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ポエム・エッセイ

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ポエムのまとめです。わたしの頭の中は、こんな感じです。
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2023年12月の記事一覧

クリアだ。

車がアーチ状のアスファルトを走り、朝日に溶けていく。 さっきまで世界を包んでいた夜が、車体のホコリも一緒に剥ぎ取る。 だから、車の表面は冷たい。 産まれたての身体を暖めるために買ったコーヒー。 立ち向かう為に火をつけたタバコ。 すこし格好つけるための上着と、涙を乾かすために選んだ音楽が助手席で笑っている。 こんな日は、朝をくぐり抜ける。 機嫌が良いのはルームミラーで分かるから大丈夫。 午前中は晴天で、ガソリンは半分で、これくらいが丁度いい感じ。 幸せが溶け出した、朝に。

退屈を脱ぎ捨てます。

午前六時。 自分の体温で暖まった布団の中で、休暇をウダウダ始める。 昨日の夜からボンヤリと考えたToDoリストは、我ながら地味だなと思う内容だった。 掃除や洗濯は当然として、そのあとに「食べたいものを食べる」と銘打った項目に並ぶのは、「朝マック グラコロ」「カップ焼きそば」「どん兵衛」。これでも足したり引いたりした結果なのだ。でも、スマホのメモに保存して意気込んで買いに行くようなものでは無いよなと思う。反面、ウキウキ感も確実にある。 食べ歩きが趣味で、グルメ情報を調べる所か

栞紐を引いて。

本の間に挟まって眠りたい。 図書館に昔からあるような、沢山の人が読んだ本。ページの角がとれて丸みの出てきたような、紙自体が互い年月で透けて見えそうなほど薄く柔らかいような、そんな本の間に挟まりたい。 だいたい三分の一くらい物語が進んだ辺りのページを開き、芝生に寝転ぶように仰向けになる。 柔らかいページの上にボクの身体の形の跡がつき、沈んでいく。パタッと音がして本が閉じたらもう空気も入ってこないだろう。 そのまま本棚に戻されてボクは眠る。 静かな本の、静かな鼓動。 隣り合って並

鈍感になったら。

物欲と愉しさに敏感だったクリスマスの夜と大人しくなった聖夜。 大きくなったらもっと自由に走り回るつもりで漕いでいた自転車のペダル。それを今から踏み込む勇気は残っているのだろうか。 浮かれて見える街の様子に見惚れていた船長は、沈んだ海賊船の仲間たちの笑い者になっていた。 秘密の笑顔を交わし合えるパートナーが恋しいのだ。 だけど、そのたった1つの条件は忘れるように魔法をかける決まりになっているから、すれ違うあなたに気が付かないままでエスカレーターの登りと降りに立っていても平気な

思い出は微かに温かい。それさえ覚えていればいい。

バラバラと記憶が落ちて、水になった。 地面に落ちた水は乾いてしまって、もうどこに行ったか分からないようだ。 雨が降るから、悲しい気持ちも誰のものか分からなくなってしまった。 だから、何となくみんな雨降りが嫌だ。 運良く野良ネコが舐めた雨水があなたのものだったのなら、寂しそうに鳴いている理由が分かるかもしれない。 運悪く野良イヌに降り注いだ雨水があなたのものだったのなら、晴れた草原まで走って行って乾かしてしまうかもしれない。 今日はすこし変わった日にしよう。 外は寒くなって

紫の空とグラデーション。

置きっぱなしの缶コーヒーが昨日より甘く感じる。 暗い雲が山の方に逃げていき、取り残された欠片から青空が見えてしまっているから晴れやかな気がするけど、今日も天気が悪い日だ。 1羽だけ飛んでいる鳥。 カラスではないような優雅な飛び方だけど、なにかはわからないのに自由を感じる飛び方だった。休日を満喫する、そのための気概を感じる。 あの空は湿っているのか、それとも羽根の間を風が抜けるのを心地よく感じるくらい乾燥しているのだろうか。 千切れた欠片からは追いつかれ、青の見えない色になる。

