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「世界は夢組と叶え組でできている」を読んで、思い出した夜の話。

私が、この本を手にとったきっかけは、テレビ番組「セブンルール」だった。様々な仕事で輝いている女性を取材し、その人が大切にしている「7つのルール」を紹介する番組だ。

「世界は夢組と叶え組でできている」の著者「桜林直子さん」は、クッキー屋さんの運営者として、2017年11月に出演していた。

番組で紹介された内容で印象に残ったのが、「スタッフに「夢組」と「叶え組」を組み合わせる」というルールだ。
たとえば、「将来お店を開きたい」など、「やりたいことがある」のが「夢組」なら、「やりたいことがない」けど、やりたいことがある人の助けになれる人は、夢を叶える才能がある「叶え組」だという。

助ける側の立場にスポットライトを当て、「叶え組」と、宝塚のような呼び名をつける、しゃれがきいた言葉使いに惹かれて、番組以降、桜林さんのSNSをチェックするようになった。

彼女のnoteやTwitterの文章には、日常から見つけた、小さな哲学があり、読んだ後、心のアンテナが1本増える感じがする。
気に入った文章があれば、印刷して手帳に貼っていた。
だから、書籍が出版されると知って、すぐに注文した。

ここから、親しみをこめて「サクちゃんさん」と呼ばせてください。

「夢」をもてないことは欠損だと思っていた。(P8)

という文章からこの本が始まる。
欠損どころか、「ない」ことは、宝の地図だよ、と明るい希望を示してくれるのが、この本だ。

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本を読みながら、「ない」ことについて考えていたら、私が結婚する際に、アパートの内見をした時のことを思い出した。
もう20年以上前のことだ。

夫になる人が、「丈夫そうだから、鉄筋コンクリートの部屋に住みたい」と言うので、構造重視で選んだ物件だった。
私は、童話「3匹の子豚」のような希望だなと思った。

お互いの時間が合わなかったので、内見は「夜」で、不動産屋さんに借りた鍵を使って、2人で部屋に入った。

電気が通っていないから、明かりは窓越しの街灯のみ。
目が慣れてくるのを待ち、そろそろと進んだ。
和室、洋室、台所、浴室とトイレ。数歩で回れるような部屋だった。

夫になる人は「さすが鉄筋コンクリートだね。がっしりしてる。」と、壁を触って満足そう。
そして、暗闇の中で、結婚後の明るい展望を語りだした。

私は、ちっともその話に乗れなかった。
「なに明るく語ってんの」と、怒りながら見回した、家財がなにも「ない」部屋を、こわく感じた。
これから自分たちで自由に工夫し放題なのに、ぜんぜんワクワクしない。

私は、新しい事を目の前にすると、先を楽しみに思う気持ちより先に、怖さと不安でいっぱいになる傾向がある。
今でもそうだ。
この夜は、マリッジブルーで、さらに倍増だった。

自由にできるタイミングなのに、やりたいことが見つからない時は、出てこようとするものを抑える「フタ」がある、とサクちゃんさんは言う。

フタがあると「こうしたい」という思いを抑えて、
かわりに「ガマン」をするんだなとわかった。
そして、いつのまにかガマンが習慣になり、なんなら得意になり、「ガマンづよい」ことが自分の長所だとすら思っていたことにも気がついた。(P44)
いちばん大きなフタは
「しあわせになりたい」という願いを抑える
「自分はしあわせになれない、なってはいけない」という
思い込みのフタだ。(P45)

この「自分は、しあわせになってはいけない」という文章に、私は、深く共感してしまった。私にとって、慣れ親しんだ思考だ。

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いまや五十路の私が、あの夜から今までを振り返ってみる。

生活していれば自然と、良いこと悪いこと、いろいろなことが起こるから、性格とか気にしてられなくて、なんとか対応して、今に至る。
その顛末にまつわる、悲喜こもごもの「思い出がある」ことが「しあわせ」なのだと思う。

悲観していても「しあわせ」には、なってしまうもの。
期待する事を「ガマン」して、「怖さと不安でいっぱい」を選びがちなのは、勿体なかった。

「ガマン」とは、「鎧」を着ているような状態で、
「ガマン」の正反対にあるのが「素直」。

素直じゃないことでいいことはひとつもない(P102)

と、サクちゃんさんは言う。

それならばどうすればよいの、と頁をめくり、この文章にラインを引いた。私は何かを決める時に、この文章を読み返す。

「素直さ」に必要なのは、人の言葉や気持ちをそのまま受け取る姿勢だと思いがちだけど、それよりも「自分を知ること」と「そこから目を逸らさない勇気」が必要なんだと思う。(P105)
まだまだわたしも道の途中だけど、
「後天的に素直さを手に入れることができる」というのは
「素直じゃない界」にとっては革命だし、
ものすごくクリエイティブだと思う。(P105)

この【「素直じゃない界」にとっては革命】という表現が好きだ。
クスッと笑える言い回しが、内省しすぎる私を、明るい方向に導いてくれる。友達と話をしているような気持ちになる。

サクちゃんさんの本という、新しい友達ができた私が、もしも、「あの夜の私」に出会えたら、この文章みたいに話しかけたい。

「ガマンしなければいいじゃん」は、それ以外ない正論なのだけど、突然キツキツの鎧をパーンと脱ぐことはむずかしいから、「もしもガマンしなくていいなら、どうしたい?」と聞いて、すこしずつゆるめてあげたい。
すべての解決は説得力より想像力からだと思っているので、
まずはガマンしていない自分を想像するところから始めるといい。(P71)

結婚を控えた「素直じゃない界」の私よ。
せっかくだから、この部屋は遊園地のアトラクションの「前室」だと考えてみない?
今は夜で、暗くて周りがよく見えないけど、大抵のアトラクションは、先に何が起こるか分からないもの。

あの夜に想像してたのと違う景色を眺めながら、乗り物は今も進んでいます。

ガマンしないで、未来に期待してみてもいいかも。
今の私も、そうしてみるから。


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