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沖縄文化の持つ価値観を伝える。ゆいまーる沖縄 鈴木社長にお話しをうかがいました/LDB出版部#8

今回は、ライフデザインブックスをお取り扱いいただいているショップさんを紹介します。場所はなんと沖縄!「ゆいまーる沖縄」代表取締役の鈴木修司社長にオンラインでお話しをうかがいました。実はライフデザインブックスの母体である株式会社ジャパンライフデザインシステムズは、沖縄県の離島、石垣島にサテライトオフィスがあり、沖縄とご縁があったりするのです。

沖縄文化の魅力の掘り起こし

___ゆいまーる沖縄本店<Storage & Lab.>にライフデザインブックスを置いていただき、とても光栄です。書籍の取り扱いをしたのは最近のようですね。
 
鈴木社長:そうなんです。弊社、ゆいまーる沖縄について少しお話しをしますと、私たちの経営目的は、一番に「琉球の自立を目指す」。そして、「琉球の文化・祈りに深く学びそれを事業にする」ということを掲げています。
そうした考えの基に、地域の工芸品とか食品の企画・流通などを行なってきて、お店でも沖縄の工芸品や食品を販売していました。もちろん、物を通じて沖縄文化の魅力を伝えることはできるのですが、もう少し深く伝えていきたい、学びにもつなげていきたいと考えた時に、書籍も一緒に置いたらどうかと思ったんです。

ゆいまーる沖縄本店<Storage & Lab.>

___店内には本を読めるコーナーもあるとか。
 
鈴木社長:はい。器を買いに来たついでに、気になる本もあったので読んでみる。そんな流れがつくれたらいいな、と。工芸品を買われる方は、どちらかというとスタイルで購入されます。このスタイルを生活の中に取り入れたいといったような。動機はそれでいいんです。
スタイルという入り口から入り、そこから沖縄文化を深く知りたいとなったらうれしい。さらに、沖縄の生き方とか価値観とか、もっと深いところまで興味をもっていただけたらと思っています。

文化と経済の融合が課題

___ライフデザインブックスには沖縄文化とダイレクトにつながる本はないのですが、なぜお取り扱いいただいたのでしょうか?
 
鈴木社長:現在取り扱っている本は、沖縄文化に関連する書籍が半分くらい、残りの半分は沖縄文化に限らず文化的なテーマの書籍だったり、今の社会課題やこれから生きていく上で必要になる価値観に関する本だったりします。
ライフデザインブックスはその、これから生きていく上で必要になる価値観という点でセレクトしました。特に、沖縄にとって「文化と経済をどう融合させていくか」は大きな課題で、谷口正和さんの著書『文化と芸術の経済学』(ライフデザインブックス)などは興味があって以前から読んでいたんです。貴社の沖縄での取り組みも知っていました。

店内の書籍コーナー

文化を創造、育むために経済をまわす

___ありがとうございます。弊社の代表でもある谷口は、文化は特徴であり、その特徴をつくることによって経済が回っていくと言い続けています。
 
鈴木社長:沖縄の工芸は注目されていますが、工芸にかかわる人たちがこの仕事1本で食べていけるかというと難しい。他の仕事と比べると対価も収入も低いのです。また、芸能文化である琉球舞踊とか三線の演者に人になると、副業をしないととてもじゃないと食べていけません。沖縄にとって文化と経済の融合は不可欠。
ゆいまーる沖縄は企業として、文化で食べていける仕組み、新しいビジネスモデルを作っていきたいと考えています。

足元の財から、新たな価値を生み出す

___お店にはどのようなお客様がいらっしゃいますか?
 
鈴木社長:地元の方と観光で来られた県外の方と、どちらもいらっしゃいます。コロナ禍では弊社の観光部門では8割ぐらい売り上げが落ちて大打撃を受けましたが、沖縄の経済が止まったこの期間は、私たちが会社としてやっていくことを考えたり再認識したりするよい時間になったと思っています。
これまで沖縄は観光客数1000万人というように数ばかりを追いかけ、外資系の人や他県の人たちも開発を進め、新しいホテル等をどんどん建てていくようなやり方をとっていました。でも、そうじゃないやり方もあるだろう。変えていこうよと。
これも谷口さんの著書にあったことですが、素晴らしいものは、すでに私たちの足元にある。ここにある文化、すでにあるものをどうアップデートし、カタチをつけて伝えていくかを会社として進めていかなければと思いました。
 
___沖縄の経済の流れが変わっていくかもしれないのですね。
 
鈴木社長:それは難しいところで、経済の流れを元に戻そうというのが大方の意見です。2011年の震災の時だって、何かが変わるんじゃないかと期待したけれど、結局のところあまり変わっていませんよね。ただ、完全に元に戻ることはないと思うのです。少しずつ変わっていくはずだし、変わることを信じて私たちは活動していくしかない。
 
___11月に『擬態社会』というタイトルの谷口正和の新刊が出るのですが、それが今、鈴木さんがおっしゃっていたような話がテーマなんです。
私たちは変わらなきゃと思っているけど、なかなか変われない。でも、変わったフリをしていくことで本質は見えてくるから、フリをしていればいいのだと。
 
鈴木社長:そうなんですね。谷口さんの本を読むと、自分の中で何となく考えていたことが言語化されて、そうか、間違っていないんだと思えることが、これまでもたくさんありました。新刊も楽しみにしています。
 
___文化と経済が融合した新しいビジネスモデルをつくりたいというお話しがありました。それに向けた活動などありましたら教えてください。
 
鈴木社長:主に県外の方向けに、琉球の手しごとを巡る「文化ツーリズム」というものを企画し、取り組みをスタートしました。焼き物、琉球ガラス、染織物、民具など、幅広い工芸のネットワークを活かして、工房見学、体験プログラムの開発、そしてショッピングの仕組みづくり、そしてプロモーションまで含めたクラフトツーリズムのコーディネートを行っていきます。

___私も沖縄の工芸が好きなので、興味深い取り組みです。今度、お店にもうかがいたいし! ライフデザインブックスは小さなレーベルですが、読んでくださった方に、ちょっとしたヒントや勇気、自信をもたらしたり、火を付けたりすることができるのかも、と。本日は貴重なお話をありがとうございました。

お話しをうかがった
ゆいまーる沖縄株式会社 代表取締役 鈴木修司さん

ゆいまーる沖縄本店<Storage & Lab.>
住所/沖縄県島尻郡南風原町宮平652
TEL/098-882-6995    営業時間/11:00-18:00  木曜定休

本文中でご紹介しました書籍は、
『擬態社会』谷口正和著 最新刊(ライフデザインブックス発行)
世界は変わり続けている。誰しもが少なからず生きづらさを抱えているこの社会をもう一度、別の角度から見たとき「擬態」というコンセプトが見えてきた。次の50年、100年を見据えた「擬態社会」における「サバイバルメソッド」についてお届けします。