見出し画像

第2章の旅 ポルトガル 編 #1

いよいよ、出発の日がきた。
今回の滞在は、私の人生の ”第2章 の旅”と名付けた。
旅のテーマは、直感とものづくり。
限られた時間だからと言って、「これをしなきゃ、ここもあそこもいかなきゃ。ここに行くからにはこれを食べなきゃ」という"have to" の考えは横に置て、
"want to" 感じるままにその時の感情をキャッチして、オリジナルの旅にしようと決めた。(もちろん...ご当地グルメは存分に楽しみました。矛盾?それもあり!)

では、第1章の旅はというと2006年〜09年のイタリア留学。
私の人生に沢山の色付けをしてくれた大切な時間。一つの物語として幕を閉じた。
そして、あれから十数年たった今、再渡欧を決め、新たな物語が始まるという、わくわく感を込めて、第2章の旅と名付けた。
さて 早速、前回のnoteで書いた(渡欧をするきっかけとなった)私が一目惚れしたタペストリーを作るテキスタイルアーティストの紹介をしたいと思う。

憧れのアーティスト

彼女の名前は、Vanessa Barrageさん。
彼女は、工場で廃棄される毛糸、不備の糸など使用できないものが彼女のところに届く仕組みを作り、それを使い、自らデザインし作品を作っている。(いちから紡いだりもしている)彼女は海の近くの出身ということで、海や自然界を題材とした作品が多く、海という壮大な存在を自由に表現している作品は圧巻だ。
また、地球のことを考え、エコ活動にも繋がる彼女の作品作りは世界中で注目されている。

本当に彼女に会えるのか

「会いたいです」とラブメールを送って、すぐに返事を頂けたのでスムーズに会えるかと思ったら、これまた中々のスリルある体験をするのだった。

まず、行きたいという想いを伝えただけで、確実な日にちを立てておらず、私も日程が定まっていなかったし、きっと彼女も忙しいだろうから行く直前に連絡しようという曖昧な計画で進めていた。

今回の旅はイタリアを拠点にして動いたので
イタリアに着いてある程度余裕が出てきたところで、ポルトガル 行きの日程を決めた。彼女に都合を聞こうと思い連絡したが、返事がない..
今回、彼女に会いに行くのを目的にしていたので、連絡が取れない状態だったが、
「会えたらラッキー、会えなくてもポルトガル の空気を吸えるだけでラッキー」
と意味不明なポジティブシンキングでポルト行きの航空券をとった。
期間は3泊4日。出発まで2週間くらいあったので、それまでに返事が来るだろうと思っていた。
しかし、出発の日になっても連絡が来ない。不安いっぱいの中、引き続きポジティブマインドでエイヤー!とポルトガル 、ポルト に渡った。

「到着しました、住所を教えてください」

と連絡したが、返事はない。思い切って、アポなしで訪問!
としたいところだったが、住所がわからない...
後手後手のような状況になり、さすがにポジティブマインドでポルトガル 入りしたけれど 早速1日目、切なくなった。
が!
節約してとった14人部屋のHostelが...大当たり!
単純な私は、宿泊場所が幸い良い所だったことに救われ、なんとかモチベーションは保たれた。
まだ2日間ある...と。

お勧めのHostel

価格もロケーションも◎
なんと言っても、老舗のワイナリーが試飲室の隣の施設をリノベーションして作ったということもあり、お洒落。私の泊まった大部屋は、ワインの樽をイメージしたアイアン調のベット。
14人という大人数なので期待していなかったが、とにかく部屋が広く、到着した時、部屋は静まりかえっていたので私1人だけかと思っていたら部屋に2人も居たという..プライバシーも守られていた。(ただ、14人なので就寝中に誰かが歩く音や光が気になる人にはお勧めできない。私の宿泊時は目覚ましアラームを5分おきに設定をしている人がいて、しびれを切らした1人の人がぶちキレるというエピソードがあった。ゆっくり滞在したい人には個室が良さそう。余談)
また共有スペースもゆったりとしていて、お洒落。なんと言っても眺めが最高!夜には屋外にテラス席が広がり地元の人で賑わっていた。

