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忘れていた感情が一気に溢れ出した/青春物語46

私は更衣室を出て、わざわざ受付側の正面の階段を降りて行った。
裏口では永尾さんへの差し入れを買いに行くと言っていた小林さんが待っているだろう。
私は正面玄関から帰れば顔を合わせないですむだろうと考えた。

受付に座っていた永尾さんにバイバイと手を振ると、彼は身を乗り出して手を振り続けた。
私はその姿に少しホッとした。
小林さんとの仲を勘違いされていたらどうしようとずっと思っていたから。

正面玄関を出るとバス停まで一目散に走った。
ちょうどバスが来る時刻で どうしてもこのバスに乗らなければならなかった。
バス停に立っていたら小林さんに出くわすだろう。
しばらくすると案の定、私を乗せたバスを追い抜いて行く小林さんの車が目に入った。

バスに揺られながら給湯室での永尾さんとの会話を思い出していた。
同棲していた彼女とヨリが戻ったのならしょうがないと自己完結していた。
そのせいか最近は彼への想いが薄れているのを自分自身でも感じていた。
でも、部内の子と付き合ってるとなると話は別だった。
忘れかけていた感情が一気に溢れ出した。

でも給湯室での彼の言葉を信じよう、そう思った。
わたしに向けたあの笑顔を信じたい、そう思った。

それなのに、悲しいかな私のその想いは完全に裏切られることとなった。