フランスの移民暴動と映画劇
1969年(昭和44年)5月5日、40歳の鈴木道彦(1929年4月26日~)著『アンガージュマンの思想』(晶文社、1,200円)が刊行された。
1970年(昭和45年)2月、40歳の鈴木道彦著『政治暴力と想像力:鈴木道彦評論集』(現代評論社、700円)が刊行された。
1970年(昭和45年)、パリで、隔月刊発行のアジア、アフリカ、ラティン・アメリカの世界革命運動雑誌『三大陸』Tricontinentalフランセ語版(Maspero)2号が刊行された。
64歳のジャン・ポール・サルトゥル(Jean-Paul Sartre、1905年6月21日~1980年4月15日)「資本制諸国とその国内植民地」Les pays capitalistes et leur colonies intérieuresが収められた。
1972年(昭和47年)1月18日、パリで、66歳のサルトゥル著『情況8:1968年をめぐって』Situations VIII: Autour de 68 (Gallimard)が刊行された。
II「フランス(La France)」に、「資本制諸国とその国内植民地」Les pays capitalistes et leur colonies intérieuresを改題した「「第三世界は郊外に始まる」」« Le tiers monde commence en banlieue. »が収められた。
1974年(昭和49年)3月20日、京都で、「サルトル全集」第36巻、『シチュアシオンⅧ』(人文書院、1,600円)が刊行された。
II「フランスの問題」に、44歳の鈴木道彦訳「第三世界は郊外に始まる」が収められた。
1986年(昭和61年)12月5日から6日にかけての夜、パリで、大学改正法案に反対するデモを取り締まる共和国保安機動隊 (Compagnies républicaines de sécurité)の2名か3名の警官たちの暴力により、デモと無関係の不動産業高等学校(École supérieure des professions immobilières)の22歳の学生マリク・ウセキヌ(Malik Oussekine、1964年10月16日~1986年12月6日)が死亡した。
アルジェリ移民二世のウセキヌはローマ普遍教会の神父志望者だった。
6日から10日まで、警察に抗議するデモが連日おこなわれた。
1991年(平成3年)6月15日、飛幡祐規(たかはた・ゆうき、1956年~)著『ふだん着のパリ案内』(晶文社、税込み2,300円)が刊行された。
Ⅱ「エスニックを超えて」、6「アルジェリア系青年マリックの死」が収められた。
1993年(平成5年)4月6日、朝4時半頃、仲間2人とタバコ「ダンヒル(Dunhill)」120カートンを盗んだ窃盗常習犯のザイール出身の20区在住の17歳の黒人マコメ・ンボウォレ(Makomé M'Bowolé)が逮捕された。
同日、パリ18区のグランドゥ・キャリエール警察署(commissariat des Grandes-Carrières)で、38歳のパスカル・コンパン警部(l'inspecteur Pascal Compain)はマコメ・ンボウォレに自白を強いるため、弾が入っていない銃で脅そうとして、誤って弾の入った銃で頭部を撃ち、容疑者を死亡させた。
これに対する暴力的な抗議デモがグランドゥ・キャリエール警察署の前で3日間おこなわれた。
1993年(平成5年)11月25日、46歳の梶田孝道(1947年4月18日~2006年5月29日)編『ヨーロッパとイスラム:共存と相克のゆくえ 』(有信堂、高文社、税込み4,120円)が刊行された。
1994年(平成6年)10月、パリで、43歳のエマニュエル・トドゥ(Emmanuel Todd、1951年5月16日~)著『移民の運命:西方民主制における同化と隔離』Le Destin des Immigrés : Assimilation et ségrégation dans les démocraties occidentales(Seuil)が刊行された。
1995年(平成7年)5月27日、第48回キャンヌ多民界映画祭で、マコメ・ンボウォレ殺害事件に想を得た、パリ郊外の移民暴動を描く、27歳のマチウ・キャソヴィツ(Mathieu Kassovitz、1967年8月3日~)脚本・監督、27歳のヴァンサン・カッセル(Vincent Cassel、1966年11月23日~)、ベナン出身の23歳のユベール・クンデ(Hubert Koundé、1970年12月30日~)、ベルベル人の21歳のサイドゥ・タグマウイ(Saïd Taghmaoui、1973年7月19日~)主演の映画劇『憎しみ』La Haine(98分)が公開された。
