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都会の音 ローズ・ピアノが街を色付ける

東京。

夜明けのビル群の光、アスファルトの下の暗渠、路地を駆け抜ける少年、古い町工場の蛍光灯、突然現れる神社、築30年のマンションの古いサッシ越しに見る無機質なコンクリートの塊と、朝日なのか夕日なのか分からないぼんやりとした光、実態があるようで無い、無数の顔を持つ都会。

新しいようで古い、全貌が暴けないから面白い都会に合う音は何だろうと時折考えるのですが、一つ想っているのが「ローズ・ピアノ」の音。バラのピアノではなく、Rhodes Pianoと綴る電子ピアノ。残響音が特徴で、暖かいのに、どこか淋しげ。暗闇の中に、一本の光の筋が見えるような音がします。その光の筋は、音の減衰と一緒にうっすら消えていくのです。コンクリートの塊の中で、常に誰かと繋がることを望む、都会に生きる人にまさに合致する音だといつも想っています。

「ローズ・ピアノ? 何だそれ?」この音です。

荒井由実「中央フリーウェイ」
Ino Hidefumi「Love Theme From Spartacus」
Billy Joel「Just the Way You Are」

元々音楽療法目的で作られたピアノというだけあって、聴くと包み込まれるような感覚を覚えます。

このローズ・ピアノに加えて、ヒップホップもいわゆる都会のイメージそのものだと思います。ローズ・ピアノのような電子ピアノのジャズをベースとしたバックトラックにラップを載せた、最強のコンビネーションの楽曲を聴くと、ビル群の光のループの中をどこまでもドライブするかのような錯覚に襲われます。

好きなアルバムは数えきれないほどありますが、最近では以下のアルバムが都会を体現するような世界観を作り出しています。BGMとして流しても耳障りよく、聴き込むと奥深い最高にかっこいい傑作です。以下に紹介するトラックは、まさに都会の音。名曲です。

Shing02 & Cradle Orchestra「Twice as Nice」

ローズ・ピアノっぽさは抜けますが、次の曲も都会の夜のイメージが浮かぶ名曲です。ピアノ+ジャズ+ラップ、この組み合わせは心地良いのにどこか物憂げで、都会の音としては鉄板だと思います。

Showmore「circus」

最後に。

ローズ・ピアノに近い音をベースとした曲と言えばこれは外せません。初めて聴いたときは本当に衝撃でした。暗闇の真ん中から光がじわじわと迫りくるような、異次元のサウンドです。コンクリート群に色を与えるこういう音がある限り、都会の暮らしは決して悪いものではありません。

Radiohead「Everything in Its Right Place」


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