです。『あれ?痛くないことが多くなった!』『あれならできるかもしれない』など行動することで考え方も変わります。そしてさらなる行動が生まれます。これだけでも痛みを軽減、消失した方は何人もみてきました。

一方、わたしの『がん』ですが、今はない『肛門』付近にその塊が鎮座しているのを感じます。これがまた『不快』『重い』『痛い』と感じることもあれば、『あれ?小さくなった?』『なんも感じない!』こともあります。そのたびに「薬が効いたのかも!」「あかん、がんが大きくなってるかも!」と思います。先程の話でも出ましたが、『楽しいこと』『集中できること』があれば感じにくい側面があります。しかも免疫力も上がるため、一石二鳥です。
どうやら痛みは自分の行動や考え方である程度はコントロールできるようです。高齢者リハビリもがん闘病も主体は自分、他者に任せて受け身ではいけないですね。


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