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1966年の『ニューヨークのミコ』と映画劇『聖書:始まりに』

映画劇『ロードゥ・ジム』

    1962年(昭和37年)初め、カンプチーアのスィエムリアップで、49歳のマルセル・キャミュ(Marcel Camus、1912年4月21日~1982年1月13日)監督の総天然色のフランス映画劇『極楽鳥』L'Oiseau de paradis(117分)が撮影された。
 撮影監督は41歳のレモン・ルムワーニュ(Raymond Lemoigne、1920年6月15日~2000年10月25日)だ。
   元国王ノローダム・セアヌー(1922年10月31日~2012年10月15日)の娘である19歳のボッファ・テーヴィー(1943年1月8日~2019年11月18日)の踊りを見ることができる。

 1962年(昭和37年)10月24日、フランスで映画劇『極楽鳥』L'Oiseau de paradisが公開された。

 1964年(昭和39年)初め、カンプチーアのスィエムリアップで、コンラッドゥ(Joseph Conrad、1857年12月3日~1924年8月3日)の長篇小説『ロードゥ・ジム』Lord Jim(1900)に基づく、51歳のリチャードゥ・ブルックス(Richard Brooks、1912年5月18日~1992年3月11日)監督、身長188㎝の31歳のピーター・オウトゥール(Peter O'Toole、1932年8月2日~2013年12月14日)主演の連合王国(United Kingdom)とアメリカ連合国(United States of America)の合作の総天然色映画劇『ロードゥ・ジム』Lord Jim(154分)の撮影が始まった。

 撮影監督は61歳のフレディ・ヤング(Freddie Young、1902年10月9日~1998年12月1日)だ。
 この映画劇には、身長180㎝の30歳の伊丹一三(伊丹十三、1933年5月15日~1997年12月20日)と身長182㎝の61歳の斎藤達雄(1902年6月10日~1968年3月2日)が出演している。

 1965年(昭和40年)2月15日、ニュー・ヨーク、ブロードゥウェイのローの殿堂劇場(Loew's State Theatre)で、映画劇『ロードゥ・ジム』Lord Jimが公開された。

 1965年(昭和40年)3月20日、「ポケット文春」550、伊丹十三著『ヨーロッパ退屈日記』(文藝春秋新社、280円)が刊行された。
    同書には、伊丹が『ロード・ジム』のスクリーン・テストをランドゥンで受けた当時の模様が書かれている。

「ロード・ジム」チラシ

  1965年(昭和40年)10月1日、日比谷の有楽座で映画劇『ロード・ジム』Lord Jimの日本語字幕スーパー版が公開された。 

「聖書:初めに」プレミア

    ローの殿堂劇場で映画劇『ロード・ジム』が公開されていた時、向かいのヴィクトリア劇場(Victoria Theatre)では、最初のジェイムズ・ボンドゥ(James Bond)映画、テレンス・ヤング (Terence Young、1915年6月20日~1994年9月7日) 監督、身長188㎝のショーン・コヌリ(Sean Connery、1930年8月25日~)主演の総天然色映画劇『ノウ博士』Dr. No(109分、1962年10月5日初公開)と、 ボンドゥ映画の第二作、総天然色映画劇『ラッスィーアから愛をこめて』From Russia With Love(115分。1963年10月10日初公開)の2本立てが上映されていた。

 1963年(昭和38年)6月1日、新宿ミラノ座、渋谷パンテオン、銀座スバル座で、映画劇『ノウ博士』Dr. Noの日本語字幕スーパー版が『007は殺しの番号』の題名で公開された。

 1964年(昭和39年)4月25日、新宿ミラノ座、渋谷パンテオン、丸の内東映パラス、浅草東映ホールで、映画劇『ラッスィーアから愛をこめて』From Russia With Loveの日本語字幕スーパー版が『007/危機一発』の題名で公開された。

