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美しき地下音楽史のスナップショット〜ちょっとの雨ならがまん

1984年公開の安田潤司監督「ちょっとの雨ならがまん」を観てきました。1994年の上映停止後、再公開は不可能と言われてきた曰く付きの映画ですが、最近各地のミニシアターで上映されていることを知り横浜まで観に行ってきました。1980年代の日本のアンダーグラウンドな音楽シーンを捉えた貴重な映像集で、特にその中でも過激なハードコアパンクバンドのライブ映像やインタビューで構成されています。

1981年に結成され今なお現役で不動の人気と影響力を誇るGauze、後に芥川賞作家となる町田康(当時は町田町蔵)の若い頃のとにかくかっこいい出で立ちや言動に感動を覚えます。一部では伝説化している横浜寿町でのフリーライブの映像も初めて見ることができました。また残念ながら故人となってしまったミュージシャンのインタビューも貴重です。

パンクという初期衝動そのままの、ある意味短命であることが自明の世界観を美しく切り取ったこの映画は、日本の音楽史の重要な資料です。多くのバンドは解散をしたり、形を変えたりしましたが、Gauzeのように当時のままに活動を続けているバンドもいます。その原点がどこにあったのか、公開から35年が経った今だから見えてくるものもあるように感じています。今の時代、残念ながら、ここまで暴力的で、粗野で、でも一途な音楽好きで構成される音楽シーンが作られることも、見ることもできないでしょう。

少し話は逸れますがGauzeは、今でも当時と同じ1200円の入場料でライブ(消毒gig)を続け、毎回超満員の中、年齢を全く感じさせない激しい演奏を繰り広げています。メディアへの露出が無いバンドなので、この映画の中でインタビューに答えている姿は非常にレアで、良い意味で人間臭いところを垣間見ることができ感激しました。

日本のハードコアパンクは、世界にもマニアが多く、僕自身も高クオリティなバンドが多いと実感しています。ライブや演奏の迫力もさることながら、歌詞が良いバンドが多いです。潔さが胸に響くのです。

敵を作れ どんどん作れ 敵を作って 負けない自分を作れ 小さな所で 偽らず 諦めず 怒りを 涙を溜めて 生きろ (Pressing on / by Gauze)

僕は横浜は黄金町のジャック&ベティにこの映画を観に行きました。名画座の雰囲気を残す佇まいもまたこの映画を引き立ててくれていました。本作品は1/18まで上映されています。VHS等は存在しないため、映画館でのみ作品を見ることができます。


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