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「不登校」から多彩な「ホームスクーリング」や「ディタンスラーニング」の選択へ

こんにちは。今日は、発達障害の子供を持つ母として、一教師として、通学しない学習形態について思うことを記します。

◆「不登校」と「ホームスクーリング」の響きの違い

日本語で、義務教育期間中の「登校拒否」や「不登校」というと、そこにネガティブな響きが含まれてしまいがちです。実際に、登校拒否や不登校になる時というのは、少なくとも日本社会においては、学生が辛い経験をした場合が多いかと思います。その意味では「不登校」と聞くと、思わず心配してしまうのも、致し方ないのかもしれません。

ですが、それは不登校の原因であって、結果ではありません。

ホームスクーリングという言葉、日本でも少しずつ浸透しているようですが、それは、通学せずに家庭を拠点にして教育を行う形態を指します。アメリカではホームスクーラーが年々増加。古くはエジソン、最近では歌手のビリー・アイリッシュもホームスクールで育ったことが知られています。日本では、今は法的には認められていないのですが、実は1890~1941年まで家庭学習により就学義務が果たされることが認められており、興味深いです。

「ホームスクーリング」というカテゴリーの響きは、「不登校」や「登校拒否」、といった言葉の響きと異なります。

私の住むオーストラリアにおいては、「ホームスクーリング」が教育の一形態として法的に認められており、その数は増加傾向にあります。選択する理由は様々ですが、学校に行きたくないという消極的理由のみならず、思想上、宗教上、教育方針上の積極的理由から選択されることもしばしばあるのです。

◆ホームスクーリングの形態

ホームスクーリングは単に学校に行かず家で勉強するということでは決してありません。

例えばビクトリア州では、保護者が公的にホームスクーリングの登録をすると、2020年現在、8分野の学習計画を提出する必要があります。計画に沿って教育が遂行されているかどうかは、第三機関によりランダムに年一度10%程度の児童がチェックされます。(実際には、登録をせずにホームスクーリングしているケースもあります。)

ホームスクーリングの特徴は、学習内容の自由度です。親が教える場合もあれば、自主勉強を中心とする場合、eラーニングを活用する場合、家庭教師を雇う場合もあります。どのようにソーシャル・スキルを身につけるのかも、自由です。ビクトリア州では、部分的に通学タイプの学校に登録することも許されています。

◆ディスタンス・ラーニングという選択肢

通学は選択したくないが、ホームスクーリングの完全な自由度には不安がある、という場合には、ディスタンス・ラーニングという選択肢もあります。

属性としては既存の教育機関に所属しつつ、その機関が提供する学修プランに沿いながら、学習形態をリモートにするのです。通学とホームラーニングの中間のような形態ですね。日本社会で浸透している高校の通信もディスタンス・ラーニングに類似した側面があります。

最近では、海外でも、日本国内でも、オンラインで卒業できる大学も浸透してきています。eラーニングの普及により、ディスタンス・ラーニングの選択肢は今後ますます増加するものと思われます。

◆通学しないことの是非

ホームスクーリングの良し悪しの議論は特に欧米圏で喧しいですが、絶対的な物差しで語ることは危険だと思います。子供の個性、家庭環境、社会の地域特性などにより、メリットやデメリットも大きく異なってくるからです。

関連する論文を読むときには、サンプル数、調査対象の選択方法、ソーシャル・スキルやアカデミック・スキルの定義と審査方法を確認し、明らかにできていることとできてないことを見極めないといけないな、とザッピングしていて思いました。ほぼ今のところ欧米圏でようやく数が溜まってきた調査結果を、そのまま日本社会にもスライドしうるだろうと考えることにも難があります。

しかし、相対的には、ホームスクーリングやディスタンスラーニングの選択をサポートし、育った子供が活躍できる環境を社会的に整えるのは、好ましいことと思います。どの学校がいいか、どの形態がいいかではなく、どの学校形態が一人一人の子供にとって合うのか、建設的に考えられるようにするために。

自閉症スペクトラムの子供は社交不安を伴うことも多く、学校に行けなくなってしまった、と悩む保護者のブログなどを多く目にしてきました。4歳の娘の場合、心理士さんや幼稚園の先生、夫とも相談し、現時点では通学を考えて学校探しをしていますが、その後どうなるか、全く未知の世界です。しかし、学校に行けなくなってしまっても、ホームスクーリングやディスタンスラーニングの制度があるのだから、それで頑張ろう、という余地は自分の選択肢の中で保持することができています。

発達障害がなくても、いじめによって、またはHSCであるために、通学が辛くなってしまう子供もいます。私自身、アルバイト講師も含め、小・中・高・大学生まで幅広い年代の生徒たちを見てきましたが、勉強は嫌いじゃないけども「集団の授業」にどうしても馴染めない子供たちが一定数以上いました。

そうした場合、ホームスクーリングやディスタンスラーニングという考え方が社会的に浸透すると、「地獄のような学校に戻る」か「学校に行けなかったという負い目を背負う」という苦渋の選択に挟まれてもがき続けなくてもいい、第三の選択の可能性をより肯定的に後押しします。

もちろん、既にオルタナティブ教育などに興味のある保護者の方にとってははじめから積極的な選択となり得ますが、寧ろ、「学校に行くのが当たり前」という意識が浸透している層に、こうした考えが柔らかく届けばと願います。

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