映画劇『聖書:始まりに』

 ところで、映画劇『ロード・ジム』公開中のブロードゥウェイで圧倒的に目を引いたのは、当時、身長163㎝の45歳のディーノ・デ・ラウレンティス(Dino De Laurentiis、1919年8月8日~ 2010年11月11日)が制作し、公開準備中だった、『旧約書』の「起源(ゲネシィス)」(Book of Genesis)に基づく、身長188㎝の58歳のジョン・ヒューストゥン(John Huston、1906年8月5日~1987年8月28日)監督の総天然色映画劇『聖書始まりに』The Bible: In the Beginning...(174分)の巨大広告だった。
 「始まり(Begginning)」とはこの世の始まりのことだ。

 撮影は1964年(昭和39年)5月から12月にかけてイターリアでおこなわれた。
 撮影監督は41歳のジュゼッペ・ロトゥンノ(Giuseppe Rotunno、1923年3月19日~2021年2月7日)だ。

ニューポートゥ・ジャズ祭の弘田三枝子とビリー・テイラー・トリオ

「週刊平凡」1965年7月8日号

 『週刊平凡』(平凡出版)1965年(昭和40年)7月8日号(特大号、40円)の表紙は、身長161㎝の18歳の弘田三枝子(1947年2月5日~2020年7月21日)と64歳の佐藤栄作(1901年3月27日~1975年6月3日)首相のツー・ショットだった。

 ところで、映画劇『聖書始まりに』The Bible: In the Beginning...の宣伝が続いていた1965年(昭和40年)、ニューポートゥ・ジャズ祭(Newport Jazz Festival)の7月3日の土曜日夜8時から、47歳のバディ・リッチ(Buddy Rich、1917年9月30日 ~1987年4月2日)(ドラムス)、47歳のハウアドゥ・マッギー(Howard McGhee、1918年3月6日~1987年7月17日)(トランペット)、41歳のソニー・スティットゥ(Sonny Stitt、1924年2月2日~1982年7月22日)(サクソフォーン)、42歳のイリノイ・ジャケイ(Illinois Jacquet、1922年10月30日~2004年7月22日)(サクソフォーン)、44歳のトニー・スコットゥ(Tony Scott、1921年6月17日~2007年3月28日)(クラリネット)、35歳の龝吉敏子(1929年12月12日~)(ピアノ)のジャム・セッションに続き、降雨による中断の後、日本ではミコの愛称で有名だった18歳の弘田三枝子ビリー・テイラー・トリオが出演した。

 ビリー・テイラー・トリオは、44歳のビリー・テイラー(Billy Taylor、1921年7月24日~2010年12月28日)(ピアノ) 、34歳のベン・タッカー(Ben Tucker、1930年12月13日~2013年6月4日)(ベース)、33歳のグレイディ・テイトゥ(Grady Tate、1932年1月14日~2017年10月8日)(ドラムス)だ。

 弘田三枝子は、ビリー・テイラー・トリオトニー・スコットゥを加えた即席のカルテットの伴奏で、十分な準備なしに、"Just One of Those Things"、"Misty"、"Moon River"、"Mack the Knife"と、「三階節」の前田憲男(1934年12月6日~2018年11月25日)によるジャズ編曲版を歌った。

 その後、デイヴ・ブルーベック・カルテット(Dave Brubeck Quartet)、 ハービー・マン・オクテット(Herbie Mann Octet)、61歳のアール・ファザ・ハインズ(Earl "Fatha" Hines、1903年12月28日~1983年4月22日)、デューク・エリントゥン楽団(Duke Ellington Orchestra)が出演した。

 その後、弘田三枝子はニュー・ヨークで、ビリー・テイラー・トリオ(Billy Taylor Trio)の伴奏で英語のアルバムを録音した。

 33歳の谷啓(たに・けい、1932年2月22日~2010年9月11日)、21歳の園まり(1944年4月12日~)が表紙の『週刊平凡』1965年(昭和40年)7月29日号「特集:美智子さまの妊婦服」(50円)のカラーグラビアに「本場で武者修行ニューポート・ジャズ・フェスティバルの弘田三枝子」が掲載された。

ニューポートゥ・フォーク祭のバブ・ディラン

 1965年(昭和40年)7月25日、ニューポートゥ民謡祭(Newport Folk Festival)で、24歳のバブ・ディランは観客の前で、民謡を電気ギターで演奏し、衝撃をもたらした。

