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Libya Updates #23: September 2020 Week 2


こんにちは🕊
リビアをめぐる1週間の動きをまとめました。

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リビアのこれまで
40年以上続いたカダフィによる独裁体制が2011年に崩壊。新たな政府樹立を巡り、衝突が続いてきた。
現在は首都トリポリを拠点とし、国連の仲介で2016年に樹立した国民合意政府 (GNA)と、東部の都市トブルクを拠点とする政府 (HoR) が分裂している構図だ。
HoRが支持するハフタル将軍率いる勢力が2019年4月、トリポリへの侵攻を開始した。GNA側の民兵組織らが応戦し、武力衝突に発展。GNAにはトルコ、ハフタル勢力にはUAEやロシアなどがつき軍事支援などを行ってきた。
6月はじめにGNA勢力がトリポリを奪還し、ハフタル勢力は同地域より撤退。停戦へ向けた協議が進んでいるものの、現地での戦闘が続いてきた。

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1. 国内の動き

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GNA政府は2日、首都トリポリ南部のタルフーナで集団墓地を発見したことを発表した。
現地メディアによると複数の遺体が見つかったが、全体の数は分かっていない。GNA政府は「ハフタル勢力側の民兵組織が関連している」と見ているという。

タルフーナはハフタル勢力が6月にトリポリより撤退するまでGNAとの間の主戦場だった。同月にも墓地から女性と子ども含む200名以上の遺体が見つかっている。

タルフーナの位置。


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ハフタル勢力がシルトで戦闘を続けている模様だ。
GNA軍によると同勢力は5日、軍に対してグラッド砲10発を砲撃したという。

GNA政府は8月21日に停戦を宣言。シルトとアル・ジュフラの非武装化を要請するとともに、来年3月に議会と大統領の選挙を行うことを呼びかけた。ハフタル勢力を支援する東部トブルク政府 HoR のアグイラ・サレ氏がこれに合意。
GNA軍は「ハフタル勢力がまたしても停戦交渉を破棄した」としているが、
ハフタル側はGNAが「宣言をアピールに利用している」として宣言を拒否してきた。

リビアに詳しい専門家は、停戦を宣言しているGNA側勢力を挑発することが目的と見ている。


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GNA政府は3日、ファティ・バガーシャー内務大臣の復帰を伝えた。

シラージュ首相は8月28日、バガーシャー内務大臣の解任を発表。前の週に発生した市民の抗議運動への大臣の対応について「捜査を行う」とした。

リビア情勢に詳しい専門家らは、首相と内務大臣の間に緊張が高まっていることを指摘してきた。
内務大臣はトリポリ東部にあり、リビア第3の都市であるミスラタの出身。同地域の武装勢力はハフタル勢力をトリポリから掃討するにあたり大きな役割を果たしており、内務大臣の解任はGNAとミスラタの勢力との関係に影響すると見られていた


2. 国際社会の動き

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モロッコがリビアの対立する勢力を呼び会議を開催したという。アラビア語メディアArabi21が6日に報じた。
外交筋によると、GNA政府とHoR政府の代表者がモロッコのラバトで同日に集ったという。だがリビア側からは事実を認める声は上がっていない。

モロッコのスキラトでは2015年末、国連の仲介により対立する勢力の権力分有を行う形でGNA政府が樹立している。


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EUは10日、リビア北東部にあるデルナから150kmの国際水域を通行中のUAEの商船を、国連によるリビアに対する武器禁輸措置に違反していた可能性があるとして、拿捕したことを発表した。

商船はUAEのシャルジャを出てベンガジに向かっていたと見られており、現在は調査を行うためEU域内の港に送られたという。
EUは今年4月、リビアへの武器禁を徹底するためイリニ作戦 (Operation Irini) を開始している。


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ラブロフ外務大臣は7日、リビアの即時停戦を呼びかけるとともに、ロシアが対話による解決を求めていることを強調した。


国連はロシアがハフタル勢力へ軍用運送機などを提供していることを指摘している。リビアでは2011年以降、武器禁輸が適応されており、同措置を破る格好だ。

ロシアのほか、同じくハフタル勢力につくUAEやヨルダン、GNA政府を支援するトルコ、カタールなどが武器禁輸を守っていないことを国連は指摘している。


3. 新型コロナウイルス

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リビアでは10日(現地時間)時点で、累計20,462名の感染者が確認されいている。1週間の新規感染者数は5,306名。1日に約750名以上の新規感染者が確認されている計算となる。
累計死者数は324名で、1週間で74名の増加


感染者数は5月まで数十人規模で推移してきた。爆発的な感染拡大が始まったのは6月で、1週間の新規感染者数が前の週を大きく超える状態が続いてきた。

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リビアの人口は665万人ほど。
情勢不安の続いてきたリビアでは、パンデミック以前より医療保険制度自体が弱い状態が続いてきた。感染者に対応するための病床や医療器具なども不十分だ。
4月から5月にかけては医療施設への攻撃も多発。6月以降は市民らが地雷の爆発に巻き込まれる事態が相次いでいる。


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リビアの難民・移民について、一緒に考えてみませんか。


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