私的解題-5「勢篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

「勢篇」=「プロジェクトのコントロール」についてです。
連載物は往々にして重ねるごとに読者数が減るものですが、負けていてはいけません。(笑)
13の「用閒篇」まで頑張るぞー(笑)

さて「勢篇」は、そんものズバリ「プロジェクトのコントロール」になります。

この章は4つの部分で出来上がっていて、
1.プロジェクトの進め方
2.プロジェクト運営の在り方
3.対象を動かす為には
4.プロジェクトコントロールの要点
各々はそれほど長くない文章ですが、内容の濃い文章でもあるので、ここも長文になりそうです。

『1.プロジェクトの進め方』ですが、
まず、
「プロジェクト全体が統一感を持って進めることができるのは…分数 → チームの編成による」
「プロジェクト全体が崩れることなく、障害やリスクに立ち向かえるのは…形名 → 指揮系による」
「プロジェクトが目標を達成できるのは…正 → 標準動作ができる + 奇 → 臨機応変の対応ができるから」
そして「プロジェクトで発生した障害やリスクにも容易に対応できるのは、発生したの虚(弱い部分)を実(しっかりした方法)で対応するから」
と言ってます。
まず、プロジェクトチームの編成がプロジェクトに合っているか。
→ これは、能力や適性を考えずにチーム編成を組んだりしていないよね。
次いで、プロジェクトの指揮系がきっちりできているか。
→ 今まで何度も出てきていますが、ガバナンス(この場合、統制)が隅々までいきわたっていますよね。
そして、プロジェクトの標準動作ができるだけではなく、臨機応変の対応ができるか。
→ ガバナンスを守ることが目的ではなく、成果を出すことが目的だから、カキコキの硬直した組織になっていないよね。
最後に、「プロジェクトで発生した障害やリスクにも容易に対応できるのは、発生したの虚(弱い部分)を実(しっかりした方法)で対応するから」だと言っているのですね。
ちゃんと編成、指揮系ができていて、この上に乗っかる統制がしっかりしていますよね。その統制も、学校校則のようなアナクロで時代錯誤丸出しのカキコキの統制ではなく、環境に応じて柔軟に対応できる統制になっていますよね。でないとプロジェクトが空中分解してしまいますよ。と言っているわけです。

これに続いて、以下の言葉になります。
「プロジェクトは、基本的に標準的な進め方で進め、発生した問題に対しては柔軟な対応によって解決します。状況が変わるにことによって、この柔軟な対応が標準的な進め方へと変化します。土俵に端がないように、標準的な進め方と柔軟な進め方は永遠に絡み合ってプロジェクトのゴールを目指します。この標準的な進め方と柔軟な進め方のコントロールをマスターしたリーダが、プロジェクトを成功に導くのです。
もちろん、太極のようにスパイラルに進んでいくプロジェクトですが、重要なポイントでは、プロジェクトの勢いを鋭くして、その勢いの力で一気に押し切るようにしなければなりません。」
→ 「孫氏の兵法」は東洋の思想です。なので、欧米のように誕生から始まって死に終わる(+キリストによる救済で永遠の命をえる)といった直線的な時間ではなく、図案の太極昼であらわされる陰陽の繰り返しのように終わりがなく、かつ、スパイラルに昇華しながら進んでいくとらえます。ちなみにこれに失敗すると地獄へのドルダウンとなります。
なのでプロジェクトも「基本的に標準的な進め方で進め、発生した問題に対しては柔軟な対応によって解決します。状況が変わるにことによって、この柔軟な対応が標準的な進め方へと変化」できるコントロールを行い、そのコントロールの下で「標準(標準動作)と柔軟(臨機応変)が永遠に絡み合ってプロジェクトのゴールを目指」し進めるとなります。
そして、変化に対応し昇華するスパイラルな動きだけではなく、「重要なポイントでは、プロジェクトの勢いを鋭くして、その勢いの力で一気に押し切る」といった、機会があれば、一気に、直線的に、ゴールに向かう動きも忘れるな、と言っているのですね。

