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レビー小体型認知症の対処法

このページは、レビー小体型認知症の情報を収集してまとめたものです。分かり易く分類する為に、一部に独自の新しい解釈も加えてあります。


レビー小体型認知症とは

横浜市立大学の小阪憲司名誉教授によって発見された疾患です。認知症患者全体の約20%がレビー小体型認知症と言われていて、アルツハイマー型認知症、血管性認知症と合わせて三大認知症と呼ばれています。

アルツハイマー型認知症は女性の方が多いですが、レビー小体型認知症では男性は女性より倍の発症率があるとされています。75歳以上の方に多いですが、それより若い年代で発症する場合もあります。

原因

レビー小体は、αシヌクレインというたんぱく質が神経細胞に溜まったものです。ユダヤ系ドイツ人の神経学者で、発見者のフレデリック・ヘンリー・レビー氏にちなんで名付けられました。

レビー小体が溜まった部位によって機能に障害が出てきます。レビー小体が脳幹あたりで現れるとパーキンソン病になり、大脳皮質に現れるとレビー小体型認知症になります。レビー小体が溜まることで神経細胞が破壊されて神経伝達物質が伝わりにくくなり、運動機能や認知機能に障害が出てくると考えられています。

レビー小体は脳以外の場所に溜まることがあり、鼻に溜まると嗅覚障害が起こり、心臓に溜まると立ちくらみが増え、腸に溜まると頑固な便秘になります。

症状

認知機能障害

記憶、思考、理解、判断など、知的な機能の障害。

物忘れ(記憶障害)
親しい人の名前が分からないなど、知っているはずのことが思い出せなくなる。レビー小体型認知症の初期は、記憶障害は認知症の中では比較的軽い。

見当識障害
現在の時間や場所を把握できなくなり、日時や道を間違える。

日内変動
注意力や理解力などの認知機能の感度が、一日の中で急激に変化すること。良い状態の時は意識がはっきりしていて理解力もあるが、悪い状態の時はぼんやりして表情が乏しくなり会話での理解力も低下する。認知機能の感度は、日によっても変化が大きく、数週間ごとに変動することもある。

認知機能障害の対処法

  • 重要なことを話す時には、意識がはっきりしている時に伝えるようにする。

  • 忘れていることでも、ヒントを出すと思い出せる場合がある。

  • 介護サービスでリハビリをしたり、普段から足踏みや歩行訓練などの運動療法をする。

  • 危険を伴わない趣味に励む、歌う、手を動かす作業をする、ゲームをするなどの行動療法を行う。

  • 昔の思い出を話してもらったり、会話する機会を出来るだけつくる。

  • 1日に1.5リットルを目標にして水分を多くとると、認知機能が改善する場合がある。

誤認障害

妄想、幻覚、錯覚など、対象や状況を病的に誤認する障害。妄想や幻覚や錯覚に共通する対処法があり、それを分かり易く説明する為、誤認する障害をまとめられるカテゴリーを便宜上作りました。

妄想

他の人にとってはあり得ないと思えることを確信する。

誤認妄想
現実とは違う状況を信じ込んでしまう。例えば、家にいても自分の家ではない思い、出て行こうとしたり、帰宅したい言う。他人が家に入り込んでいると思う。テレビや夢で見たことを現実と思い込む。昔の状況が今も変わらずに続いていると思っている。「自分はまだ昔と変わらず・・・学校に行っている、働いている、子供を育てている」など。

被害妄想
実際にはない被害を受けたと思っている。「自分の物が隠された、または盗まれた」「悪口を言われている」「誰かに危害を加えられる」「配偶者に浮気されている」「誰かに見張られている」「邪魔者だと思われている」など。

替え玉妄想
自分や身近な人の替え玉がいると思い込む。「身近な人がそっくりな人と入れ替わっている」「誰かが変装して周囲の人になりすましている」「どこかに自分の分身がいる」など。