冬靴を履いたら、なんだか勝てるような気がするんだ。

拍手の音は空気を叩き潰した破裂音なのだろうか。それとも自分の肌と肌がピッタリ合わさるから、「正解」の時にでた特別な音なのかまだわからないけど、もう冬がきた。 冬の歌をラジオは流し、悪天候への注意をいつもより多めに伝えていた。 聞いたことの無い洋楽でも、何となく冬の曲だと分かることがあるのが音楽の魅力のひとつだ。 窓ガラスを伝う雪塊がゆっくり滑り落ちる。 暖房が創り出した雪のパズルピースたちは、窓の縁に積もっていくけどパチっと「正解」の音は聞こえない。 暖房の熱が塊を壊すして

来年はもっとイイから。

ジャンキーな気分になることがある。別にそんなにヤバイ意味ではなくて、「ジャンク・フードを食べたい」そんな気分になることを個人的にそう呼んでいるだけなのだが、最近は特にジャンキーだ。 来年、大手ピザチェーン店がわたしの活動エリアにもできるというネット記事を読んだことと、イオンなんかに買い物に行くとクリスマス前ということもあり、大きなチキンやケーキを見るとなんとなく「ご褒美感」のある買い物をしたくなる。 あとは、たまたま動画で見た芸人さんのコントでケンタッキーのチキンをきれいに食

なるようになれ。

頭を縦に振り、小刻みに片足を揺らしてリズムをとっていた。 低く芯のある女性ボーカルの知らない曲が、知らないけどカッコイイと感じる曲が流れている。 音楽以外に何があるだろう。中身を味わったあとに名前を確かめるものは。 大抵は大まかなルールを確認したり、見た目の印象で決める。 とりあえず味わってから名前を調べるなんて。余程気に入っている定食屋だって決まったものしか注文しない人も多いというのに。スーパーの試食を連想してみたが、あれだって美味しそうに見えるから試す。いきなり口の中に

雪に囲まれました。

昨日から降り積もる雪が、市街も白くしている。 当然の寒さと、忘れがちな視界の悪さ。運転中の人も歩行者も。 煩わしさに未来を奪われないように、互いに気をつける。 冬が好きな人も嫌いな人も、いい冬になりますように。

イメージ先行で。

大好きだから側に置いていたはずなのに、見慣れたから普通になった。 朝昼晩と順序よく繰り返す毎日は、刷り込むように普通を並べるものだから仕方がないけど、たまに立ち止まったときくらいは一声掛けて教えてほしい。「夜がつっかえてますよ」って。 忘れてくれるから疲れなくて、たまに思い出すから比べてしまう。自分で選んだ時のことは忘れて。 特別だと思ってた、その一瞬の気持ちが大切なのに、安心なんてフェイクを大事にしている。「安い」に「心」なんて、そんなに良い物とは考えにくいはずなのに。

傘を選ぶのは、ひとりのためじゃない。

外れない天気予報が示した空は、どこか寂しそうだった。 それは、噂好きの鳥たちがいないから。 乾燥した空気で唇がカサカサになってしまうから当然だけど、最近は一週間も前から遊びの予定を決められてしまう。 誰の為に、そんなことしているのか。 かっらっぽの空が寂しさを通り越して退屈になってしまったら、もう雨が降らない気がする。 あなたの上にだけ雨が降る。 遊び相手のいない空が、精一杯の背伸びをしている。嘘つきになりたくて。

シトシト降るのは、あなたを心配しているから。

雨が輪郭を歪ませていた。 アスファルトの清掃係は、惜しみなく大量の雨を使う。余程、ホコリがたまっていたのだろう。前へ前へと押し流す様はどこか優しさすら感じるから、不思議と眺めていられる。 しばらくすると、まもなく止むだろうなというくらいに雨が、建物の壁面をチョンとつつきだした。 虹を綺麗だと感じる自分は、幸せだと思った。 まだ薄暗い空と居なくなった太陽。それから、静電気。 そのどれかに嫌気が差すのは自由だけど、雨で自分の輪郭は歪ませられないように傘をさす。 風にはムカついて

年末というイベントを世間がやってるだけだから。

大好きだったのは、バタークリームを使ったケーキ。パリパリのチョコレートでスポンジをコーティングしてあるやつ。でもクリームやスポンジまで茶色いチョコ味は嫌。それから、スポンジの間にはオレンジ味のジャムが挟まっているのが好きだった。 でも今はバタークリームだと、一切れ分で脂っこい感じがしてお腹いっぱいになってしまう。 ケーキ屋さんで聞いてみたら、最近は毎年趣向を凝らしたオススメケーキを販売するのが主流だから、ノーマルスポンジにチョコレートとジャムなんてシンプルで安い物は作らない