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「学び」をデザインする、ラーニングデザイナーという仕事

ラーニングデザイナーの仕事とは

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ラーニングデザイナーという仕事を聞いたことがあるだろうか。

私は今の会社に入社するまで知らなかった。というか、自分の名刺をもらって初めて「あ、私はラーニングデザイナーになったのか」と知った。

ラーニングデザイン、つまり「学びをデザインする」というこの仕事は、海外では「インストラクショナルデザイナー(教育設計)」とも呼ばれるらしい。

主な仕事内容は、

・eラーニング教材をはじめとした学習コンテンツのデザイン、制作

・より効果的に学べるシステムや環境の構築

といったところだ。

例えば、英語学習用の単語帳アプリの開発、紙ベースで行っていた研修内容のデータ化(パワーポイントや動画を利用する場合が多い)、オンラインでできるクイズの作成など。

取引先は学校が多いかと思いきや、実際は一般企業が半数以上で、企業内の人材育成や研修に使用されることが多い。

こんなご時世なので、今後はよりeラーニング、つまりwebベースでの勉強方法が求められることは間違いない、割と需要のある仕事ともいえる。

ラーニングデザイナーに求められること

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私は元々保育専門学校の出で、保育士資格は取得したものの保育士にはならず、旅行会社に就職して自社WEBサイトの管理やバナー・ページ制作をしていた。

学生のころから教育関係に興味あったし、運よく入社した最初の会社でデザインという世界に入ったので、「教育」と「デザイン」の両方に関われるラーニングデザインという仕事はドンピシャだった。

しかし、デザイナーという肩書きにあるように、いわゆるデザインのイメージ…絵を描いたり、webページであればおしゃれでかっこいいページを作ったりする、というだけではやっていけない仕事だと入社2年目にしてひしひしと感じている。

個人的に思うラーニングデザイナーに必要なスキルは、

・「学習者」が効率的に学べるインタラクティブなデザインの開発

・Web、グラフィック両方のデザインスキル

・スマホをメインとしたアプリのUI/UXデザインの知識

・「学習記録」をデータ化し「教育者」側が管理できる仕組みをつくるコーディング、プログラミングスキル

・教育者が伝えたい(教えたい)ことをくみ取る読解力

この5つが主なスキルだと思う。

1つずつ順に考えていこう。


【インタラクティブなデザインの開発】

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そもそも勉強が好き!という人は少数派であり、大体は「強制的にやらされる」状況であることが多い。

学習者に合わせて最適な学習方法を設計するのがラーニングデザイナーであり、私たちは「学習内容」を提供するのではなく、「どう学ぶか」という学習方法の提供をするのが仕事。

専門的知識をもった教授や先生と言われる人から「文字だけの論文のような原稿」をもらってスタートすることが多く、その長々とした殺風景な文章をいかに「飽きずに」時には「楽しく、興味がわくような」教材にできるかが腕の見せ所だ。

学習者が学生なのであれば、ゲーム感覚でできるようにキャラクターを登場させたり、正答率に応じてポイントが獲得できるようにするし、

学習者が割と年齢層が高めなら、ゲーム要素よりは操作が簡単でスマホでもPCでも見やすいよう文字の大きさ・配色を調整したりと、ユーザーに合わせた工夫を考えるのが難しいところでもあり、やりがいがある。

「勉強は嫌だったけど、やってみたら為になったな」とか、

「楽しく学べたので、もっと勉強してみようかな」と思ってもらえる教材を提供したいところである。

また、インタラクティブという言葉には「双方向に情報をやり取りする」という意味があるように、学習者に一方的に情報を流し込むような教材ではなく、学習者自らが興味をもって学び、インプットした知識を実際の仕事や生活にアウトプットできる機会を提供する、というのも忘れてはならない。