撮影は1994年(平成6年)9月~11月におこなわれた。
カッセルが演じる、イェフディ系の白人ヴィンツ(Vinz)は、ユベール・クンデが演じるベナン系クリストス崇拝教徒のユベール(Hubert)とのトイレでの口論中、マリク・ウセキヌに言及する。
1996年(平成8年)2月15日、パリ大法院(Cour d'Assises de Paris)により、パスカル・コンパンは懲役8年の実刑判決を受けた。
1996年(平成8年)2月17日、東京・日比谷のシャンテシネ3で、映画劇『憎しみ』La Haineの日本語字幕スーパー版が公開された。
1999年(平成11年)10月24日、65歳の西川長夫(1934年5月1日~2013年10月28日)著『フランスの解体?:もうひとつの国民国家論』(人文書院、本体2,400円)が刊行された。
1999年(平成11年)11月30日、エマニュエル・トッド著、石崎晴己(1940年~)、東松秀雄訳『移民の運命:同化か隔離か』(藤原書店、本体5,800円)が刊行された。
2003年(平成15年)4月17日、「集英社新書」、ミュリエル・ジョリヴェ(Muriel Jolivet)著、鳥取絹子(1947年~)訳『移民と現代フランス:フランスは「住めば都」か』(集英社、本体880円)が刊行された。
2005年(平成17年)2月14日、動画投稿サービスYouTubeが開設された。
2005年(平成17年)10月27日、フランスのクリスィ・ス・ブワ(Clichy-sous-Boi)の変電所で、警察から逃れた移民のチュニジア系の17歳の少年ズィエドゥ・ベンナ(Zyed Benna)とマリ系の15歳の少年ブナ・トゥラオレ(Bouna Traoré)が感電死した。
これがフランス各地での移民暴動の発端となった。
2006年(平成18年)1月、月刊思想誌『現代思想』(青土社)2月臨時増刊号「総特集:フランス暴動:階級社会の行方」(税込み1,200円)が刊行された。
討議、鵜飼哲(うかい・さとし、1955年~)、平野千果子(1958年~)、森千香子(1972年~)、なすび「フランス暴動をどう見るか」が収められた。
2006年(平成18年)2月21日、44歳の陣野俊史(じんの・としふみ、1961年11月12日~)著『フランス暴動 : 移民法とラップ・フランセ』(河出書房新社、本体1,200円)が刊行された。
2006年(平成18年)10月9日、70歳のダニエル・ユイエ(Danièle Huillet、1936年5月1日~2006年10月9日)が亡くなった。
2006年(平成18年)10月13日、ローベルト・ロッセッリーニ(Roberto Rossellini、1906年5月8日~1977年6月4日)生誕百周年を記念し、1951年11月から撮影された、45歳のロッセッリーニ監督、36歳のイングリッドゥ・バリイマン(Ingrid Bergman、1915年8月29日~1982年8月29日)主演の映画劇『欧州1951年』Europa ’51(118分)の続篇として、クリスィ・ス・ブワ(Clichy-sous-Boi)の変電所で撮影された、69歳のダニエル・ユイエと73歳のジャン・マリ・ストゥローブ(Jean-Marie Straub、1933年1月8日~2022年11月20日)監督の政治宣伝映画『欧州2005年10月27日』Europa 2005 - 27 October(10分30秒)が公開された。
撮影は2006年(平成18年)春におこなわれた。
2006年(平成18年)10月19日、YouTubeのcinetractstraubチャンネル名義で『欧州2005年10月27日』Europa 2005 - 27 Octoberが公開された。
2006年(平成18年)10月25日、及川健二(1980年~)著『沸騰するフランス:暴動・極右・学生デモ・ジダンの頭突き』(花伝社、共栄書房、1,700円)が刊行された。
対談、47歳の宮台真司(1959年3月3日~)×及川健二「フランス流多様性の衝撃力」を収めた。
2006年(平成18年)11月7日~17日、11月28日~12月9日、東京・千代田区のアテネ・フランセ文化センターで特集上映「ストローブ=ユイレの軌跡 1962-2006」が催された。