画像1

お勧めの宿 『SANDEMAN』https://thehouseofsandeman.pt

お勧めの美術館

さて、本題。2日目、まだ連絡がない。
スイッチが旅行モードの私は、平日、週末感覚がなくなっていて、ちょうど訪れたのが、土・日・月(まさかの祝日!)...どこもかしこも観光客と中心地以外のお店はお休み..という状況。来るべきではなかったのかな…なんて、後ろ向きなことまで考え始める。
さすがに時間を持て余してしまった。
しかし、まて、ちょうどいいタイミングではないか。と気持ちを切り替え、時間があったら行きたいと思っていた
ポルトガル 人の建築家「Álvaro Siza」の建築を見にセラヴェス美術館へ。ここは郊外にあり、行くのに少し不便であるが、美術や建築に興味がある人にはぜひお勧めしたいスポット。
広大な敷地に、あっと驚くオブジェの数々、アート作品も見どころ満載。なんといっても、建物に差し込む光のバランスがすごく良かった。(マニアック)
さて、十分時間を使って?楽しんだところで、メールをチェックしたが、
返事はない...
明日が最終日ということもあり、再度コンタクトすることに。
その名もラストメッセージ(そのまんま)
その数分後... ついに返事が来たーーー!
もう嬉しくて嬉しくて、ひとり満面の笑顔。
周りの人はちらちらこっちを見てくるが、そんなの気にしない。
テンションがあがり小さくガッツポーズ。
(やはり少しは気になったので...小さく喜ぶ)
無事、住所を教えてもらうことができて、翌日 彼女に会えることになった。

画像2

いよいよ、最終日

3日目、教えてもらった住所へ約束の時間に向かう。
今までに経験したことのない鼓動の早さと、
ワクワクドキドキ不安…色々な感情が入り交じり、ひとり忙しかった。
そうこうしていると、可愛いタイル張りの入り口の前で、笑顔の彼女が迎えてくれた。
「Olá!」挨拶を交わし、工房の中に入れてくれた。
ついに!という気持ちと同時に、想像が膨らみすぎていたのか、彼女のところにいることをすぐに受け入れられず、しばらく夢の中にいるような感覚が続いた。
彼女と話していくうちに、色んなことが一つに繋がった。
返事が遅くなったのにも、理由があった。
私の訪問の前週まで、1週間なんとイタリアに出張していた。
(先週は同じ時にイタリアに居たんだ...と、勝手に運命を感じる)
来月は、個展のために台湾へ。
さらに訪問した時は、家族総出で大プロジェクトに着手していた。
訪問時は非公開なプロジェクトだったが、特別にと教えてくれた。
そのビックプロジェクトは、「ロンドン ヒースロー空港のターミナルに飾るタペストリー」の制作だった。(現在もおそらく展示されています)
まさかそんな大物を生で、しかも公になる前に制作過程が見れるなんて!
この時に訪れると決めた自分を褒めたい。とまで思った。タイミングがすごい。
直接お会いして、彼女はとても穏やかで優しくて、みんなに工房に来てほしい。といっていたが、このような大きな仕事をしている上、デザインのコピーなどの懸念もあり、工房の公表も控えるようなったり、コンタクトも警戒するのはよくわかる。
SNSで簡単に繋がれる今、大切なものを守りながらも惜しみなく技術や考えを教えてくれ、彼女の言動には学びが多かった。
忙しい中、快く迎え入れてくれた彼女に本当に感謝している。

そして、念願の彼女の作品に触れ、ものづくりの本質がみえた気がした。確かめたいと思っていた素材についても聞くことができ、何よりも純粋にテキスタイルが好きで情熱を持って制作している姿を見て、本当に来て良かったと心から思った。

画像3

ヒースロー空港に展示される、"世界地図"を製作中のタペストリーの前で。

当時はポルトの工房にお邪魔したが、今は地元に戻り、海の近くで暮らし、自然に寄り添いながら作品を作り続けている。
近い将来、日本でも彼女の作品が見れる日がくることを楽しみにしている。

最後にサプライズ

大満足のポルトガル旅を終えようと、ポルト空港に向かって歩いていたときのこと、サプライズが待っていた。
素敵な出会いがあったのだ。
「72歳の日本人の紳士」72歳になって初めての海外旅行。しかもヨーロッパ。しかも一人旅。憧れのヨーロッパ、時間は沢山あるからと、ゆっくり自分のペースで行きたいところを周っているのだとか。
出会ったシュチュエーションもまたヨーロッパらしく...
紳士は、道端の小さなスペースに腰を掛け、鉛筆で街角をデッサンしていたのだ。

わずかな時間、私達は丘の上のカフェでエスプレッソを飲み、
「久しぶりに日本語を話せて嬉しいよ」と、大先輩の深いい話を聞いた。
そして帰国してから、お便りをもらった。ヨーロッパでの街角で描いた絵を大きな画板に描き直し数点売れたという。そして、自身の体験談を住む街のみんなの要望で講演しているとのこと。夢ある第二の人生。

一期一会の出会いって素晴らしい!

つづく(次回はイタリアサルデーニャ編)








































































































































































































































































































































































































































































































































































(今は地元に戻られて自然の中でインスピレーションを受けながら作品を作っているので、Portoに工房がある時に訪問できたのもラッキーだった)

ヒースロー空港に展示される"世界地図"を製作中のタペストリーの前で。

この日の夜は、14人に迷惑かけないようにと布団を被り、余韻に浸りながら、なぜか涙が止まらなかった。

つづく(次回は、イタリアサルデーニャ編)






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?