【WEBとグラフィック、2つのデザインスキル】

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【スマホをメインとしたアプリのUI/UXデザインの知識】

eラーニングはweb上での学習がメインとはいうものの、いまだにPDF資料が必要だったり、紙のマニュアル資料作成といった仕事も「教材制作」の1つとして請ける。

また、最近非常に多い「パワーポイントを使った教材」だが、パワポはwebのようにコーディングしてデザインするのではなく、パワポのスライド上で文字のフォントや大きさ、配色、レイアウトを1つ1つ考えていくので、グラフィック要素が強いように思う。

もちろんアプリやweb上でのクイズ画面のデザインや、ユーザーにできる限りストレスを感じさせないUI/UXデザインは、基本的なHTMLとCSSができないと作れない。

WEBとグラフィック両方のデザインスキルが求められるのだ。

使用するソフトも多岐にわたり、パワポやイラレ、Adobe XD、アニメーション制作が必要ならAnimate、実写画像の編集をするときはPremireなど、求められる教材によって使い分ける必要がある。


【学習履歴の管理などの設計に必要なプログラミングスキル】

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教材を見てはい終わり、面白かったな…ではなく、学習した知識が身につかなければ元も子もないので、学習者の知識定着を助けるクイズの作成や成績の履歴・理解しているかをデータ化するには、デザインだけでは不可能だ。

eラーニング教材制作用の便利なツールを使えれば簡単なのだが、そんなうまい話はなく、教材によって1からプログラミングをしてシステムの設計が必要なことも少なくない。

私はこのプログラミングスキルが皆無なので(その分デザインスキルに偏っている)、今後マジでプログラミングやらなきゃなと思う毎日である。


【教育者が伝えたい(教えたい)ことをくみ取る読解力】

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これに関しては勉強して身に着ける分類ではなく、普段からいかに限られた(あるいは多すぎる)情報を元に「つまり何が言いたいのか」という真意を考えられるような意識がなければどうにもならないと思う。

教材といっても内容は様々で、専門的でニッチな内容であれば図解や超絶わかりにくいマニュアルを元に「つまりこういうことね」というポイントを見つけて、要約する力が必要だ。

教育者が教えたいという気持ちが強すぎて、めちゃくちゃ詳しく書いてあったとしても、学習者のモチベーションとの差が大きければ伝えたいことも伝わらない。それは一方通行な教育である。

長文をわかりやすく区分にわけて箇条書きにしてみるとか、文章の一部をアニメーションあるいは図解にしたり、ナレーターさんに読んでもらった音声を入れたりと、様々な工夫をちりばめて「伝える」ことが求められる。

ただ、その工夫をする以前に、原稿(あるいは元となる教材)を短時間で正しく理解し、キーワードとなる箇所をピックアップする読解力がラーニングデザイナーには必須だと思う。

その関係もあって、自分が仕事で教材制作をしていく中で同時に学べるので、幅広い知識がいつの間にか(ふわっとでも)身に着くのが一石二鳥だなと個人的には感じている。


というわけで、自分の仕事であるラーニングデザイナーについて改めて考えてみると、まだまだ認知度が低い業種でもあるし、自分が必要なスキルや視点も多くあることに気づいた。

eラーニングの需要が今後高まっていくことは間違いないが、まだまだ日本のeラーニングは「講師が長々と授業内容を話しているだけ」「紙の教科書をweb上に書き起こしただけ」みたいな古臭くてクソつまらない教材が山ほどある。

海外にはゲーミフィケーションを用いた子どもがわくわくするような教材や、直感的にクイズが制作・共有できるツール、最先端のAI技術を使った学習教材など可能性に満ち溢れているので、今の時代にあったコンテンツを考えていきたいところだ。

どうせ勉強するなら楽しくやりたいじゃん?

人によって学習方法の合う・合わないもあるし、学習者が自分に合った学習方法を選べる選択肢を増やしたい。

学校を卒業しても勉強というものは職場・生活の中でも一生関わりがあることなので、少しでも勉強することが楽しくなるように、モチベーションを保ってストレスを抑えて生きていけるように何ができるかを考えて制作していこうと思う。


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