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どんなに後悔しただろう/青春物語47

私はどんなに後悔しただろう。
永尾さんが同棲していた彼女と別れ、傷心状態でいたのを知らずに小林さんと楽しんでいたことを。
その隙に後輩の田中さんが、彼の心に入り込んでいたことに気づかなかったことを。

高卒の田中さんは永尾さんと同期入社で同じ部署だった。
給湯室で彼に恐る恐る田中さんとの関係を聞いた日から半年が経っていた。
その頃はもう、私の目から見ても二人が付き合っているのがわかっていた。
社内で二人の姿を見るのは辛く悲しかった。
が、永尾さんは朝早く営業に出て行き、私は退社時間すぐに会社を後にしていたのであまり彼らの姿を見ずに済んだ。
いや、意識的に私が避けていた。
付き合ってる二人を見るのは耐えられなかった。

その頃すでに小林さんは親の会社に戻っていた。
元々うちの会社に研修で来ていたようなものだった。
小林さんに会えなくなったことより、永尾さんを見ることのほうが辛かった。
田中さんは当然、私と永尾さんが親しくしていたのを知っているだろう。
わたしは永尾さんの彼女よとばかりに優位に立つ後輩に、私は平静を装うしかなかった。
何事もなかったかのように不自然なまでも二人を避け続けた。

それでも時が経つにつれて永尾さんへの未練が少しずつ薄れていった。
本当に少しずつ、少しずつ…。

やがて私は退社を決意した。