妄想の対処法

  • 妄想に付き合って一緒に行動すると、その日は納得して落ち着く場合がある。

  • 妄想や頑固さを家族が収められない時には、ケアマネージャーに相談して対処してもらうと、落ち着く場合がある。

幻覚

対象は存在しないが、本人には対象の感覚がある。

幻視
実際には存在しないはずのものが見える。本人にはありありと見えていて、虫や小動物や人に見えることが多い。レビー小体型認知症の約80%の人に幻視がみられる。

幻聴
実際には聞こえないはずの音や声が聞こえる。話し声が聞こえたり、ラジオや電話の音が聞こえているように感じたり、幻視として見えている人物が話すこともある。

幻臭
実際にはしないはずの臭いを感じる。

幻味
飲食している時に変な味がしたり、飲食していない状態でも味がすることもある。

体感幻覚
体内や触覚に関わる幻覚。「誰かにさわられた」「生き物が体の上をを這っている」「体内に何かいる」など。

錯覚

実際に起きていることと自分の感じ方が違う。

錯視
見たものが実際とは違った見え方をする。壁にかけられた服が人に見えたり、壁紙や絨毯の模様が人の顔に見えるなど。

変形視
見ているうちに変化する。人や物が歪んだり、傾いたり、波打ったり、せまってきたり、大きさが変わったりして見える。

誤認障害の対処法

「何かいる」と言われた時の対応

  • 「見えたとしても悪さはしない」と言ってみる。

  • 追い払う仕草をして「もういなくなった」と言ってみる。

  • 照明を明るくしたり、明かりを幻視や錯視が見えた場所に近づけて、それでも見えるか確認してみる。

  • 介護者が、見えたと言っている場所に行って、そこを手で触れてみると何もないことが解り、安心させることが出来る場合がある。

  • 本人は現実のことだと思っているので、頭ごなしに否定したり、感情的な対応をしないように心がける。むやみに否定すると、かえって混乱や不安を引き起こすことにもなり、症状が悪化する場合もある。

  • 恐がっていたら、手や体に触れたり、「大丈夫」「怖くはない」などと声をかけて、安心出来るようにして寄り添う。

環境調整

  • 幻視や錯視は暗い場所や時間帯で起こりやすので、暗くなる時間帯には早めに照明をつける。

  • 照明を明るくしたり、各部屋の照明の明るさを統一したり、照明器具を増やすなどして、生活環境に合わせて照明を工夫する。

  • 壁に服をかけない、生物の形に見えやすい物を部屋に置かない、壁紙や絨毯を無地のものに変えるなどして、出来るだけ錯視を防ぐ工夫をしてみる。

運動機能障害(パーキンソン症状)

体がスムーズに動かなくなる。

振戦
手足が震える。主に身体を動かしていない時にみられ、睡眠時にはおこらない。

筋固縮(筋強剛)
手足の筋肉がこわばる。その結果、動作の範囲が狭くなることにより運動量が減る。

姿勢反射障害
姿勢をうまく保てずに体のバランスを崩し、転倒リスクが高まる。

仮面様顔貌
まばたきが少なく、無表情になる。

動作緩慢(寡動)
体の動きが遅くなる。

嚥下障害
口の中の物を上手く飲み込めなくなる状態。唾液が飲み込めずに口から垂れてくる場合もある。

小字症
文字を書くと、だんだんと小さくなる。

歩行障害
歩き始めに踏み出しづらくなったり、歩幅が小さくなる。前かがみで歩行することで歩行速度が徐々に上がり、自分では止めることが出来なくなる。

運動機能障害の対処法

転倒を防ぐ工夫

  • 歩く動線に物を置かない。

  • 滑らないように、床が濡れたり汚れたりしたら、すぐに拭き取る。

  • 手すりの設置や段差の解消を出来るだけ行う。

  • 腕を掴んだり組んだりして、一緒に歩くようにする。

  • 歩行補助具を使用する。

  • コードや段差のある所では、転倒しないように気を配る。

  • 歩いている時に振り向くと危険なので、後ろから声をかけないようにする。

嚥下障害の工夫(食べ物の準備)

  • 堅い状態のもの、噛みきれないもの、水分の少ない食べ物は避ける。

  • 軟らかい食べ物であっても、餅や団子や白玉やこんにゃくのような、のどに詰まりやすいものは避ける。

  • 米はとても軟らかく炊くか、おかゆや雑炊にする。

  • プリン、ゼリー、絹ごし豆腐、軟らかい寒天など、軟らかくて固まっているものは食べやすい。

  • 片栗粉、小麦粉、マヨネーズ、ケチャップ、コーンスターチ、長芋、ヨーグルト、カレーやシチューの素、とろみ剤などを使った、とろみのある食べ物を作る。

  • 高齢者用の軟らかい食品を購入する。

嚥下障害の対応(見守りや介助)

