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栞紐を引いて。

本の間に挟まって眠りたい。
図書館に昔からあるような、沢山の人が読んだ本。ページの角がとれて丸みの出てきたような、紙自体が互い年月で透けて見えそうなほど薄く柔らかいような、そんな本の間に挟まりたい。
だいたい三分の一くらい物語が進んだ辺りのページを開き、芝生に寝転ぶように仰向けになる。
柔らかいページの上にボクの身体の形の跡がつき、沈んでいく。パタッと音がして本が閉じたらもう空気も入ってこないだろう。
そのまま本棚に戻されてボクは眠る。
静かな本の、静かな鼓動。
隣り合って並ぶ文字と一緒になって寝転ぶと、文字はなんの音も持たない。
寝息をたてて眠る文字は、舞台稽古なんてしないから静寂とは違う静かな音が鼓膜を漂う。

本に挟まりたい。
昼夜の意識も無い、平たい圧迫の間に手足を滑り込ませたい。退屈の理由を探す時間が面倒くさくなったから。
そっとスピンを引っ張って、「入ってますよ」の目印にする。
部屋の明かりを消すように。

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