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みんなのフォトギャラリー繋がりnote

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みんなのフォトギャラリーで使って頂き ご縁が広がり繋がったnoteを集めてます。 私がUPしている画像は、「leche」または「むかいだ」「ナツコ」で検索できるようにしています。…
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#短編小説

【連作】クリームパンの問い

『来ないはずの明日』→『食文化』→『リア充失敗』→『バーター』→『親愛なる、いちごジャムパン』→『被害妄想』→(本記事) 「『知らない』より『知っている』方が幸福なことって、なーんだ?」  唐突に謎々じみた問いを投げられて、私は朝食兼昼食のクリームパンに齧り付こうと大口を開けた状態で一時停止した。私から先生へ質問する事は多々あるが、その逆は大変珍しいことである。況してや謎々なんて、珍事中の珍事だ。  何故、突然謎々を? 「『知らない』より『知っている』方が幸福なこと」とは

掌編小説071(お題:付箋が足りない)

想いが日々募るばかりなので、あるとき、ミルクのように甘やかな白の便箋に克明に残る黒のインクで僕はきみの愛しいところを書きつけた。無垢の上に隙間なくしたたる生真面目な愛を気恥ずかしくも感じながら、それを町のポストへ投函する。 スコンと呑みこまれていった手紙の感触が消えぬうちに、鳥たちがさえずる朝、きみから一通の手紙が届く。 さっきの手紙のご用事、なあに? 生真面目な愛が溶けたミルクはどんな味がするのだろう。僕はきみの舌先にまだ残るその味を想像しながら、先のそれと寸分違わぬ

【交換小説】#自家製 1

この時期はジャムを作ることにしています。一年分を作ります。紅茶と一緒に飲むためのジャムなので、可能な限り甘くします。市販のジャムは甘さ控えめを謳うものばかりで物足りないのです。外国産には甘いものもありますが、いかんせん少量で高いうえに売っている店も限られるので、自分で作ったほうが早いのです。 そんなわけで今年もイチゴを手に入れました。近くのスーパーで二パック五百円。探せば四百円を切るものもありますが、時節柄、動き回るのも気が引けるのでよしとします。とりあえず六パック買いまし

繋ぐもの

 橋の上では川のせせらぎが耳に心地よく、美しい新緑に癒されていた私のそばで、父上は意を決したように私の名を呼んだ。 「これをお前にわたす時が来た」  私が振り向くと、父上は懐から細長い藍色の箱を取り出した。そばに立っていた家来がすかさず父上のそばに歩み寄る。彼は父上から藍色の箱を受け取り、私に中身が見えるように開けた。  私は息を呑んだ。それは我々王族に代々受け継がれる翡翠の首飾りだった。 「父上、これは」 「そろそろだと思っていたのだ」  いつかやってくるこのときを、私は待

音のないふたり

「そのネックレス」と同僚がふと切り出したので顔を上げた。 二画面あるパソコンには数字がずらりと並んでいる。その向こうの同僚とぱちりと目が合うと、彼女は薄い笑みを浮かべてとんとんと自身の首元を指したように見えた。 「かわいいね。新しい?」 「はい。よく気付きましたね」 「なあに。彼氏から?」 「いえ。ボーナスも出たし、自分で」 「なるほど」 彼女に薄っすらと笑顔を返し、ペンダントトップを触る。 彼と先週お別れをした。 しばらく付き合っていったんすれ違いで別れたもの

殺人依頼の手紙

D様へ はじめてお手紙差し上げます。 三浦美幸と申します。 D様のお噂はよく聞いております。 このたびはお頼みがあってお手紙差し上げることとなりました。 その前につまらないでしょうが、少しわたしの話をお聞き願います。 わたしは小学生の頃、 「協調性がない」と先生によく言われました。 どうも、協調性というのは人間が人間であるための条件であって、 そして、生まれつきの能力だったようなんです。 わたしは人間にはなれませんでした。 わたしは人間ではなかったようでし

