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【メディア解剖連載 Vol.5】日経クロストレンド 副編集長 森岡大地さん

現在、B2B企業向けに広報部門立ち上げコンサルティングを行うリープフロッグ松田純子PRコンサルタント高橋ちさが主催し、ライターとして企業広報の3名(橋尾日登美さん、前田弥生さん、堤はるなさん)、宣伝担当として広報コンサルタント村田知左さん、フリーランス広報PR 奥野絵里奈さんに参加いただき【メディア解剖連載】を行っています。

※本連載の趣旨は、第1回記事の冒頭をご覧ください。

毎回、松田と高橋が専門とするBtoB分野のメディアの方をお招きし、
以下のような項目を中心にヒアリングしてnoteにインタビューを掲載
していきます。各社の広報の方に、ぜひお仕事の参考にしていただければと思います!

・媒体コンセプト、ターゲット読者
・取材の注力分野
・広報担当者との関り方
 など

第5回は、日経クロストレンド副編集長の森岡大地(もりおか たいち)さん

にお話を伺います!


・日経クロストレンド:https://xtrend.nikkei.com/
・媒体資料
・プレスリリースの送付先:
xtrend-n@nikkeibp.co.jp


日経クロストレンド 副編集長 森岡大地さん

プロフィール
日経クロストレンド 副編集長
2006年東北大学大学院理学研究科天文学専攻修了。同年、日経ホーム出版(2008年に日経BPと合併)に入社。日経トレンディ編集部にて、記者・編集業務に携わる。その後、日経ビジネスを経て、再び日経トレンディに。19年より日経クロストレンドを兼務し、20年より専任。22年4月より現職。私生活では、2児の父として育児と仕事の両立に奮闘中


■日経クロストレンドのコンセプトと読者


 
Q:本日はよろしくお願いいたします。まずは、日経クロストレンドのコンセプトについて教えてください。
 
日経クロストレンドのメインコンセプトは、「マーケティングがわかる 消費が見える」です。「マーケティングがわかる」はマーケティング従事者や経営者の実務に役立つこと、「消費が見える」は消費者、生活者のデータ、行動、消費が見えるということです。この2つが大きな柱で、これらに関連した話題、最新テクノロジーなども追っています。


Q:そもそも日経クロストレンドは、どのように立ち上げられた媒体なのでしょうか。
 
日経クロストレンドは、日経BP社が持つマーケティング関連領域の5媒体である、「日経デジタルマーケティング」、「日経ビッグデータ」、「日経デザイン」、「日経トレンディネット」、雑誌の「日経トレンディ」の知見が集まった媒体です。広いマーケティング領域を網羅するために、この5媒体の人材が集まって、toBおよびtoC向けを問わず様々な角度の記事をつくっています。


Q:日経クロストレンドの読者層について教えてください。
 
主な読者はマーケターの方々ですが、企業経営者の方も多いです。一般的にマーケティングと言えば、“販促”部分を指すことも多く見受けられますが、日経クロストレンドではマーケティングを広く捉えて「消費者に価値を届けるための全ての行動=マーケティング」と考えています。経営に近い考え方をしているので、経営者の読者も多いという訳です。


日経クロストレンド


Q:基本的にマーケターの方が仕事で使える(toB向けの)情報を掲載しているんでしょうか?
 
そうですね。マーケターの方に役立つ情報を届けることを中心とした媒体です。ただし、マーケターの方も仕事を離れれば一消費者ですし、仕事で自社商品のユーザーインサイトやコンセプトの鍵を探すときは、消費者視点で情報を見ることもあると思います。その意味で、マーケターではない一般消費者の方が読んでも気付きがあるような記事も掲載しています。
 
例えば、最新のヒット家電やZ世代のトレンドなどの情報は、消費者の方にも楽しんでいただける内容だと思います。ただし、それだけで終わりにするのではなく、商品の作り手にはどんな想いがあるのか、企業はどんな戦略でそれを世に送り出したのか、裏側にどんな消費者心理があるのかなど、背景まで掘り下げて記事にするようにしています。

 
Q:競合媒体についてどう捉えていらっしゃいますか?
 
