私的解題-6「虚實篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

「6 虚實篇」ここではプロジェクトの組織体制ですね。 

いきなり本文に入ります。
「準備が整いメンバーの充実したプロジェクトは取り組みやすいですが、すでに遅延していたり、ギャップのある隙や実態が伴わないプロジェクトは干渉の影響を受けやすく難しいものになります。ですから、優れたリーダは、プロジェクトメンバーを充実した状態に保ち、自らをコントロールの中心に置き、干渉の影響を受けないようにします。また、何事があっても静かに動き、プロジェクトの内情を知られないようにします。これによって抵抗勢力からの干渉を防ぐ事ができ、内外共にコントロールすることができるようになります。」
→ 「準備が整いメンバーの充実したプロジェクトは取り組みやすいです」は言うまでもないですね。
次に「すでに遅延していたり、ギャップのある隙や実態が伴わないプロジェクトは干渉の影響を受けやすく難しいものになります。」と言っています。
これは、プロジェクトに(作業)遅延や(スキル)ギャップ、(メンバーの稼働)実態が伴わない等の負の要素が発生すると、正の要素に戻すために力を取られる。要は外向きの力が内向きになってしまう。こうなると、外側への対応が弱くなり「干渉の影響を受けやすく難しいものになります。」と言っているわけですね。
「ですから、優れたリーダは、プロジェクトメンバーを充実した状態に保ち、自らをコントロールの中心に置き、干渉の影響を受けないようにします。」という事で、優れたリーダーは、マイナスの状態であっても、個々のメンバーの意識を高め、隙を閉ざし、「自らをコントロールの中心に置き、干渉の影響を受けない」状況を作り、プロジェクトを運営するといっています。
そのためには、
「何事があっても静かに動き、プロジェクトの内情を知られないようにします。」ということですが、以前の「篇」に書かれていたように、派手な動きをして存在をあらわにするような行動は、プロジェクトにとって不要ですしマイナスの要素しかもたらさない、ということを別の表現で言っていることになります。
そして「これによって抵抗勢力からの干渉を防ぐ事ができ、内外共にコントロールすることができる」プロジェクト運営環境を作り上げる。と言っています。

ちなみに原題の「虚實篇」は、リーダはプロジェクトを「干渉の影響を受けやす」い状態=「虚」ではなく、「充実した状態」=「實」の状態を作り、「内外共にコントロールする」という事からつけられています。(本文中に書いていないので、ここで補足させていただきます)

「そして、常にプロジェクトの抵抗勢力を見えるようにしておき、プロジェクトから発信する情報をコントロールし、自分たちの動きが見えないようにすれば、対応勢力はプロジェクトの位置を探すために力を分散させ動き出し、弱点を露わにします。こうすれば、相手の弱点を用いることで相手をコントロールできるようになります。」
→ (翻案の文章が原文に近い順序のため)記述が前後しますが、対峙する抵抗勢力に対しては、プロジェクトの動きを見えなくして(企業内の事業セグメント変更プロジェクト[言い換えるとM&A等]のような場合)「プロジェクトから発信する情報をコントロールし、自分たちの動きが見えないように」するわけですね。干渉される隙を作らないことになります。
そうすれば「対応勢力はプロジェクトの位置を探すために力を分散させ動き出し、弱点を露わにします。」ということですが、見えない対象ほど面倒なものはありません。憶測が憶測を呼び、抵抗側の中に隙が表れてきます。そうなると、それが事実なのか確認するために時間と労力を使います。そして、使った時間や労力はもどってきませんし、疑心暗鬼の深みにはまってきます(これ「弱点」と言っています)。
この隙(無駄にリソースを使っている部分や疑心暗鬼の部分)にテコをいれてレバレッジをかけます。「こうすれば、相手の弱点を用いることで相手をコントロールできるようになります。」ということになります。

そして
「こういう状況を作った上で、いつ、どこで対応すべきかがわかったら、力強く進むべきです。必ず目標に到達するための利を得ることができます。」
→ くどいようですが、言い換えると「こういう状況を作った上で」とは、レバレッジが効く=「相手をコントロールできる」状況を作った上で、「チャンスが来たら一気呵成に進め」そうすれば「目標に到達するための利を得る」ことができるといっています。

ここからは、プロジェクトがもつべき動きのイメージを記述しています。
「究極的なプロジェクトは定型のないものです。型がなければ、外部から、プロジェクトの動きを読み取られることはありません。言い換えれば、プロジェクトの動きは水に習います。水はその形を地形に適応させ、決して形や動きに無理がなく、休むことなく流れていきます。このように、プロジェクトが置かれた状況に応じて、留まることもなく、無理することもなく、水のように静かにゴールに向かって流れるようにプロジェクトを進めていくことを「神妙」と言います。」
→ 東洋的な時間の流れ(始まりがないので終わりもない:欧米的時間は始まりがあるので終わりがある)の上で、水をプロジェクトの組織、水の流れをプロジェクトの運営に見立て、水がどのような形にも合わすことができるようにプロジェクトを組織し、かつ、水が理に沿って(高きから低きに)休むことなくかってに流れていくようにプロジェクトを運営していくことが理想で、これが実現できた境地が「神妙」と呼ばれるといっています。

今回は短く終わりました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?