ムード満点な時にそんなこと言わないで/青春物語51
私は驚いて永尾さんの顔を見た。
「えっ、いいけど。彼女に怒られない?」
「桜田さんと踊りたいんだ」
「じゃあ踊ろう、踊ろう」
酔った勢いに任せて彼の手を取った。
次の曲は聴いたことのある曲だった。
彼の挙げた左手を右手でキュッと握り、左手は遠慮がちに腰に回した。
「ねぇ覚えている?」
そう聞いた彼の顔が、紅潮しているのが薄暗いライトの下でもわかった。
「うん、覚えているよ」
「なんの事か、わかってんのか?」
「チークの事でしょ?」
「あれっ、よくわかったな」
「だって今、