 1曲目は、21歳のマイク・ブルームフィールドゥ(Mike Bloomfield、1943年7月28日~1981年2月15日)の音の歪んだリード・ギターが印象的な「マギーの農園」Maggie’s Farmだった。

 2曲目は、21歳のアル・クーパー(Al Kooper、1944年2月5日~)のオルガンが響き続ける「風来坊同然なのは」Like A Rolling Stoneだった。

 さらにあと2曲を、ディランは、フェンダー・ストゥラトキャスター(Fender Stratocaster)の電気ギターとハーモニカで演奏したのち楽隊と共に退場し、アクースティック・ギターに持ち替えて、ひとりで「もうすべておしまいだ、ベイビー・ブルー」It's All Over Now, Baby Blueと「タンブリン屋さん」Mr. Tambourine Manを演奏し、拍手を浴びた。

 この日の「マギーの農園」 Maggie's Farm、「風来坊同然なのは」Like A Rolling Stone、「もうすべておしまいだ、ベイビー・ブルー」It's All Over Now, Baby Blue、「タンブリン屋さん」Mr. Tambourine Manの演奏の記録映像は、2007年(平成19年)10月14日にBBCで初放映された、マリー・ラーナー(Murray Lerner、1927年5月8日~ 2017年9月2日)の1963年(昭和38年)から1965年(昭和40年)までのディランのニューポートゥでの演奏風景をまとめたモノクロ長篇記録映画『鏡の向こう側ニューポートゥ・フォーク祭のバブ・ディラン』The Other Side of the Mirror: Bob Dylan at the Newport Folk Festivalに収録されている。

 2007年(平成19年)12月5日、ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルから『ボブ・ディラン/ニューポート・フォーク・フェスティバル 1963−1965』のDVD(税込み3,990円)発売された。

 ニュー・ヨークに住んでいた高校2年のとき、ニューポートゥでディランの伝説公演を視聴した室矢憲治(1948年~)は、中村とうよう(1932年7月17日~2011年7月21日)編集の『NEW MUSIC MAGAZINE(ニューミュージック・マガジン)』第4号、1969年(昭和44年)7月号「特集=ボブ・ディラン」(150円)の小倉エージ(1946年6月15日~)、遠藤賢司(1947年1月13日~ 2017年10月25日)との鼎談「旅人ディランはどこへ行く」で、その思い出を語っている。
 この鼎談は、『MUSIC MAGAZINE』2009年(平成21年)11月増刊号、小倉エージロック・オブ・エージズ小倉エージ・インタヴュー&トーク集』(税込み1,700円)に再録された。

 観客の中にはPPMとディラン両方のファンといったようなフォーク・ファンと、そうじゃないのと、いたと思うんだけど、前半のときはみんな一体になっているわけよ。ところが"ハイウェイ61"や”ライク・ア・ローリング・ストーン”をやったら、一部の客が騒ぎだし、テニス・コートみたいになっている真ん中に飛び出してディランにつかみかかろうとした奴がいたんだ。それで警官が出てきて、取り押さえたってわけだ。

 1965年(昭和40年)8月10日、日本ビクターのフィリップス・レコードから、身長159㎝のフランス・ギャル(France Gall、1947年10月9日~ 2018年1月7日)「夢見るシャンソン人形」Poupée de cire, poupée de son(2分28秒)、「ジャズる心」Le cœur qui jazze(2分44秒)のシングル盤(FL-1173、370円)が発売され、1か月半足らずで20万枚を売り上げた。

 1965年(昭和40年)8月10日、日本コロムビアから、弘田三枝子ザ・スカーレットコロムビア・オール・スターズ'65年「ユーロビジョン歌謡祭」1位入賞歌夜の太陽」Bianca notte(2分04秒)、弘田三枝子コロムビア・オール・スターズ恋のシャンソン人形」Poupée de cire, poupée de son(3分37秒)のシングル盤(JPS-11、350円)が発売された。
 「夜の太陽」は三浦康照(1926年~2016年11月20日)作詩、大西修編曲、「夢みるシャンソン人形」は岩谷時子(1916年3月28日~2013年10月25日)作詩、大西修編曲だ。