2006年(平成18年)11月28日、66歳の宮島喬(1940年10月19日 ~)著『移民社会フランスの危機』(岩波書店、2,800円)が刊行された。
2006年(平成18年)12月9日、アテネ・フランセ文化センターで、49歳の浅田彰(1957年3月23日~)の講演「映画作家ストローブ=ユイレ44年:ダニエル・ユイレ監督を追悼して」がおこなわれた。
講演の最後に『ヨーロッパ2005年10月27日』Europa 2005 - 27 Octoberが上映された。
2008年(平成20年)5月1日~6日、有楽町朝日ホールで、「イタリア映画祭2008」が催された。
2008年(平成20年)5月2日、15時55分から、および5月4日、13時20分から、『ヨーロッパ2005年、10月27日』Europa 2005 - 27 Octoberと2005年(平成17年)の春から夏にかけて撮影された、74歳のエルマンノ・オルミ(Ermanno Olmi、1931年7月24日~2018年5月7日)監督の映画劇『百本の釘』Centochiodi(92分。2007年3月20日公開)の吉岡芳子訳の日本語字幕スーパー版が上映された。
2008年(平成20年)6月20日、山本三春(1959年~)著『フランス ジュネスの反乱:主張し行動する若者たち』(大月書店、本体2,000円)が刊行された。
2009年(平成21年)6月18日、68歳の宮島喬編『移民の社会的統合と排除:問われるフランス的平等』(東京大学出版会、本体3,800円)が刊行された。
2009年(平成21年)8月1日、東京・神保町の岩波ホールで、映画劇『ポー川のひかり』Centochiodiの吉岡芳子訳の日本語字幕スーパー版が公開された。
2012年(平成24年)6月22日、「現代社会研究叢書」7、71歳の宮島喬、50歳の吉村真子(1961年12月21日~)編著『移民・マイノリティと変容する世界』(法政大学出版局、本体4,180円)が刊行された。
2015年(平成27年)1月7日、11時30分、パリの週刊風刺新聞『シャルリ・エブド(Charlie Hebdo)』の本社にイスラーム過激派テロリストが乱入し、編集長、風刺漫画家、コラムニスト、警察官ら合わせて12人を殺害した。
このテロリズムに抗議し、表現の自由を訴えるデモがフランスおよび世界各地で起こった。
2016年(平成28年)1月20日、「文春新書」、64歳のエマニュエル・トッド著、63歳の堀茂樹(1952年1月29日~)訳『シャルリとは誰か?:人種差別と没落する西欧』(文藝春秋、本体920円)が刊行された。
2016年(平成28年)2月1日、「ポプラ新書」、51歳の増田ユリヤ(1964年7月27日~)著『揺れる移民大国フランス:難民政策と欧州の未来』(ポプラ社、本体780円)が刊行された。
2016年(平成28年)2月27日、75歳の宮島喬著『現代ヨーロッパと移民問題の原点:1970、80年代、開かれたシティズンシップの生成と試練』(明石書店、本体3,200円)が刊行された。
2016年(平成28年)3月25日、森千香子著『排除と抵抗の郊外:フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(東京大學出版会、本体4,600円)が刊行された。
2017年(平成29年)3月4日、獨協大学オープンカレッジ特別講座、87歳の鈴木道彦の講演「サルトルと現代:来日五〇周年にあたって」を、2018年(平成30年)3月10日発行、鈴木道彦著『余白の声:文学・サルトル・在日――鈴木道彦講演集』(閏月社、本体1,800円)より引用する(207~209頁)。
2017年(平成29年)5月4日、ランドゥンで、37歳のダグラス・マリー(Douglas Murray、1979年7月16日~)著『欧州の奇妙な死:移住、属性、服従教』The Strange Death of Europe: Immigration, Identity, Islam (Bloomsbury Publishing)が刊行された。
2017年(平成29年)8月20日、76歳の宮島喬著『フランスを問う:国民、市民、移民』(人文書院、本体2,800円)が刊行された。
2018年(平成30年)2月20日、「新潮新書」、41歳の飯山陽(いいやま・あかり、1976年2月7日~)著『イスラム教の論理』(新潮社、本体780円)が刊行された。