完全な競合媒体はないと思っています。マーケティングツールや手法など、部分的に競合する情報を掲載しているメディアはもちろんありますが、これほど包括的にマーケティングとビジネスを追っているメディアはないと思っています。
 

■編集部の体制、企画の検討について


Q:次に、編集部の体制を教えてください。

編集部には約15人のメンバーがいます。編集長、副編集長兼デスクが数名、記者という体制になっています。基本的に担当分野は無く、各編集者が好きなものを自分で調べて自分で書きます。実は、この会社はこの人が担当する、ということも決まっていません。例えば、以前Aさんが取材に行った会社へ、今回は切り口が違うのでBさんが行くということもあります。普段から記者同士が連携して情報共有をしており、取材には書きたい人が行く仕組みです。

 

Q:柔軟な対応をされているんですね! 媒体内での記事の分担はどのように決められていますか?

まず、日経クロストレンドには、大きく「特集」と「インサイド」の2つがあります。「特集」は1週間で6~8本同じテーマで記事を出すものです。これは編集長や副編集長がハンドリングしながら、チームとして取材、記事作成を行っています。このチームは固定されておらず、その時々でチーム編成をして担当しています。

もう一つの「インサイド」は、単発記事の集まりで世の中のマーケティング事例やトレンドに関する記事を出しています。これは本当にテーマが多様で、記者がその時に面白いと思ったものを担当して書いています。記者のカラーもかなり出ますし、ここを読むと日経クロストレンドの幅広さが分かっていただけると思っています。これ以外に、さまざまな連載などを掲載しています。

 

Q:以前、Twitterで配信されていた「新編集長ご挨拶」のスペースを聞きしましたが、みなさんとても仲が良さそうですよね。記者同士の情報共有はどのようにしているのでしょうか?

自分が持っている情報を他の記者に伝えることはよくあります。編集部のメンバーはみんな守備範囲が違います。広報さんからご連絡いただいた情報が自分に刺さらなくても、他の記者が興味を持つ可能性がありそうな場合は繋いだりもします。

ですので、私たちの媒体の場合は、一人に送ってダメなら別の記者に連絡してもらって大丈夫です。「この前は私のところに来たのに」とへそを曲げるような記者はいないと思うので、色んな人に送ってみてください。

 

■編集部や森岡さんの注目ジャンル


Q:日経クロストレンドとして、今注力しているジャンルは何でしょうか?
 
取材注力範囲でいうと、大きくはマーケティングDXです。今ならChatGPTなどの生成系AIは気になっていますね。いつも数カ月単位で「この時期に、このジャンルを記事にしよう」というのは考えていますが、変わっていくことが多いです。基本的には媒体コンセプトである、マーケターの方の学びと消費者心理の理解に繋がる内容であること、それに加えて記者それぞれの興味関心のある領域で記事を作成しています。


 
Q:森岡さんが最近特に注力している分野はありますか?
 
前述のようにAIといったテクノロジー領域を好きで追っていますが、これに加えて地域で頑張っている個店やスモールチームがやっているマーケティング施策などに興味を持っています。マスマーケティングやマス広告でアプローチしきれない領域が増えていくなか、小さなお店やスモールチームのマーケティング部門がどのように顧客や消費者とコミュニケーションを取っているのか、ファンとの繋がり方、ファンとの関係をどう構築しているのかなど、とても勉強になります。


 
Q:普段はどのように情報収集されていますか?
 
私は人づての情報に頼ることがほとんどです。もちろんSNSなどの情報も追いかけますが、まだあまり表に出ていない事例などは人から聞くのが一番早いと思っています。特定の分野に詳しい方とのコネクションを増やして、取材の前段階でネタを相談したり、実際に取材させてもらいに行ったりしています。


■広報からの情報提供、提案について


Q:面識がない場合、どうやって森岡さんにお声がけすればいいでしょうか?
 
まだお知り合いになっていない方、リアルにお会いしたことがない方は、Twitterからご連絡いただくのが良いと思います。もしタイミングが合えば、自社や自社の業界に関する面白い変化・トレンドを共有いただけるとありがたいです。雑談のなかで全く関係のない質問をしたり、「こんなネタを探しているんですけど」と、リラックスして話すことが多いです。


 
Q:媒体のコンセプトに合う情報がある時は、誰でもTwitterから声をかけてもよいのでしょうか?
 