手紙を書くよ

樋口には文通相手が居る。淡野という四十代半ばの同性だ。元々は樋口が通う大学に特別講師として招かれたエッセイストで、文筆業を志す者として猛アピールした末に、何故だか文通を始めることになったのだった。令和の時代に手紙を書くなどというまどろっこしいコミュニケーションを取りたがる人間は居ないと踏んだのかもしれない。樋口は諦めずに食らいついていったのだが、淡野は筆まめで月曜日の昼に投函した手紙の返信が週末には届く。 土日に書いた手紙を月曜日に出して、金曜日の夜に返信を読む。煙草を嗜む

短編 「とってもブラッド、すっごくフェイト」  前編

1  幕が上がる。  傾いた月を背景に、深く影の差し込むビルの谷間。  それは、たった一つの夜の過ち。突然起こった、夜のアクシデント。出会ってしまったことが不運なのか、いいえ、私という存在があなたにとっての不幸。夜の女王にかしずく者は皆、全て私の仇。容赦はしない。斬り捨てた。  ほんの一瞬の撹乱と情熱。嗚呼、ほとばしる熱い血潮。男が身に纏うダークスーツは一瞬で染まる。彼らは夜を着る。ならば、私は夜を斬る。例え、私の手にあるものが、とても小さな果物ナイフだったとしても、まし

短編 「とってもブラッド、すっごくフェイト」 後編

5  ゆっくりとスープを飲み下す。舌を動かし、喉を開き、ようやく嚥下した。身体の動かし方を意識しないことには、日常生活も危ういくらいに、私の生命は衰えていた。多少、良くはなったけれど、スプーンを運ぶ手も少し辛い。  日に五回も六回も、控えめの食事をとる。それを素直に食べる私も私だが、律儀に作るキハチもキハチだ。奇妙な関係。ただ古書店に迷い込んだ私と、それを看病する店主。私はキハチに怪訝でありつつも、生きるために仕方なく、、餌付けされていた。  キハチは私に食事を届ける以外は

【短編小説】夢語りのアリス【童話コスメ原作】

株式会社ワークワークさまの童話コスメ新作に原作として参加しました! こちらはコスメに添えられるストーリーです。→【ワークワークさまHP】 テーマは、「不思議の国のアリスのその後」。 なんと、アリスは普通の女の子として日本にいて……? えっ、それってどういうこと? 気になったら読んでみてくださいね。 コスメが気になる方は、是非ワークワークさまのSNSやHPをチェックしてください! 先行予約&記念書籍発行プロジェクトとして、クラウドファンディングも企画されていますよ。→【限

有料
200

【連載小説】何も起こらない探偵事務所 #2

「ああ~~いいにおいする、ご飯作ってるの、みはる」 からんころん、古い扉につけたベルが鳴り、のんびりした砂倉の声が響く。 ここは細長いスナックの居抜き物件。 汚くも楽しい、さくらと僕の探偵事務所だ。 僕は小さな台所で湯を沸かしながら言う。 「うん、チョコレートラーメン。もうできるからそこに座って? さくら」 すぐにカウンターの向こう側に肌色の男が座り、僕は顔を上げた。 視線の先には従兄弟の砂倉渓一がにこにこ笑っている。 いつもどおりの美男子だけど、全裸だ。 「な

あいうえおnote【あ】

「お姉さん、チョコレート落としましたよ」 新幹線を降りて地元駅の改札を抜けると、アーモンドチョコを持った男にナンパされた。 アーモンドチョコ 「...いえそれ私のじゃないです」 「え、違いました?じゃああげますよ〜」 「いや誰のかわからないチョコレートもらえないでしょ!てか何してるのお兄ちゃん!」 「つれないな〜お前は」 兄はチョコの箱をカラカラと鳴らし、楽しそうに笑う。どうやら迎えに来てくれたらしい。 「おかえり、陽菜」 「ただいま!お兄ちゃんお迎えありがとう」

愛と秘密と。

ねぇ、愛してよ。 なんどもそんな言葉をひっこめる。 愛はとっても深いから。愛はすごく重いから。 愛してなんて簡単に言えない。 でも何十回も何百回も好きって言ったら、もしかしたら愛してくれるかも。 そんなこと思うくせに私だって言えないんだけどね。愛してるって。 愛されたがりな私。 でも愛されるってすごく難しい。 ねぇ、名前は何? 秘密だよ。君は? 秘密だよ。 仕事は何? それも秘密。君は? 私も秘密。 趣味は? 映画鑑賞かな。君は? うん。私も映