『2.プロジェクト運営の在り方』は、短いですが、組織おいてとても重要なことを言っています。
「プロジェクトの混乱は、治めることの揺らぎ中から生まれ、目標到達への心配は推進する力の隙間から生まれ、任務に対しての弱気は責任への重さから生まれます。
混乱が生まれるか、どうかは(分)数 → チームの編成が、実態に合っているか、どうかです。
心配を拭うことができるかどうかは、プロジェクトチームの勢 → 勢いが、強いかどうかです。
任務に対して弱気に陥るか、どうかはプロジェクトの形 → 態勢が、メンバーをフォローできる仕組みを持っているかどうかです。」
→ もともと「孫氏の兵法」文章の順に基づいて記載しているのでbん利している部分をつなぎなおすと
「プロジェクトの混乱は、治めることの揺らぎ中から生まれ」 → この治めることの揺らぎが出る本当の原因は「(分)数 → チームの編成が、実態に合っているか、どうか」だと言っています。組織としてしっかりした構造が出来ていないから混乱が起こるので、混乱を起こさないようにするためには、プロジェクトにあった組織構造が必要だと言っています。
「目標到達への心配は推進する力の隙間から生まれ」 → 推進する力の隙間が出る本当の原因は「プロジェクトチームの勢 → 勢いが、強いかどうか」だと言っています。プロジェクトチームの勢いが弱いから心配の心が生み出されるので、心配の心を生み出さないようにするためには、プロジェクトチームの前に進む勢いを強くすることですと言っています。
「任務に対しての弱気は責任への重さから生まれ」 → るのだが、責任への重さを強く感じる(裏返して読めば弱気の増幅ですね)本当の原因は「プロジェクトの形 → 態勢が、メンバーをフォローできる仕組みを持っているかどうか」だと言っています。メンバーをフォロー出来ない体制になっているためメンバーが孤立し弱気になる。だから、これを防ぐためには、メンバーをフォロー出来し孤立化させない仕組み=体制が必要ですと言っています。
※「責任」の部分は重要で、多くの組織が持っている病巣でもあり、解決策も回避策も持たない無能なマネージャが、自身の保身のために現場の担当者をつぶしてしまう部分でもあります。ですから、メンバーをフォローし、孤立化させない体制の組み立ては、心理的安定性とかいうもっと前から組織の健全な発達のためには重要な要素だったわけです。

『3.対象を動かす為には』に移りますが、これは「孫氏の兵法」ならではといった個所ではないでしょうか。
「また、人は望むものを見せられれば、それを求めて動き、与えようとすれば取っていきます。相手を自分の望むように動かそうとする者は、相手にとっての利益を示すことによって相手を動かします。ですから、相手が来るのを待ち、相手が来たら、相手にとっての利益を用いて相手をコントロールします。」
→ 「人は望むものを見せられれば、それを求めて動き、与えようとすれば取って」いくと言っています。そして、「相手を自分の望むように動かそうとする者は、相手にとっての利益を示すことによって相手を動か」します。誰しも欲しいものが手に入る状態であり、与えらるとなれば持っていきますね。これを用いて相手を動かすと言っているのですね。

後の章にも出てきますがすべての「相手の利益」が全て「自分の損失」ではありません。そこを理解したうえで、そして、「相手が来るのを待ち、相手が来たら、相手にとっての利益を用いて相手をコントロール」する。=「相手を動かす」ことの裏に、こちらの利益になるように「コントロール」を組み込む。
悪く言えば、まず相手にとっての利益を見せて与え、相手が利益に目がくらんでいる間に外堀を埋め、コントロールできる状態を作るわけですね。
もちろんこの場合、自らの損失を与えて、その損失で得る利益の損得勘定の上で、自身の肉を与えて相手の骨を抜くといった場合もありますね。

『4.プロジェクトコントロールの要点』として
「プロジェクトをうまく管理する人は、最高のパフォーマンスを発揮できる個人を探すのではなく、プロジェクト全体に勢いをつけることに重点を置きます。そして、適切な人材を適切な場所に配置することで、個々の能力を最大限に引き出し、プロジェクト全体で目標に向かう勢いを作っていきます。」
→ この通りなのですが、あえてまとめると、
・「勢い」のあるプロジェクトチームの構築
・プロジェクトメンバーの「適材適所」への配置
・「個々の能力を最大限」できる組織と環境の整備
をもって「プロジェクト全体で目標に向かう勢い」を作らないといけないと言っています。
「プロジェクト全体で目標に向かう勢い」は、適当に人を集め、適当に配置し、適当な組織で、適当な環境に投入し、何でもいいから「ガッツだ」では作れませんし、長続きしません。
プロジェクトは長丁場なので、構築の基礎の部分から真剣に対応しければいけないと言っているのですね。

次は「6 虚實篇」プロジェクトの組織体制ですね。

※孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら INDEX

孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

【補足事項】孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

私的解題?1「計篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

私的解題?2「作戦篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

私的解題?3「謀攻篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

私的解題−4「形篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら

私的解題-5「勢篇」 孫子の兵法をプロジェクト マネジメントの観点で翻案したら


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