「週刊朝日」1965年9月10日号

 『週刊朝日』(朝日新聞社)1965年(昭和40年)9月10日号(50円)の表紙は弘田三枝子の肖像とニューポートゥでの7月3日夜のステージの写真だった。

弘田三枝子「レオのうた」、ボブ・ディラン「ライク・ア・ローリング・ストーン」「風に吹かれて」

 1965年(昭和40年)10月6日から1966年9月28日の水曜19:00~19:30、フジテレビ系で、手塚治虫(1928年11月3日~1989年2月9日)原作、33歳の冨田勲(1932年4月22日~2016年5月5日)音楽のカラーのテレビアニメ『ジャングル大帝』各話23分、全52本が放送された。
 33歳の辻真先(1932年3月23日~)作詩、冨田勲作曲の エンディングテーマ「レオのうた」を18歳の弘田三枝子が歌った。

「ライク・ア・ローリング・ストーン」シングル

 1965年(昭和40年)10月、日本コロムビアから、ボブ・ディランライク・ア・ローリング・ストーン」Like A Rolling Stone(6分00秒)、「風に吹かれて」Blowin' In The Wind(2分47秒)のモノラル録音のシングル盤(LL-821-C、370円)が発売された。
 表のキャッチコピーは「フォーク・ソングの第1人者、ボブ・ディランのヒット曲!」だ。日本語で「民謡」に代わる音楽ジャンルを意味する「フォーク」の語が広く使われ始めたのは、この頃からだった。

 馬場葉子の解説を引用する。

 新らしいタイプの民謡を書き、そして歌い、又、ギターやハーモニカを演奏し、現代の民謡界を堂々と歩む、若手民謡歌手ボブ・ディランの、これ又自作を、ここに御紹介いたしましょう。我が国で発売されるボブのレコードは、「ホームシック・ブルース」「彼女は僕のもの」(LL-764)につづいて、これが2枚目のシングル盤です。

弘田三枝子『ヒット・キット・ミコ 第2集』

「ヒット・キット・ミコ第2集」

 1965年(昭和40年)10月20日、日本コロムビアから、弘田三枝子ヒット・キット・ミコ 第2集』Hit Kit Miko Vol. 2のLP盤(JPS-5067、1,500円)が発売された。

   ニュー・ヨークで録音された、ビリー・テイラー・トリオ(Billy Taylor Trio)伴奏の「サニー」Sunnyと「ザ・メッセージ」The Messageの2曲が収められた。

Side 1
1「恋のクンビア」Cumbia Of Love(3分02秒)
2「可愛いマリア」Would You Believe Me(That I'm In Love)(3分06秒)
3「夕陽のなぎさ」Makaha At Midnight(2分11秒)
4「サニー」Sunny(3分55秒)
5「夜の太陽」Bianca Notte(2分04秒)
Side 2
1「ほゝえみを忘れないで」With A Smile And The Memory(2分31秒)
2「」The Road(3分23秒)
3「夢みるシャンソン人形」Poupée de cire, poupée de son(3分37秒)
4「君に涙とほゝえみを」Se piangi, se ridi(2分44秒)
5「ザ・メッセージ」The Message(2分54秒)
6「愛の言葉を」Say A Prayer For Love(2分14秒)
7「太陽の海」Stessa spiaggia, stesso mare(2分15秒)

 1965年(昭和40年)12月10日、日本コロムビアから、テレビ漫画「ジャングル大帝」から三浦弘(平野忠彦、1938年3月5日~2014年6月13日)、コロムビア女声合唱団コロムビア・オーケストラジャングル大帝」(2分11秒)、弘田三枝子コロムビア女声合唱団コロムビア・オーケストラレオのうた」(1分39秒)、川久保潔(1929年11月18日~2019年4月16日)、熊倉一雄(1927年1月30日~ 2015年10月12日)、コロムビア・オーケストラディックとボゥ」(1分24秒)、真理ヨシコ(1938年12月4日~)、コロムビア女声合唱団コロムビア・オーケストラライヤのうた」(2分34秒)のシングル盤(SCS-1、300円)が発売された。