 
全部に返信は出来ないですが、全て目を通すようにしていますので、ぜひ送っていただけたらと思います。


 
Q:新しい広報さんとはどのように出会っていらっしゃいますか?
 
知り合いの広報さんや経営者様からご紹介していただくことが多いですね。コロナ禍でオフラインの発表会が減ったなかで、人づてになることが多くなりました。


 
Q:広報さんとやり取りをするなかで、気をつけて欲しいことはありますか?
 
“自社の社員のことをよく知っていて欲しい”ですね。社内の人がどんな情報を持っているのかよく知っている広報さんは仕事がしやすいと思います。代表にお話を聞きたい場合もありますが、場合によっては「この話なら代表ではなく、この人が適任です」と提案いただけると話が進みやすいです。
 
取材の回答が一問一答形式では深い記事が書けないので、取材対応者の方は本質的な答えを持っている方、こちらが抱えている課題感を理解してくれる方だと助かります。そうすれば、取材の場でどんどん深掘りしていけますので。取材を受ける方がどういった知識や経験、考えを持ってるのかを理解した上で、取材を設定していただけるとありがたいですね。
 
そのためにも、社内でちゃんとコミュニケーションを取ろうとしている広報さんなのかどうかは気になります。お話ししているなかで、「社内の会議でこんな話が出てきたんです」などと聞くと、広報の方が現場の会議に出て情報収集したり、経営者と会話したりしていることが伝わってきますよね。面白い、価値になる情報を社内で探そうとコミュニケーションをとっている方なのかは見ていますね。


 
Q:なるほど参考になります。プレスリリースについてはどのように目を通されていますか?
 
プレスリリースについては基本的に全て目を通しています。プレスリリースのタイトルで目につくのは、今自分が興味関心を持っているテーマについて書かれているものです。
 
そのため、同じリリースでも刺さるタイミングと刺さらないタイミングがあります。これは他の記者も同じだと思います。個人的には、プレスリリースの細かい書き方の違いはそんなに気になりません。もちろん差異はあると思いますが、一番優先されるのはその時に意識している興味関心なので、何をテーマにしているのか、何の課題に対してアプローチしているのかが分かれば開けて読みます。


 
Q:プレスリリースからどのように記事になるのでしょうか?
 
うちの媒体では、プレスリリースを起点にすることがあっても、プレスリリースの情報のみで記事にすることはほぼ無いですね。発表会レポートなどは載せていますが、せっかくならもう一段深堀りしたい、より裏側を届けたいという想いがあります。


 
Q:ご連絡するにあたっては、プレスリリースだけ送るのが良いか、記事の切り口も一緒にご提案した方が良いか、どちらでしょうか?
 
私は、前述のようにその時に持っている課題感ベースで記事を考えているので、企画提案は必須ではないです。企業や個人が直接消費者と関わる時代なので、メディアが必ずしも情報の流路の中心ではいられないと思っています。その中では、新しい付加価値としていかに新しい切り口、視座を探して提案できるかを大切にしたいと思っています。ただ、記者によってスタンスが違うので、切り口とセットの方がイメージが沸きやすい人もいると思います。


 
Q:最後に読者の広報さんにお伝えしたいことはありますか?
 
今日も新しいメンバーの石飛(いしとび)が勉強がてらこのインタビューに入ってくれていますが、20代もいっぱいいる元気な編集部です。4月に編集長が代わり新体制になりましたし、編集部としても5周年なので、より一層頑張っていきたいと思います!


石飛 大和(いしとび やまと)さん

「たくさんの情報お待ちしています!」


ありがとうございました!
(本記事は23年6月時点の情報です)




(ライター:堤はるな Twitter@tSutsumi_13
1999年3月生まれ、兵庫県出身、人に対する“諦め”をなくす組織コンサル会社のブランディング担当。大切にしているのは誠実さと経験。好きなものはチーズとアイドル


(編集・構成:リープフロッグ 代表 松田純子)
B2B企業向けに、伴走型・人材育成型による広報部門の立ち上げ支援コンサルティングを行うリープフロッグ代表。「広報の目的=企業成長」と捉え、新人、ひとり広報でも最速で効率よく広報部門を立ち上げ、企業成長に資する広報活動が行えるよう支援。各種メディアでの執筆、登壇多数 
リープフロッグHP


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