  • よだれが出る場合は、普段からよだれかけを着けたり、飲み込むように促し、無理ならば拭き取る。

  • 一人で食べられる状態なら、食べる時には見守る。

  • 少しずつよく噛んで、ゆっくりと急がせずに食べさせる。

  • 下の方からそっと口に運ぶと、飲み物や食べ物がこぼれにくい。

認知機能障害の対処法で説明した運動療法や行動療法は、運動機能の維持にも効果がある。

自律神経症状

立ちくらみによるめまいや失神によって、転倒の恐れがある。便秘、頻尿、尿もれ、残尿感などの排泄障害。体温調節に障害があり、多汗になったり、手足が冷える。他には、嗅覚障害(匂いが分かりにくくなる)や倦怠感など。

自律神経症状の対処法

立ちくらみによる転倒を防ぐ工夫

  • 弾性ストッキングをはく。

  • 立ち上がる時や入浴時は、見守りや介助をする。

  • 寝ている状態から立ち上がる際には、体をゆっくり起こし、座った状態で少し休ませてから立たせる。

その他の対応

  • 手足の冷え解消の為、ぬるめのお湯にゆっくりと入浴する。

  • 体温調節の為、エアコンで室内の温度や湿度を快適に保つ。

  • 便秘解消の為、適度な水分と繊維質や乳酸菌を含んだ食品を毎日摂取する

レム睡眠行動異常

レム睡眠(夢を見ている浅い眠りの状態)の時に、大声を出したり、手足をばたつかせたり、起きて歩き回る。この症状によって本人や介護者が睡眠を阻害されたり、怪我をしたりすることがある。

レム睡眠行動異常の対処法

罹患者が怪我をしない為の工夫

  • 日頃のストレスや飲酒によって症状が悪化することもあるので、本人に注意を促したり、介護者が気を付ける。

  • 家具や壁や窓との距離をとって寝具を設置する。

  • ベッドの場合は、転落防止用の柵を設置する。

  • 側に堅い物を置かないようにする。側に堅い物がある場合はタオルを巻いたり、堅い物との間に柔らかい物を置く。

介護者が怪我をしない為の工夫

  • レム睡眠行動異常は長時間は継続しないので、うなされていても落ち着くまで起こさずに様子を見る。逆に、呼びかけることで落ち着く場合もある。

  • 別室で寝るようにする。部屋で一緒に寝る場合は、暴れてもぶつからないように距離を取って寝具を置く。

起きて歩き回る場合

  • 暗い状況で歩いても怪我をしないように準備をしておく。つまずかないように出来るだけ下に物を置かない、段差の解消をする、コードの整理を行うなど。

  • 部屋で一緒に寝るようにする。寝ぼけて歩き出した時は、呼びかけたり体に触れて起こす、転ばないように照明をつけたり介助する、外に出ないように見守るなど。

抑うつ症状

精神面では、思考力、集中力、気分、興味、意欲、自発性、自己肯定感などの低下。身体症状は、倦怠感、食欲不振、不眠または過眠など。
幻視や運動機能障害からくる不安感が、抑うつ症状の原因となっている場合もある。 レビー小体型認知症患者の約半数が抑うつ状態になり、老人性うつや血管性うつ病と誤診されてしまうこともある。

抑うつ症状の対処法

  • レビー小体型認知症になると、薬物に対して過敏に反応する体質になるので、薬が効きすぎたり具合が悪くなる場合は、医師と相談して薬の量を減らす。

  • 話を聴いてあげたりして、孤独にならないように気を配る。

  • 抑うつ状態や運動機能障害に耐えているだけで本人は頑張っているので、プレッシャーを与えない為に「頑張って」と言わない。

  • 音楽を聴く、花やお香やアロマを使って部屋を良い香りにする、ペットと接するなど、本人がリラックス出来ることを取りいれる。

  • 食欲不振で食が細くなることもあるので、きちんと栄養を摂れるようバランスの良い食事を心がける。

  • 散歩や足踏みや体操など、軽い有酸素運動をする。

  • 体調を崩させないように、無理強いしない程度に規則正しい生活をする。

レビー小体型認知症に早く気付く為に

家族がレビー小体型認知症の特徴に気付けば、症状に対処出来るようになります。

幻視、 レム睡眠行動異常、認知感度の急激な変化(日内変動)は、レビー小体型認知症の特徴的な症状です。この症状が現れた場合は、レビー小体型認知症発病の判断材料になります。

レビー小体型認知症の初期症状は、頑固な便秘、嗅覚障害、立ちくらみ、 認知機能障害、運動機能障害、抑うつ症状などです。以上の症状が複数当てはまったときには、レビー小体型認知症の初期症状ではないか、医師に相談してみても良いと思います。担当した医師がレビー小体型認知症と判断しかねる場合は、レビー小体型認知症に詳しい医師を紹介してもらう方法もあります。他には、専門医をネットで調べて受診することも出来ます。


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