『ニューヨークのミコ:ニュー・ジャズを唄う』

「ニューヨークのミコ」

 1966年(昭和41年)1月20日、日本コロムビアから、「Stereo Top Series」、弘田三枝子(唄)、ビリー・テイラー・トリオ(Billy Taylor Trio)(伴奏)のアルバム『ニューヨークのミコニュー・ジャズを唄う』Miko in New YorkのLP盤(JPS-5072、1,500円)が発売された。
 解説は32歳の岩浪洋三(1933年5月30日~2012年10月5日)だ。

Side 1
1「ライト・ヒア・ライト・ナウ」Right Here Right Now(3分23秒)
2「サニー」Sunny(3分57秒)
3「レイジィ・ラヴィン」Lazy Lovin’(2分35秒)
4「ランブリン・ローヴァー」Ramblin' Rover(1分41秒)
5「アイム・カミン・ホーム・ベイビー」I'm Comin' Home Baby(4分32秒)
Side 2
1「アイ・ウィッシュ・アイ・ニュー」I Wish I Knew How It Would Feel To Be(5分17秒)
2「ザ・メッセージ」The Message(2分54秒)
3「フライング・ホーム」Flying Home(7分50秒)

 二つ折りジャケット内側に印刷された写真の一枚は、映画劇『聖書始まりに』The Bible: In the Beginning...の巨大広告を背にした弘田三枝子の写真だ。

弘田三枝子と「聖書」

映画劇『聖書:始まりに』のアブラハム

 1966年(昭和41年)9月28日、ローの殿堂劇場で映画劇『聖書始まりに』The Bible: In the Beginning...が公開された。
 
 音楽作曲は37歳の黛敏郎(1929年2月20日~1997年4月10日)だ。

「聖書:初めに」世界プレミア

 映画劇『聖書始まりに』は、唯一の真正な神、その教えを正しく説く教会の権威をどのような形でどれほど信じているかどうかはともかく、聖書の物語の読書教養をある程度共有していると信じられている同時代の観客向けに、わかりやすく翻案して物語られるが、日本では聖書の物語の教養は必ずしも読書教養大衆が共有する教養前提ではなかった。

 映画劇『聖書始まりに』の最後の場面は、「起源(ゲネシィス)」(Book of Genesis)第22章「イサクの燔祭」Binding of Isaacのモリヤ(Moriah)山頂の燃える茨の横で、神のいけにえにする幼い息子イサクを血のついた小刀で殺そうとするアブラハム(Abraham)に、(God)が直接語りかける場面だ。
 姿の見えない神の声は監督で、ノア(Noah)の役で出ているジョン・ヒューストゥンが演じている。
 白いあごひげをたくえわえたアブラハムは、37歳のジョージ・C・スコットゥ(George C. Scott、1927年10月18日~ 1999年9月22日)が演じた。 

子供を手にかけてはならない。今私は知ったからだ。汝は神を恐れている。汝の息子、ただ一人の息子を私から守ろうとしなかった。
Lay not thy hand upon the lad, for now I know that thou fearest God, seeing thou hast not withheld thy son, thine only son from me.

 アブラハムは涙ぐんでいる息子の額に口づけし、息子を抱きしめ、抱え上げる。息子は微笑む。荒地の中の唯一の小さな木の枝に首を挟まれ動けない雄羊が映し出される。

 抱かれながらイサクは父に「いけにえにする雄羊がいる(There is the ram for the sacrifice)」と言う。

 山頂で喜び合うアブラハムとイサクの遠景、日暮れの山並みをゆっくりと横に視点移動しながら展望する光景に神の声が重なり、女声合唱が流れる。

見よ、私は汝を炉の金属(metal in a furnace)のように試した。私は試練の炉(furnace of affliction)において汝を選んだ。今から私は汝の種を天の星と同じくらい、海辺の砂と同じくらい、数えきれないほど増やすことにする。
Behold, I have tried thee like metal in a furnace. I have chosen thee in the furnace of affliction. Now will I multiply thy seed as the stars of the heaven, and as the sand which is by the seashore, innumerable.

