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「なんでも発信」より「パーセプションを考える」とPR目的達成への遠回りを回避できるという話

広報・PRコンサルティング会社 LEORIS代表の鎌田陽子です。
このnoteは、特にこれから広報・PRに取り組もうと思われているまたは、取り組み始めたばかりの経営者や広報・PR部門の責任者の方に、広報・PRに関する「考え方」をお伝えしています。

さて、広報・PRに取り組もうと考える時、「認知を獲得したい!」を目的にされるケースは多いと思います。そしてその目的のために「メディアに出たい!」と思われるでしょう。これは自然なことだと思います。
ですが、この「メディアに出る」などの情報露出に関して、あらかじめある「設計」を考えておかなければ、認知を獲得した先にある本来の目的たるKGIに貢献しないというある種の「遠回り」が生まれてしまうケースがあります。
この「遠回り」をしないために、大切な要素「パーセプション」について、今回はお伝えします。


広報・PRを設計する「PRピラミッド」

広報・PRはただ認知を獲得するための活動ではなく、ステークホルダーのビヘイビアチェンジ、つまり、行動変容を目指す活動です。これまでターゲットが取ってこなかった行動を起こしてもらうには、「パーセプションチェンジ」、つまり「認識を変える」、そもそも認識がない場合には「認識を作る」ことが必要です。このパーセプションチェンジを起こすためにさまざまな方法を活用して情報を出していくことが、広報・PRの日々の仕事の部分になるわけです。

これを表すのが「PRピラミッド」と言われるもので、世界最大級の広告賞である「カンヌライオンズ」のPR部門の審査でも使われるフレームワークです。

PRピラミッド

パーセプションチェンジを具体的に考える

パーセプションチェンジがどのようなものか、もう少しわかりやすくするため、例を使ってご紹介します。

自社商品がユーザー層にとって高額商品であり、それが要因で売上が伸び悩んでいるとします。事業戦略として価格を下げる、販売チャネルを変更する、ターゲットを変更するなどの解決方法も考えられますが、広報・PRでは「情報」でこの状況に変化をもたらすアプローチを検討します。

この場合、「高いから購入しない」という行動から、「高くても購入する」という行動変容を起こしたいので、そのためにはどのようなパーセプションを作ればよいかを考えます。

高くても購入するのは、どんな場合でしょうか?

  • 今どうしても必要だが他に選択肢がない

  • 高いけれども同じカテゴリーの商品と比較して耐久性が格段に良く、買い替え回数が少ないため結局コストパフォーマンスが良い

  • 高いけれども同じカテゴリーの商品と比較して耐久性が格段に良く、買い替え回数が少ないため環境に配慮した行動になる

  • 著名なインフルエンサーが愛用している

  • 持っていると自分の満足度が上がる

他にも色々と出てくると思います。

この中で、この商品のターゲットが潜在的に求める価値にアプローチするパーセプションを選びます。例えば、家計の健全性を引き受ける主婦がターゲットだとすれば、長期的なコストパフォーマンスの良さを重視する可能性は高いですし、環境問題に関心の高いZ世代がターゲットだとすれば、買い替え回数が少ないことで環境に配慮した行動につながることを知れば、購入に至る可能性は高まるかもしれません。

このように、行動変容につながるパーセプションを見つけ、そのパーセプションに変わっていくような情報露出を実施していくのが㏚です。

ここでは簡略的に書いていますが、実際には時には調査を実施するなどして、行動変容につながるパーセプションを検討・設計していくことになります。

パーセプションをより深く理解するには、この本がおすすめです。

その情報露出は今作りたいパーセプション形成に貢献するか?

さてこのnote のタイトル「何でも発信」については、ここからが本題です。
特に広報・PR活動の初期は、より多くの情報が外部に出ていくことに注力すると思います。会社や商品・サービスを知ってもらいたいと思い、行動することは大切ですが、この時に改めてPRピラミッドを振り返るのがおすすめです。

PRピラミッド

望まないパーセプションを生み出すケース

PRピラミッドの最下層、情報露出はパーセプションチェンジにつながります。
もし、会社を知ってもらいたいと思って受けた取材の趣旨が、今作りたいパーセプションとは関係の無いパーセプションを作ってしまうものであったらどうでしょうか?

例えば、世界の貧困層を救う社会貢献事業を行う会社が、若年層向けの会員組織を作って会員登録を促したいと考えているとします。「若い自分たちでもできることがある」というパーセプションを作っていくことを目指してメディアリレーションをしたりオウンドメディアを運用するなど、情報が露出していくことに頑張っているとしましょう。
少し極端な例ですが、所属先を明示した社員のSNSで、超高級社員旅行をしている様子を投稿したり、そんな様子を知ったオモシロ情報を扱うメディアから「社員旅行が超ラグジュアリーな会社」という取材を受けると、果たしてどうなるでしょうか。「ラグジュアリー社員旅行か…ちょっと社会貢献とイメージが違うかな」という、日々努力して生み出そうとしているパーセプションとは異なるパーセプションを形成してしまう可能性があるわけです。

したがって、発信する情報が今形成したいパーセプションに貢献するものなのかそうでないのかは、よく検討する必要があります。また、メディアからの取材依頼もありがたいことではありますが、もしその取材趣旨が事実であったとしても、記事等として露出した結果、形成したいパーセプションとは大きく異なるパーセプション形成になりそうであれば、メディアと本音でしっかり相談をし、時には残念ながら辞退を検討することもあります。この場合も、依頼をいただいたメディアには感謝をし、そのメディアの傾向や読者の期待に合致し、自社のパーセプション形成にも沿う情報があれば、またいずれ情報の提供を試みるこもとも、メディアとの関係構築に貢献すると思います。

上記は極端な例ですが、もう少し広く捉えると、そもそも世界の貧困層を救う社会貢献事業を行う会社として、「ラグジュアリー社員旅行」が果たして適切な社内活動かという課題も見えてきます。自社の事業や社内活動などあらゆることがシームレスにつながるには、企業としての最上流であるMVVや企業理念をしっかり設計しておく必要がありますが、この話はこれでまた膨大な分量になるので、また改めて記事にします。

広報・PR活動を始める時にPRピラミッドを設計しよう

特に広報・PR活動の初期は、パーセプション形成に大切な時期です。それは、一度作られたパーセプションを変更することは、パーセプションを作ることよりも大変だからです。

情報が外に出れば「認知獲得」には貢献します。ですがその認知が望ましい認識「パーセプション」につながらないのであれば、結局は最終的に目指したい行動変容には遠回りになってしまいます。
広報・PRに取り組み始めた初期は、人的リソースも十分には割けない場合も多いと思います。貴重なリソースを使った活動で遠回りが起こらないように、「出られるなら何でも」という考え方よりも、パーセプションを考え、PRピラミッドを活用した設計に取り組まれるのがおすすめです。


LEORIS合同会社 代表  鎌田陽子

LEORISでは、広報・PR活動を開始したい企業・団体等に向けて、担当者育成も含めた伴走プランをご提案しています。お問い合わせはコーポレートサイトからお受けしています。


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