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10年間御守デザイナーをやってみてわかったこと。#06絵馬の話

神社仏閣の世界でお守のデザインをしてきた私ことりいなが、
神社仏閣とデザイナーの関わりについて、自分自身の記録として綴っているこのマガジン。
#05神社仏閣の世界でお守のデザインをしてきた私ことりいなが
神社仏閣とデザイナーの関わりについて、自分自身の記録として綴っているこのマガジン。

お久しぶりになってしまいました。
#06は絵馬の話です

絵馬、ご存知ですか?仕事を始めるまでは書いた事も存在も知りませんでした。

絵馬の成り立ちを簡単にご紹介しますと、建物を建てる時や厄年のお払いなどでご祈祷をしたことのある方はイメージが湧くかもしれませんが、祭事には供物が必要です。
祭壇の手前に、山の物(キノコなど)・海の物(魚など)・根の物/葉の物/実の物(野菜・果物)・米・花・酒などをよく捧げます。
これは神様への感謝を捧げる行為です。

例えば、稲穂が無事実り収穫した時など。人間の力だけではどうしようもない事が多い、災害の多い日本での大昔からの風習です。そして収穫の感謝だけではなく、種まき前などスタート地点でも神頼みをしました。
豊作になりますように。
大漁でありますように。
無事でありますように。
戦で勝ちますように。
繁盛しますように………

その時にも供物を捧げて祈ります。

さて、創作や歴史小説などで目にする事もあるでしょう「人柱」。
これも供物でした。人間を神様の嫁や使用人などという名前で捧げます。
古墳などにも埋められたり…歴史は時に酷い事も教えてくれます。
それだけ願いが大きく、対価も大きく!と考えたのか。Kamiがお嫁さん欲しいと言ったのか定かではありませんが、事実として人間を捧げたこともあったそうですね。
その人間を捧げるの、コスパ悪いから辞めようと言い、代替品が誕生しました。
埴輪です。
古墳に人間埋めるのを辞めて土器で作った埴輪を使用するようになりました。(発明したのは土師氏といって、子孫が浅草神社の御祭神です)


代替品、これは馬でも同様の事がありました。

馬は神様の移動手段であり、馬自体の霊力が高いとされています。
特に水の神様は馬が好きで馬を捧げると雨乞いの成功率が上がるなどもあり供物としても捧げられていましたが、やはりコスパが悪いので辞めようとなり
→じゃぁ絵を描こう

板を神馬舎(馬小屋)の形にして、馬を描き、捧げました。

捧げることを奉納といいます。

ちなみに、この時の願い事というのは国家プロジェクト並みの大きな願い事で、個人の願い事ではありませんでしたが、絵馬になった事もあったからか、次第に個人的な願い事で奉納するようになります。

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今では1番簡単な奉納アイテムと言えます。
賽銭箱前での一瞬のお願いよりも書いた内容がずっと残る絵馬はちょっとお得な気がします。
神社やお寺で絵馬を見かけた時は絵柄の意味を考えてみてください。
何でもOKな馬や宝船、干支。御祭神の絵姿。歴史や伝承に則った絵。
願い事に合わせた絵。
様々であり個性的で面白いです。



話は変わりますが、
あなたは絵馬屋さんをご存知ですか?

現代では絵馬を奉納しようと思ったら神社やお寺で販売されていますが、本来の形としては各自で用意していました。
ただし、絵心無いよー、画材無いよーなど様々な理由で絵馬の用意が難しい人も多かった事や、この神様にはこの絵がいい!などの噂などもあり、絵馬を販売してくれるお店がありました。それが絵馬屋です。
今でも絵馬屋さんや絵馬師さんがいます。手書きの素晴らしい絵馬でビックリします。

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東京都足立区の吉田絵馬屋さん

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絵馬師岩田氏

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文化財になっている絵馬などなど



こういう手書きものの中に、面白いものがあります。
算学絵馬です。

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算額は数学の問題が書かれた絵馬で、江戸時代になってから、神社仏閣に奉納されるようになりました。美しい図形を扱った問題が多く、ほとんどが彩色されています。現存するもので一番古い算額は、栃木県佐野市の星宮神社に天和3年(1683)に奉納されたものです。しかし、この算額は1975年に火災に遭って判読出来なくなり、現在は複製が掲げられています。次に古いとされるのは京都八坂神社に元禄4年(1691)に奉納されたもので、1993年には国の重要文化財に指定されました。算額の風習は江戸時代には非常に盛んであったそうで、明治時代まで続きました。
https://www.ndl.go.jp/math/s1/c5.html
江戸の数学

【江戸時代の農民が微分積分を解いていた】などという話を聞いたことがありますが、それはこの算学絵馬として奉納され、解答が奉納されていたからだそうです。正確には微分積分ではなく微分積分と同様の和算なんだそうですが、江戸時代の寺子屋って頭いいんだなぁとバカみたいな感想を抱いた覚えがあります。

今でもこの算学絵馬はあって

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日本数学検定が東大寺に奉納していたり

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日本橋の福徳神社に奉納されていたり


他にもまだまだ残っている文化です。
全国の学業の神社・お寺の方々。合格祈願の算学絵馬を作りませんか?





次回は破魔矢・鏑矢についてです。
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