 遠くに炎とその傍らでいけにえを捧げる儀式に立ち会うアブラハムとイサクが小さく見える。
 やがて、太陽に代わり、空に月が上っている。
 大空を中心に山頂と月を同時に捉えた画面に「終わり(The end)」の文字が重なる。

「天地創造」ポスター

   1966年(昭和41年)10月8日、松竹会館の松竹セントラル、新宿ミラノ座、渋谷パンテオンで、映画劇『聖書始まりに』The Bible: In the Beginning...の日本語字幕スーパー版が、総天然色・立体音響、70㎜、D-150方式で『天地創造』の題名で公開された。

「天地創造」パンフ
「天地創造」サントラLP

 日本ビクターから、「映画サウンドトラック・シリーズ」第3集、作曲/黛敏郎、演奏/20世紀フォックス・スタジオ・オーケストラ天地創造』The Bible ... In The BeginningのLP盤(SJET-7866、1,750円)が発売された。
 解説は堤夏彦だ。

A面
1「メイン・テーマ」Theme From "The Bible"(3分02秒)
2「アダムの創造」The Creation Of Adam(2分35秒)
3「イブの創造」Creation Of Eve(4分14秒)
4「カインとアベル」Cain And Abel(3分50秒)
5「ノアの箱舟」Noah's Ark(4分05秒)
6「40日・40夜」40 Days And 40 Nights(3分18秒)
B面
1「新しき世界」New Beginning(5分12秒)
2「バベルの塔」Tower Of Babel(4分10秒)
3「アブラハムの愛のテーマ」Abraham (Scene Of Love)(2分11秒)
4「ソドム」Sodom(2分13秒)
5「フィナーレ」Finale(2分11秒)
6「天地創造」The Creation(8分24秒)

「天地創造」サントラEP

 日本ビクターから、20世紀フォックス映画「天地創造」サウンドトラックより、作曲/黛敏郎フランコ・フェラーラ指揮、20世紀フォックス・スタジオ・オーケストラ天地創造』の4曲入りステレオEP盤(SJET-440、500円)が発売された。
 解説は堤夏彦だ。

A面
1「メイン・テーマ」Theme From "The Bible"(3分02秒)
2「アダムの創造」The Creation Of Adam(2分35秒)
B面
1「ノアの箱舟」Noah's Ark(4分05秒)
2「バベルの塔」Tower Of Babel(4分10秒)

映画劇『偉大な生涯の物語』

 東京大学文学部宗教学科の学部生・大学院生を対象とする、2016年(平成28年)度後期学期(9月30日~2017年1月24日)の講義『聖者の表象』に基づく、2019年(令和元年)10月30日発行、四方田犬彦(1953年2月20日~)著『聖者のレッスン東京大学映画講義』(河出書房新社、本体4,800円)、第6回「イエス・キリストの映画的表象」より引用する(134頁)。

 イエスという人間そのものに焦点を当てたフィルムというのもたくさん撮られています。わたしが子供のときに観たので覚えているのは、ハリウッドのジョン・ヒューストンが『ザ・バイブル』という、その名も露骨に『聖書』という題名のフィルムを撮りました。これだと日本では何のことかわからないので、『天地創造』という題名になりました。これはステキに面白いフィルムでした。とにかく『旧約聖書』から『新約聖書』のイエスの処刑までがものすごい速さで、2時間くらいで観られます。ノアの方舟が出てきます。本当にセットを造り、撮っているんです。いろんな動物や虫、山羊、猿、2匹ずつ大きい方舟に入っていきます。それだけ観て子供のわたしは、「これはすごいフィルムだ」と思いました。

 『天地創造』The Bible: In the Beginning...は『創世記』の映画化なので、これは、『天地創造』とおそらく、イエズスの生誕から処刑、復活までを描いた、58歳のジョージスティーヴンス(George Stevens、1904年12月8日~1975年3月8日)監督の超大作映画『偉大な生涯の物語』The Greatest Story Ever Told(260分。1965年2月15日初公開)をごっちゃにした記憶違いだが、校閲は映画の内容などについては及ばなかったのだろう。
 なお、『天地創造』The Bible: In the Beginning...の上映時間は休憩時間を入れて174分なので、3時間近い。

