短編連作小説『あれもこれもそれも』〔紹介と振り返り〕
いつも作品をお読み頂き誠にありがとうございます。普段、詩・エッセイ・短編小説などを掲載しておりますが、これを書いている現在は短編連作小説『あれもこれもそれも』を連載中です。
平日は毎日、土日も時々更新しておりますので、引き続きお楽しみ頂ければ幸いです。
短編連作とあるように、本作品は4つのstoryから成っております。同じ舞台・時代設定ですが、それぞれのstoryごとに主人公が異なります。4つの話を通して読めば全体のストーリーは浮かび上がってきますが、storyごとの主人公の心理描写にこそ重きを置いております。
『そんな長いのは読めないよ……』という方にもぜひつまみ食いでもして頂ければと思い、連載途中ですがstory3. までの振り返りを書きます。
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舞台は現代、東海地方にある某都市。その駅近く、高級ラウンジ〈つれづれ〉の周辺。店にまつわる人々の日常と非日常が交錯するところ。
story1. 呪術的な日常 - マガジン
〈登場人物〉
槙島拓人…人文系大学生。芳彦とは恋人関係。〈つれづれ〉のボーイ
森井芳彦…35歳会社員。社畜で天然
田中健斗…拓人のバイト仲間。サッカー部
呪術の教授………大学の文化人類学の教授
つれづれのママ…拓人と健斗を可愛がっている
謎の常連客………通人。拓人に好意を寄せる
大学生・拓人は恋人の芳彦と半同棲生活を楽しみながら、学業とアルバイトをして過ごしていた。しかし、ゲイとしての生きづらさや、バイト仲間である健斗との確執、つまらない講義などのせいで、心中は穏やかでなかった。
ある日、店の常連客に言われた「憎む」という言葉をきっかけに、苛々が増していくようになる。拓人は呪術の教授のことを気持ち悪いと思いながらも、彼の言葉から人を「憎む」感情の原点を考えるようになる。
ラウンジ〈つれづれ〉でピアノ演奏をした後、常連客や健斗とのやりとりの間で、拓人は自分の中にも人の中にも、小さな自己顕示欲から膨れていく汚い感情があることを知った。
そしてこれをきっかけに恋人に対する気持ちも見直すようになる。
story 2. 遊女の廊下 - マガジン
〈登場人物〉
吉岡サキ……小紫に心酔し、愛人契約で生活を送る現代の遊女
稲本楼小紫…江戸時代の遊女。実在したか不明
田中健斗……〈つれづれ〉のボーイ。サキと関係を持ち、強く惹かれる
サキの恋人…健斗にサキを紹介する
サキは大学時代に、吉原の伝説の遊女・稲本楼小紫の説話に出会い、心酔するようになった。それ以降、男性と愛人契約をして金品を得て、生活をしていたが、5年前に今の恋人と出会う。そして彼の転勤についていき身請けをされた。
近頃、恋人は快楽のために種々の悪事を働くようになる。その一環として、〈つれづれ〉のボーイ・健斗と関係を持たされることになった。健斗はサキにハマっていくが、サキは恋人の暴走する狂気が気になって仕方がない。
遊女としての誇りと、女としての意地とが胸の内で拮抗して、最終的にサキは恋人を咎めることになる。しかし恋人は聞く耳を持たない。悪事をやめさせるために、サキは恋人とも健斗とも決別することを選択する。
story 3. 時の木陰にて - マガジン
〈登場人物〉
松田佳美…ひとり娘を持つ女性。昔から物事を俯瞰するクセがある。
森井芳彦…佳美の高校の同級生。佳美が密かに恋心を寄せていた。同性愛者。
つれづれのママ……美しく話し上手。
メグミ…〈つれづれ〉の女性従業員。
小春……佳美・芳彦の同級生。勝気だが離婚経験がある。
麻衣……佳美の娘。ピアノ教室に通う。
佳美の夫……奔放なところがあるものの、娘には愛情を注いでいる。
不機嫌に帰宅する夫に困りはてていた妻・佳美のもとに、ある晩不倫相手と名乗る女性から電話がかかってくる。
旧友の小春に相談し離婚をすすめられるが、なかなか自分から行動を起こせず、自らを惨めに感じていた。直近の同窓会で再会した昔の恋の相手、森井が心の支えになっており、カフェで2人きりで会うこととなる。しかし、森井の恋愛対象が男性であることを本人から知らされた上、夫の不倫に対して冷めた態度でいることをたしなめられる。
森井の助言を受け、不倫相手が働いていると思われるラウンジ〈つれづれ〉に乗り込む。しかしそこには本当の不倫相手はおらず、逆に凛として生きている女性たちの像を目の当たりにした。自身も本当に強くなりたいと思うようになり、佳美は不倫相手と対峙する決心を固めた。
明日よりstory 4.（最終章）の連載を開始します。
story 4. をより楽しんで頂くためには、1から3を先にお読み頂くことをオススメします（本稿はそれがなかなか難しい方のために書いていますので、これで充分かとも思います）
既にお読み頂いている方々、ありがとうございます。引き続き、宜しくお願いします(^-^)
矢口蓮人
ご支援頂いたお気持ちの分、作品に昇華したいと思います！