2018年(平成30年)10月10日、89歳の鈴木道彦著『私の1968年』(閏月社、本体2,800円)が刊行された。
2018年(平成30年)12月14日、ダグラス・マレー著、47歳の中野剛志(なかの・たけし、1971年10月25日 ~)解説、町田敦夫訳『西洋の自死:移民・アイデンティティ・イスラム』(東洋経済新報社、本体2,800円)が刊行された。
2019年(令和元年)5月15日、第72回キャンヌ多民界映画祭で、マリ共和国出身の38歳の黒人のラジ・リ(Ladj Ly、1980年3月19日~)脚本・監督の映画劇『極貧民』Les Misérables(103分)が先行公開された。
撮影は2018年(平成30年)夏にクリスィ・ス・ブワ(Clichy-sous-Boi)とモンフェルメイユ(Montfermeil)でおこなわれた。
2019年(令和元年)11月26日、「河出新書」、43歳の飯山陽著『イスラム2.0: SNSが変えた1400年の宗教観』(河出書房新社、本体880円)が刊行された。
2020年(令和2年)2月20日、新宿武蔵野館、渋谷のBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかで、映画劇『レ・ミゼラブル』Les Misérablesの日本語字幕スーパー版が公開された。
2020年(令和2年)6月17日、「集英社新書」、鳥井一平(1953年~)著『国家と移民:外国人労働者と日本の未来』(集英社、本体860円)が刊行された。
2021年(令和3年)2月22日、80歳の宮島喬著『多文化共生の社会への条件:日本とヨーロッパ、移民政策を問いなおす』(東京大学出版会、本体3,500円)が刊行された。
2021年(令和3年)3月1日、「扶桑社新書」、45歳の飯山陽著『イスラム教再考:18億人が信仰する世界宗教の実相』(扶桑社、本体880円)が刊行された。
2021年(令和3年)3月28日、中井遼(1983年~)著『欧州の排外主義とナショナリズム:調査から見る世論の本質』(新泉社、本体2,800円)が刊行された。
2022年(令和4年)5月11日、ディズニープラス(Disney+)で、マリク・ウセキヌ事件を描く、アントゥワヌ・シュヴロリエ(Antoine Chevrollier、1982年~)演出、 サイードゥ・エル・アラミ(Sayyid El Alami)主演の連続動画劇『パリ1986』Oussekine全4話(61分、53分、53分、63分)が配信された。
撮影は2021年(令和3年)5月半ばから7月にかけてパリ郊外でおこなわれた。
2022年(令和4年)5月23日、第75回キャンヌ多民界映画祭で、マリク・ウセキヌ事件を描く、アルジェリア系フランセ人の68歳のラシドゥ・ブシャレブ(Rachid Bouchareb、1953年9月1日~)監督の映画劇『私たちの兄弟たち』Nos Frangins(92分)が先行公開された。
アルジェリ系フランセ人の44歳のレダ・カテブ(Reda Kateb、1977年1月15日~)がマリクの兄モハメドゥ(Mohamed)、アルジェリ系フランセーズ人の29歳のリナ・クドゥリ(Lyna Khoudri、1992年10月3日~)がマリクの姉サラ(Sarah)、アルジェリ系フランセ人の20歳のアダム・アマラ(Adam Amara、2001年4月8日~)がマリクを演じた。
撮影はボルド(Bordeaux)で2021年(令和3年)11月~12月におこなわれた。
撮影監督は ギヨム・デフォンテヌ(Guillaume Deffontaines、1968年~)だ。
2022年(令和4年)9月9日、第79回ヴェネーツィア多民界映画芸術祭で、40歳のロマン・ギャヴラス(Romain Gavras、1981年7月4日~)、42歳のラジ・リ、33歳のエリアス・ベルケダール(Elias Belkeddar、1988年3月13日~)脚本、ギャヴラス監督のフランスの新都市の黒人暴動を描く映画劇『アテナ』Athena(99分)が先行公開された。
撮影は2021年(令和3年)夏に、主にエヴリ・クルコロンヌ(Évry-Courcouronnes)の1968年~1971年に造成された集合住宅区パルク・オ・リエーヴル(Parc aux Lièvres)でおこなわれた。
2022年(令和4年)9月23日、Netflixで、映画劇『アテナ』Athenaが配信された。
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