初恋


【十人十色のラブレター企画】を拝見して。


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小学生の頃好きだったひと


小学校に入り、引っ越しで新しい土地にやってきた私。

環境の変化で幼稚園の頃とは違うおとなしい小学生だった私は、気が強い女の子たちにいじめられたりすることもあった。そんな中家が近いこともあって初めに仲良くしてもらったのは男の子たちだった。その中にその子がいた。最初は意識していたわけではなかったと思う。

詳しいことはもう記憶に残っていないけれど、一年生の彼の誕生日、女の子一人だけ誕生日会に呼んでもらった。多分私の誕生日会に呼んだためであって、何かあったわけではないけれどそれが嬉しかったのを覚えている。

彼は勉強はほどほどの野球少年で、運動会ではリレーの選手をするような運動神経がよい子だった。なんでかは分からないけれど、そのころの年頃の子同様スポーツができる彼はかっこよく見えた。

小学校の中学年ともなってくると彼と話すことも大分減っていたが、ほんのり彼が気になっていた私は彼がバレンタインにほかの女の子たちにチョコをもらっているのを知っていた。すごく話す相手でもないのにものを渡すなどあの頃の私に想像すら出来なかったし、やっぱり人気なんだな、と心の中で思うことしかしていなかった。


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そうこうして季節が変わり、4年になってしばらく経ったある日、彼は家の事情で引っ越しをすることになった。

そのしばらく前、帰り道彼を含む男子の集団と出会ったことがあったことを思い出した。その時何故か彼がひとり近づいてきて「好きな人いる?」と聞いてきた。私はびっくりしたけれどとても恥ずかしかったので、幼稚園の頃の幼馴染とあと学校の人ひとり、と答えた。それ以上はとてもじゃないけど言えなかったけれど、完璧には隠し切れなかった。


その件はそれで終わり。後から考えると(私の無いなりの女子の勘からすれば)、きっと彼らの中にいたちょっといじられキャラの男の子が気になっていたくらいなんだろうと思う。

彼の引っ越しは悲しかったけれど、彼がクラスメイト全員に文房具を配ってくれたので私はその香る消しゴムを封を開けずに大事に自分の机にしまった。そのあとあの時本当のことを言っていたらどうだっただろうと何度か思い返した。言っていればよかったのかなと。


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その後20年近く恋とは縁遠い生活をしていた私にとってはこれが唯一の恋バナだった。ほのかに優しい初恋の思い出をありがとう。どうかどこかで幸せでいてね。




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