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#428 「三菱重工業事件」東京地裁(再掲)

2017年1月11日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第428号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【三菱重工業(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2016年1月26日)

▽ <主な争点>
現住所から通勤できる職場を求め復職を拒否した労働者に対する解雇など

1.事件の概要は?

本件は、M社に雇用され愛知県内の事業所(原職場)で勤務していたXが私傷病による欠勤の後、復職には同居の家族の支援が不可欠であるとして埼玉県内の現住所から勤務可能な場所での復職を求めたのに対し、同社から原職場での復職を命じられたため出社を拒否したところ、解雇されたとして(本件解雇)、M社に対し、本件解雇が解雇権の濫用により無効であることに基づき、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、同社から就労開始可能と判断された平成25年9月1日以降の給与として同年10月から本判決確定に至るまで、毎月22万3500円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<M社、名古屋製作所およびXについて>

★ M社は、船舶、発電プラント、環境装置、産業用機械、航空・宇宙機器、エアコン等の製造・販売・エンジニアリング等を業とする会社である。

★ 名古屋航空宇宙システム製作所(以下「名古屋製作所」という)は、M社の事業所の一つとして航空機・宇宙機器等の製造・修理および販売の事業を所管し、小牧南工場などがこれに所属していた。

★ Xは、平成16年4月、職種を技能職に特定して期間を定めずに採用されたM社の社員であり、名古屋製作所小牧南工場に勤務していた者である。

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<M社の社員就業規則の定めについて>

★ M社の社員就業規則には以下の事由が解雇事由とされている。

 精神もしくは身体に故障があり、またはその他の理由により業務に従事させることが不適当なとき(同規則73条1項1号)
 業務によらない負傷または疾病のため、連続して欠勤した日数(休日を含む)が33ヵ月を超えたとき(同規則73条1項2号)
 前各号のほかやむを得ない事由があるとき(同規則73条1項5号)

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<Xの私傷病欠勤から本件解雇に至った経緯等について>

▼ Xは平成23年1月当時、名古屋製作所小牧南工場製造部(以下「原職場」という)で勤務していたところ、同月11日以降、私傷病欠勤を開始した。

★ Xの欠勤開始後、主治医の診断書(診断名「自律神経失調症」・「適応障害」)がM社に提出され、さらに産業医の情報提供依頼に応じて、23年2月、主治医から医療情報の回答が届き、診断名「適応障害(アスペルガー障害疑い)」とされていた。

▼ Xは欠勤開始の当初は愛知県内の自宅に妻と同居していたが、23年2月初旬、実家のある埼玉県加須市内に転居し、さらに25年2月、父母と一緒に同県越谷市内の現住所に転居した。

▼ Xは23年12月から24年3月までの間、病院に医療保護入院し、同病院の主治医から「統合失調症」と診断された。また、Xは他人との意思疎通ができず、自己の財産管理もできなかったため、24年4月、さいたま家庭裁判所久喜出張所において、後見開始の審判を受け、成年後見人として実母のAが選任された。

▼ Xは退院後、徐々に回復に向かい、25年6月頃、主治医から就労上問題がない程度まで回復しているとの見解が示されたため、名古屋製作所に復職を申請した。そこで、産業医はXの職場復帰支援に必要な情報を得るため、主治医に「職場復帰支援に関する情報提供依頼書」を用いて照会した。主治医は就業条件として「週5日8時間勤務で残業時間なし、内容はストレスがかからない程度の軽度なものが望ましい」と記入した。

▼ 同年8月、名古屋製作所はXに対し、原職場において同年9月1日以降短時間勤務の開始を可とすることおよび短時間勤務に当たり勤務地を変更しない旨伝えたところ、Xはこれに応じなかった。

▼ 同年10月、名古屋製作所はXに対し、復職命令にしたがうよう重ねて通知し、併せて命令にしたがわない場合は重大な業務命令違反として就業規則に基づき必要な措置をとらざるを得ない旨伝えた。

▼ M社は25年11月、Xに対し、短時間勤務の復職命令を拒否し続けることは重大な業務命令違反であり、かつその欠勤が病気欠勤開始から通算して33ヵ月を超えていることから、社員として適格性を著しく欠くため、社員就業規則73条1項1号・5号の解雇事由に該当するとして、同年12月20日をもって解雇する旨、内容証明郵便にて意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

3.元社員Xの主な言い分は?

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