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思い出は微かに温かい。それさえ覚えていればいい。

バラバラと記憶が落ちて、水になった。
地面に落ちた水は乾いてしまって、もうどこに行ったか分からないようだ。

雨が降るから、悲しい気持ちも誰のものか分からなくなってしまった。
だから、何となくみんな雨降りが嫌だ。
運良く野良ネコが舐めた雨水があなたのものだったのなら、寂しそうに鳴いている理由が分かるかもしれない。
運悪く野良イヌに降り注いだ雨水があなたのものだったのなら、晴れた草原まで走って行って乾かしてしまうかもしれない。

今日はすこし変わった日にしよう。
外は寒くなってしまうけど、記憶が消えてしまうまでの時間をすこし伸ばすために雨を雪に変える。
街が白く、夜がすこしだけ黒くなる。
みんなが雪を見るときは、誰かの記憶が光るから。
もうすぐに忘れる。
それは、たぶん忘れていい記憶。
月の温度で蒸発してしまう。


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