 1962年(昭和37年)10月29日から1963年(昭和38年)7月26日にかけて撮影された、身長193㎝の33歳のマックス・フォン・スィードウ(Max von Sydow、1929年4月10日~2020年3月8日)主演の総天然色映画劇『これまでに語られた中で最も偉大な物語』The Greatest Story Ever Toldは、フルトゥン・アウアスラー(Fulton Oursler、1893年1月22日~1952年5月24日)の小説『これまでに語られた中で最も偉大な物語』The Greatest Story Ever Told(Doubleday & Company, 1949)に基づいている。

 原作の邦訳に、1951年(昭和26年)7月発行、フルトン・アワスラー著、飯島幡司(1888年~1987年)訳『偉大なる生涯たぐひなき物語』(南山大学出版部)、1955年(昭和30年)8月25日発行、フルトン・アワスラー著、飯島幡司訳『物語キリストの生涯』(甲鳥書林、270円)、1959年(昭和34年)3月発行、フルトン・アワスラー著、飯島幡司訳『偉大なる生涯』(善き牧者の運動本部、250円)がある。

 1965年(昭和40年)2月15日、ニュー・ヨーク、ブロードゥウェイのウォーナー・スィネラマ劇場(Warner Cinerama Theatre)で、映画劇『これまでに語られた中で最も偉大な物語』The Greatest Story Ever Toldが公開された。

 映画劇の公開に合わせて刊行されたアウアスラーこれまでに語られた中で最も偉大な物語』The Greatest Story Ever Toldの抄訳に、1965年(昭和40年)7月31日発行、F・アワズラー著、44歳の鮎川信夫(1920年8月23日~1986年10月17日)訳『偉大な生涯の物語』(荒地出版社)がある。
 表紙帯に「イエス・キリストの全生涯を描く!!」「近日公開の超大作シネラマの原作!!」と謳われた。

 1965年(昭和40年)9月4日、テアトル東京と大阪梅田OS劇場でシネラマ(Cinerama)の映画劇『偉大な生涯の物語』The Greatest Story Ever Toldの日本語字幕スーパー版が公開された。
 テアトル東京では1966年(昭和41年)3月31日まで209日のロング・ランだった。

 日本コロムビアから、ユナイト・シネラマ・オリジナル・サウンドトラック偉大な生涯の物語』The Greatest Story Ever Told Original Motion Picture Score by Alfred NewmanのLP盤(YS-498-UA、2,000円)が発売された。

「偉大な生涯の物語」サントラ

1面
1「ナザレのイエス」Jesus Of Nazareth (Main Theme)(3分30秒)
2「予言」A Prophecy(3分12秒)
3「荒野に呼ばわる声」A Voice In The Wilderness(4分53秒)
4「我に来たれ」Come Unto Me(2分05秒)
5「伝道の旅」The Great Journey(2分16秒)
6「奇跡」A Time Of Wonders(2分05秒)
2面
1「エルサレムへの入城」There Shall Come A Time To Enter(3分59秒)
2「新しきおきて」A New Commandment(2分51秒)
3「時はみてり」The Hour Has Come(3分13秒)
4「汝のみ羊にゆだぬ」Into Thy Hands (7分10秒)
5「聖霊の勝利」The Triumph Of The Spirit(Handel's Messiah)

 1967年(昭和42年)5月2日、STチェーンの浅草ロキシー、上野東急、池袋東急、新宿東映パラス、吉祥寺ムサシノ、川崎名画座、横浜日活シネマで、映画劇『天地創造』The Bible: In the Beginning...の日本語字幕スーパー版が拡大一斉公開された。

 1970年(昭和45年)8月28日、テアトル東京で、映画劇『天地創造』The Bible: In the Beginning...の日本語字幕スーパー版が再公開された。

 1972年(昭和47年)4月8日、テアトル東京で、映画劇『偉大な生涯の物語』The Greatest Story Ever Toldの日本語字幕スーパー版が再公開された。

 1976年(昭和51年)5月29日、テアトル東京で、映画劇『天地創造』The Bible: In the Beginning...の日本語字幕スーパー版が再公開された。

 1979年(昭和54年)6月23日、テアトル東京、新宿スカラ座、池袋劇場で、映画劇『天地創造』The Bible: In the Beginning...の日本語字幕スーパー版が再公開された。

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